経営課題を解決する士業支援の最前線成功事例:Linola パートナーズ法律事務所 片岡邦弘氏

経営課題を解決する士業支援の最前線成功事例:Linola パートナーズ法律事務所 片岡邦弘氏

事務所名:

Linola パートナーズ法律事務所弁護士

代表者:

代表弁護士 片岡邦弘

事務所エリア:

東京都千代田区

開業年:

2020年10月

従業員数:

大杉:最初に自己紹介をお願いします。お名前と資格、事務所の所在地、取り扱い業務についてお話しいただけますか?

片岡:弁護士の片岡邦弘と申します。事務所は「Linolaパートナーズ法律事務所」で、東京の市ヶ谷にあります。取り扱い分野としては、技能実習や特定技能といった外国人雇用を中心にした企業側の労働問題が専門ですね。

大杉:他にもいろいろな資格がある中で、なぜ弁護士を選ばれたのでしょうか?

大杉:実は、最初から弁護士を目指していたわけではないんです。高校時代に検事が主役のドラマを観て社会に貢献できる仕事だなと感じ、検事を目指して勉強していたんですよ。なんとなくお金のことを気にせずに仕事に集中できるというイメージもありましたしね。しかし、司法修習生時代に私の師匠である服部明人先生と出会ったことが弁護士を目指す転機になりました。

服部先生とは開成高校テニス部のOB会をきっかけに親しくなったのですが、事務所に就職活動のご相談にうかがって食事をご一緒している時に「うちの事務所に来い」と誘ってくださったんですよ。仕事の内容については一切聞かなかったのですが、とても魅力的な方でしたから、この先生のようなプロフェッショナルになりたいと思い、弁護士としての道を選んだという感じです

また、困っている人は刑事だけではなく民事でもたくさんいるんだな、と実感したことも大きかったですね。司法修習でお世話になった先生はいわゆる人権派の方だったのですが、涙を流して先生へお礼を言いに来られる依頼者の方々を何度か目にしたことがありまして、検事よりも弁護士になったほうが社会の役に立てるのかもしれないと考えていた矢先に、服部先生と出会って心が決まりました。

大杉:服部先生の事務所では、最初から外国人関係の仕事をされていたんですか?

片岡:いいえ、当時は全くやっていませんでしたね。大企業から個人案件まで何でもやる事務所で、一から勉強して全てやるという方針でしたから、「専門分野なんて甘えだ」というのが服部先生のお考えでした。そうすると、今の自分は師匠と真逆になってしまっていますね(笑)。服部先生は難易度の高い案件に取り組む姿勢を徹底されていて、私も法的な部分だけではなく技術系の専門書をゼロから読み込んだり、かなり大型の案件などもやらせていただきました。お前が裁判官を説得できるようになってこいと言われ、一ヶ月間図書館にこもって業界の専門書を読み解いたこともありましたね。

大杉:代理人として裁判官に伝わりやすいように言葉をつないであげるというのが、ものすごく弁護士さんっぽい感じがしますね。

片岡:技術者の専門用語って本当に分からないんですよね(笑)。業界からすると当たり前でも裁判官がそう思わなければ通らないので、彼らに合理的だと思ってもらえる翻訳作業は専門家として大事なことだと思います。今は大規模な事務所さんも増えていて、ある程度仕事を定型化することで多くの案件を抱えるということもあるようですが、本質的にはゼロから作り上げる能力が弁護士にとって極めて重要ではないでしょうか。最初からプラットフォームに頼っている弁護士さんは、主張が軽いなと感じることもありますよ。

大杉:そうした、ゼロから何かを吸収して自分なりに作っていくというご経験が、弁護士としてはニッチな外国人業務を開拓されていったことに繋がっているんでしょうか。

片岡:そうですね、企業法務をやっていても外国人を嫌がる士業はすごく多いんですよ。それは結局わからないから、ハードルが高いからだと思うのですが、実際やっていかなければできるようにはならないですし、落とし穴がどこなのかをアドバイスできないかなと。私はお客様が業界の専門用語を使っても普通に打ち返せるので、よく「話が早い」という評価をしていただけますが、確かに相談されても専門用語を調べるだけで丸一日かかるという方が多いんだろうなとは思います。

大杉:言葉がわかるというのは概念がわかる、全体のイメージが掴めているということでもあるでしょうから、話が早いという評価はよく分かりますね。

片岡:どこまでいっても我々は自分がそのビジネスをやっているわけではありませんから、色んな人の話を聞いて共通項を見つけていく作業が絶対に必要だと思っているんですよ。士業が外にいることによるメリットをお客様に感じていただけないと、価値は示しづらいのかなと思いますね。私の場合は、あまりにも業界の人間っぽくなりすぎて、普通の人が分からない言葉を使ってしまうという逆の反省もあるのですが(笑)。

大杉:外の世界を知っていることは重要ですよね。最初に入られた事務所は幅広い業務を取り扱っていたということでしたが、片岡先生ご自身は企業案件が多かったんですか?

