広報のプロが教えるメディアのトリセツ―取材獲得への5ステップ―:三上 毅一氏

広報のプロが教えるメディアのトリセツ―取材獲得への5ステップ―:三上 毅一氏

事務所名:

株式会社ベンチャー広報

代表者:

代表取締役 野澤直人

事務所エリア:

東京都千代田区

開業年:

2010年2月

従業員数:

Q.本書は、どのような書籍ですか?

「広報・PRの業界に入って40年経つ私が、広報のプロとして必要な仕事の進め方、特に現場レベルの立ち回りについてまとめたのがこの本です。特に、弊社はベンチャーやスタートアップ企業の支援も行っておりますので、広報人材の採用ができない経営者の方にも読んでいただきたい一冊になっております。

タイトルに『メディアのトリセツ』とございますが、デジタルの波が押し寄せている今は、メディアの変革に伴って企業の情報発信の仕方も変わりつつある状況です。そうした最新の情報も盛り込みつつ、メディアの世界はどういう世界で、自社の発信をする時に必要な情報は一体どういうものなのか、そういった点を分かりやすく一冊にまとめさせていただきました。』

Q.本書を執筆したきっかけは?

「私はベンチャー広報としての業務の他にも、代表コンサルタントとして”ゼロイチ広報”という広報・PRのオンラインサロンを運営しております。スタートして4年目に入るサロンでして、会員さんは比較的広報の初心者さんが多く、現在100名弱といったところです。その中で、”ひとり広報”の方が多いことが分かりまして、その他にマーケや経営企画と兼務をされているなど、広報に割くリソースが不足しているケースが多い現状が見えてきました。

確かに大手でもない限り、毎日リリースする情報があるわけではありませんから、専任者を置くほどでもないと考えるのも無理はありません。しかし、世の中に自社の製品やサービスを訴えるには、どうしてもメディアの力が必要になってきます。そうすると、広報・PRは大変重要な位置づけになってきますので、そうした面でゼロイチ広報会員の皆さんは、かなりの重責を担っているとも言えるんです。兼務といえども会社のアウトプットは全て広報セクションの業務ですから、かなりのプレッシャーの中で日々色々な課題に悩みながらお仕事をされているんですね。

そうした中で、私は年間300名ほどコンサルをさせていただいているのですが、最近はメディアとコミュニケーションを取ることが怖い、具体的にはメディアに電話をかけてコンタクトすることが怖いという方がすごく増えています。これはコロナ前後で働き方や取材の方法が変わったことも影響していまして、昔であれば電話をかけてリアルに編集部へ出向き、情報を提供して取材のアプローチをするという流れだったところ、今はネットで完結しますから、そもそも電話番号は教えない、メールアドレスも教えないという環境で、コンタクトが取り難くなっているんですね。

コンタクトせずに自分の頭だけで考えていると、メディアに対する幻想が生まれてしまいます。実態を知らずに”メディアはこういうものだ”と思い込んでしまうと、プレスリリースを送ったら怒られちゃうんじゃないかな、送った後にプッシュしたいけど電話でコンタクトを取って良いものだろうかと、怖がってビクビクしている、そんな方がすごく増えているので、その壁を打ち破らなきゃいけない、そんな視点も本書を執筆した理由の一つです。」

Q.本書の特長や、類書と違う点は?

「広報関連の書籍は、毎年出版されており、ここ2年ほどは特に多かったと感じています。私はそのほとんどに目を通していますが、筆者が情報発信をした経験をもとに、主観で記述されているものが多く、客観性に欠けているな、という印象です。広報・PRは、いかに客観的な情報をメディアに提供するかが、ポイントですから、これは懸念すべき状況だと思います。

一方で本書はメディアの視点から事実ベースで書かれていることが特徴で、今メディアが情報に対してどういう見方をしているのか、取材対象企業のどういったところに関心があり、どういう情報を提供してほしいのか、こうした点を分かりやすくまとめた本になっていますので、類書とは大きく異なると自負しております。」

Q.本書はどのような人に向けて書きましたか?