片岡:そうですね、企業案件が圧倒的に多くて、中小企業から大企業まで契約書をたくさん作りましたし、当時から労働問題の相談を受けることが多く、事務所の中では労務担当のような立ち位置でした。事務所を卒業するときにも、ボスから「お前は企業案件をやれ」とはっきり言われましたので、私自身も向いているんだろうなとは思っていましたね。

大杉:そうした中で、外国人労務に特化されたのはどういった経緯からなんですか?

片岡:偶然が必然になったという感じなんですが、中途で入った事務所がたまたま外国人雇用の分野を扱っていて、いきなり「これ片岡君がやるんだよと」言われたんです。今では笑い話ですが、いきなりかなりの数の監理団体を投げられて、さっぱりわからないわけですよ。

昔、隣の席にいた元同僚が「技能実習法の実務」に関する本を読んでいたのを見て、そんなのあるんですねと言っていた自分が、まさか数カ月後にそれをやることになるとは…と慌ててその本を買ったのを覚えています。6年前だったかな、ちょうど技能実習法が始まったばかりの頃でしたから、法律も運用も手探りの状態でしたね。役所に問い合わせても答えが曖昧で、何度も試行錯誤を繰り返しましたし、最初はお客様からお叱りを受ける日々でした。

大杉:ゼロからのスタートでいきなり多くの案件を抱えて本当に大変だったと思いますが、その1冊の本以外からはどのように知識を得られたんですか?

片岡:行政が出している「技能実習制度運用要領」というマニュアルを徹底的に読みました。ほとんど唯一のオフィシャルな情報源でしたが、書いてあることを聞いても答えてもらえないので大変でしたけどね。あとは、こういう性格なのでお客様に直接お聞きすることも多く、ベテランの方が快く答えてくださるので助かりました。そういう、私のある意味でのプライドのなさみたいなものが、逆に良かったのかもしれません。

ただ、結局ゼロからものを作るという経験が大きかったようにも思います。仮説が立てられますし、ここが致命傷になるというポイントを掴んでしまえば、10年の弁護士経験でこういう風に実務に落としましょうとか、こういう風に相手を説得しましょう、行政へはこう対応しましょうというアドバイスができますからね。こうした感覚がわかってくるとレベルがどんどん上ってお客様も増えて、またノウハウが溜まりレベルが上がる、その繰り返しだと思います。

大杉:分野が違えどステップは一緒ということなんですね。ただ、外国人労務ならではの難しさもあると思いますが、いかがですか?

片岡:外国人労務は法令違反に対する制裁が非常に厳しく、それこそ人権問題を起こすと5年間の受け入れ停止になったりします。例えば、残業代未払いでペナルティを受けたとしても、罰金が払えるなら企業そのものが潰れるわけではないと思います。しかし、外国人の場合は全員解雇しなきゃいけなくなるんですよね、欠格になってしまうので。これは企業の存続に関わる大問題に発展します。

また、この分野に詳しい弁護士が少ないことも問題だと思っていて、それって怖いことですよね。結局、大抵の弁護士よりも労基署や外国人技能実習機構などができないことを一次的にやっている監理団体のほうが労働関係に詳しいんですよ。三ヶ月に一回、人権侵害や労基法違反がないかを監理団体が監査していますし、年に一回は必ず外国人技能実習機構が監理団体を訪問するので、二重チェックのような形になっています。

ご存じない方のために監理団体をものすごく分かりやすくご説明しますと、実習生専門の人材紹介会社みたいなものですね。ただ少し特殊な役割があって、紹介した実習生の監査が法律で強制されているので、彼らが帰国するまでは責任を持てよと国から任されているのが監理団体になります。

大杉:ありがとうございます、わかりやすいです。素朴な疑問なのですが、先生は監理団体からも受け入れ先企業からも依頼されることがあるということでしょうか。

片岡:基本的に監理団体を応援したいというのが事務所のコンセプトで、お客様も監理団体が多いので、もちろん潜在的に利益相反になる企業からの依頼は受けません。私が関わっていない監理団体とトラブルを抱えている企業の代理人をやるケースはたまにありますが、基本的には他の弁護士を紹介していますね。

大杉:具体的には専門家としてどのように関与されるんですか?

片岡:現場で何が問題なのか判断がつかないケースの相談がレベル1、問題への対応と役所への対策がレベル2という感じでしょうか。レベル3として、他の団体がどうやっているのかで、私はその全てに対応しています。なぜなら、お客様から来た相談の内容から、役所は今こういうことを重点的にチェックしていて、トレンドが変わってきているから他のお客様へも展開しようといったことができるからで、これは専門特化事務所の強みだなと思いますね。

大杉:もちろんご専門ということもあると思いますが、片岡先生は独立されてからどのような集客をされて今のような人気者になられたんでしょうか?