「広報・PRをしなきゃいけないと思っているけどなかなか時間がない、そうした経営層の方々にも参考となるように、メディアに出る方法をお伝えしておりますので、経営者や役員陣の方にも読んでいただきたいと考えております。これは広報の専門書だから自分には必要ないなと思わずに、お手に取っていただきたいですね。また、全く広報経験のない方でも5つのステップを踏めば取材が取れる可能性があるよ、という建て付けになっているのが本書のポイントでもあるんです。

具体的な構成として、ステップ1はとにかく広報・PRのことを正しく理解してください、ステップ2はメディアが広報・PRに求めること、つまりメディアが関心のあることはどういうことなのかを知ってください、といった感じで進んでいきます。ステップ3では、広報・PR活動を進めるために必要な土台について基本的なところを説明しておりまして、プレスリリースの文面を作って自社の製品やサービス、強みを落とし込むのがステップ4、最後のステップ5では新聞や雑誌、テレビやWEBといった媒体によって異なる特性を活かしたアプローチをする方法、これらをシンプルに解りやすくまとめました。」

Q.士業は広報・PRをどう考え、実践すれば良い?

「士業の方々の広報についても、特にやり方の差はございません。これは私がサポートしたある弁護士事務所の事例があります。とにかく離婚案件を受注して売上を上げたいという弁護士さんのケースですが、離婚数が急激に上がった年があったので、なぜ離婚が増えているのかという理由を調べたところ、定年退職した夫に妻が三行半を突きつける、いわゆる熟年離婚が話題になっている時期でした。その弁護士の先生は、女性側の問題と男性側の問題を客観的に分析した内容を3枚くらいのプレスリリースにまとめて、新聞、雑誌、テレビで自ら情報発信されたんです。

そうすると、夕方のテレビ放送で離婚に強い弁護士先生だということで取り上げられて話題になり、3年間ほど顧客が急増しまして、広報・PRではこのようなことも成し遂げられるという士業の実例になりました。ですから、世の中の動きや話題に何かフィットするような取り組みがあれば、それをタイムリーに情報発信することでメディアが関心を持ち、仕事につながるということはあるかと思います。士業の場合は無形のサービスですので、物販やイベント開催のように伝わりやすくない分、メディアリサーチが重要にはなりますが、特に難しいことでもありません。

先生方もお忙しいですから、新聞を読み解いたりテレビをずっと観ているというわけにはいきませんが、日々アンテナを張っていただければそれで大丈夫なんです。これはビジネスとしてもやっていらっしゃることだと思いますが、いま世の中で起こっていることや問題になっていることの中に、先生方の事業と親和性のある情報がないか、リサーチのアンテナを張っていただくということですから、移動中や何気ない調べごとの中から俯瞰的な話題や情報を拾っているだけで、ネタは生まれてくると思います。」

Q.本書をどのように活用してほしい?

「もちろん、広報に取り組むための指南書として活用していただけると嬉しいですね。また、本書の巻頭でジャーナリストの池上彰さんが特別インタビューに答えてくださっているのですが、その中に珠玉の言葉がございまして、”脚色過多な情報が溢れる時代、等身大の情報をきちんと正確に伝える『正直さ』がメディアに新鮮に映る”と、おっしゃっているんです。

情報過多の時代ですから、ちょっとした演出や脚色をしたり、数字を盛ってインパクトを加えようという方が増えていますが、逆に正当派で脚色がない、等身大の情報をきちんと正確に伝えるほうが今は目立ちますよ、ということなんですね。私はこれにすごく共感しまして、粛々と地道に情報を発信することの大切さが、皆さんにも伝わると良いかと思いました。」

Q.本書を通じてのメッセージは?

「ぜひ広報・PRの分野にも関心を持っていただきたいなと思います。これは特にスキルや経験がなくても、明日からでもすぐにできることですから、本書やこのインタビューをきっかけにしていただけると嬉しいですね。また、メディアに関心のある学生さんが少なくなりつつある中で、メディアに関心のある学生さんからは、本書にかなり関心を持っていただいているというメッセージが寄せられているんです。

確かに新聞の部数は減り続け、昔と比べて影響力が衰退してはいますが、私はまだまだメディアは世の中に対して影響力があると思っております。新聞であろうが雑誌であろうが、WEBであろうがテレビであろうが、ツールが変わるだけの話でコンテンツは同じですから、これからも変わらないでしょう。学生さんにも十分理解しやすいように、メディアについて分かりやすくまとめておりますので、興味を持っていただいた方に広く本書を読んでいただければと思います。」

三上 毅一 プロフィール

三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー
学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴40年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。活動範囲もコーポレートコミュニケーション(危機管理広報含む)からマーケティングコミュニケーションまで、幅広いスキルと知見を持つ。
また、『ソースネクスト 「特打」マーケティング』(ダイヤモンド社)『全員を戦力にする人財育成術 離職を防ぎ、成長をうながす「仕組み」を作る』(有本均、ダイヤモンド社)など、多数の書籍プロデュースも手掛けている。