片岡:私はアナログ的というか、地道な関係構築ですね。弁護士に限らず他士業も含めて、自分ができないことをお願いする仲間を作っています。外国人労務専門というと、よく在留資格の申請について聞かれるのですが、実は私自身は在留資格の申請は一切やっていなくて、仲間の士業をどんどん紹介しているんです。逆に、例えば申請が得意な行政書士の先生が聞かれても答えられないようなことが出た時に私を紹介していただけるので、Win-Winの関係を作りやすいと考えています。

大杉:お話を伺っていると、やはりハードルの高い分野だなと感じますから、なかなか取り扱う士業が増えないんでしょうね。

片岡:国内企業と比べて行政側も理解が浅いことが多いですからね。なにか問題が起きた時に、検察官と交渉してくれという依頼が来ることもあるのですが、場合によっては国際問題になりますよと説明すると驚いている人が多いですよ。自分の担当した事件にそれほど社会的な影響があるなんて思っていないんでしょう。

大杉:そうした難易度が高い業務だけに、片岡先生に外国人労務の教科書を作ってほしいというリクエストは多いんじゃないですか?私は新しい分野を自分のものにする方法について先生に本を書いてほしいです(笑)。

片岡:私のやっていることはマニュアルがありませんからね、以前からそういうお声はいただいていますが、手を付けられていません(笑)。でも、弁護士の初めの一歩みたいな本には、ものごとの調べ方なんかも大体は書いてありますよ。ただ、言葉にするとシンプルですが実際にやるとしんどいので、私もよくボスから「手を抜くな」と叱られていました。ボスに言わせると、弁護士はなんとなくの感覚で処理しちゃう、手を抜く奴が多すぎるんだと。ボスは調べられるものは全て調べろ、ないものは徹底的に考えて絶対に勝てる仮説を作れと常に仰っていて、めちゃくちゃ裁判に強かったです。今でも絶対に当たりたくない(笑)。

専門は甘えだと仰っていたことも先にお話しましたので、私が今やっていることはボスの教えと真逆のように見えるかもしれませんが、根本は一緒なんです。ただ、なるべくお客様のビジネスを止めたくないと思うと専門特化したほうが明らかに回答スピードが早いんですよね。結局どこが問題なのか掴むまでをショートカットできますし、企業が弁護士に自社の前提を説明する大変さも、業界に精通している専門家が相手なら軽減されます。

大杉:難しいだけにやりがいのある分野だと思いますが、外国人労務を取り巻く士業の今後についてはどうお考えですか?

片岡:もっと関わっていく人が増える分野だと思うんですよね。ただ、業界の第一人者とお話したときにも参入のハードルが高いという共通認識があって、特に弁護士以外の士業はトラブルになった時に自己完結できませんから、余計にそう感じるんだと思います。だからこそ、例えば私と広い意味でのチームとして一緒に仕事をすることで安心していただけるんじゃないのかなと。私を競争相手と見る方もいらっしゃると思いますが、おそらくそれぞれでやっていることが違いますので、そこをお互いに理解しつつ、各人がやりやすいところで戦っていけると良いのではないでしょうか。

大杉:特殊な分野ですから、それぞれが強みを活かして補完し合えると良いですよね。今日のお話は外国人労務だけではなく、いろいろなことに通じる姿勢を学ばせていただけたなと思います。

片岡:結局一緒なんですよ、私はそんなに特別なことをやっているわけではなくて、いろんな業界に共通する普遍的な部分ってあると思いますので。ですから、どうも外国人労務を嫌がる弁護士が多いのですが、もっと増えてほしいですね。これは本当にずっと言っているんですけど(笑)。

大杉:貴重なお話をありがとうございました。皆さん、出版を楽しみに待ちましょう(笑)。

片岡邦弘 プロフィール

2004年早稲田大学法学部卒業、2007年千葉大学大学院専門法務研究科終了。2008年弁護士登録(第一東京弁護士会、61期)、服部明人法律事務所入所。2014年株式会社LIXIL、2016年東京都労働委員会事務局審査調整法務担当課長(特定任期付職員)、2018年弁護士法人グレイスを経て、2020年10月Linolaパートナーズ法律事務所を設立(代表弁護士)。経営法曹会議会員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員、日本労働法学会会員。経営者側の人事労務案件、中でも入管法、技能実習法等がかかわる外国人労務案件を多く取り扱う「外国人労務特化型」の弁護士として活躍中。

インタビュアー 大杉宏美 プロフィール

クレド社会保険労務士事務所代表。大阪大学法学部卒業。 サントリー(現サントリーホールディングス)株式会社を経て、医業経営コンサルティング会社に参画。クライアントの抱える多様な問題に応えるため、社労士資格、行政書士資格を取得し開業。医療法人・スタートアップ企業の労務コンサルティングを得意とする。医業専門リーガルサービス法人共同代表、専門家集団『BAMBOO INCUBATOR』所属。医療労務コンサルタント、キャリアコンサルタント。