- 事務所名:
-
株式会社kubellパートナー
- 代表者:
-
岡田 亮一
- 事務所エリア:
-
東京都港区
- 開業年:
-
2024年4月1日
- 従業員数:
-
ー
目次
Q.BPaaSとは何か?
「「BPaaS」とは、Business Process as a Serviceの略で、企業内の特定のビジネスプロセス・業務オペレーションをサービスとしてクラウドを通じて提供するものになります。最近出てきた概念なので、いわゆる「アズ・ア・サービス」と呼ばれるものの中で比較してご説明します。オンプレミスから始まり、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)と、サービスとして提供される範囲が拡大されてきました。近年、拡大しているSaaSは、アプリケーションまでワンストップで提供するものです。実際に業務オペレーションをどう適応させるか?や、従業員がどう使いこなすか?は、サービスを導入した企業が対応する必要があります。一方、BPaaSはこれに加えて業務オペレーションとDX人材まで全てセットにしてサービスを提供していくものであると捉えています。
また、業務オペレーションを外注するという観点で、BPaaSはBPOとよく比較されます。BPOは、基本的にお客様の業務を代理で担うことそのものに価値があります。サービスとして、お客様の業務プロセスをDXし進化させるところまでは担いません。BPaaSではSaaSをはじめとしたITツールをお客様の業務プロセスに導入し、効率化された業務プロセスに置き換えながらワンストップで提供するイメージです。SaaSを使いこなすDX人材も併せてサービス提供をできる部分が、BPaaSの大きな特徴だと思います。
私たちはビジネスチャット「Chatwork」を提供しており、その多くが中小企業のお客様で、ユーザーは44万社を超えます。その中小企業の経営者にお話を伺う中で、人材の採用が大きな課題であることがわかっています。バックオフィスの専門人材やITを使いこなせるDX人材は中小企業ではなかなか雇用できないのです。そこで、当社ではどの会社にも存在し、ニーズも高いと言う観点からバックオフィス領域をターゲットに、BPaaSを採用した「Chatwork アシスタント」というサービスを中小企業向けに提供しています。お客様の業務に深く入り込み、業務フローを整理して落とし込む形でサービスを提供できることに、大きな意義があるものと考えています。
Q.中小企業はBPOは使わない?
BPOはビジネスモデルとしてどちらかというと大企業向けで、中小企業ではあまり浸透していないです。なぜかというと、BPOでは、顧客の業務をそのまま受け取るという性質上、外部のBPO事業者が業務を担えるよう型化してマニュアルを引き継ぐといったイニシャルコストが高いのが特徴です。その後のランニング期間の売上で回収していくビジネスモデルになっていますが、イニシャルのコストは会社の規模によってそこまで変わらなくても、回収できるランニングの売上はBPO事業者に依頼する業務のボリュームに比例するため、会社の規模によって大きく変わってきます。そうすると、やはり中小企業向けの展開は投資の回収までに何年かかるのかという話になり、結果的になかなか浸透しないのだと考えます。
他にもBPOが中小企業に浸透しない大きな要因としては、コミュニケーションの領域にもあるのではないでしょうか。従来のBPOは電話とメールを中心に対応しており、特に電話が多かったのですが、多くのユーザーを同時にサポートしようとすると繁忙期に合わせて相応の人員を揃える必要があり、その部分にも難しさがあるのだと思います。
一方で、BPaaSならばコミュニケーションは非同期のチャットを使い、業務の繁閑を平準化し必要なスタッフ数を最適な形に抑えられます。結果として、サービスの料金もBPOより廉価に抑えられますから中小企業も利用しやすいビジネスモデルであると考えています。
BPaaSのメリットで想定できることとして、生成AIなどの技術が進化していく中で、テキストコミュニケーションが自動化する余地も大きいと思っています。そのため、我々としては将来的な活用も視野に入れて、ビジネスチャットでのコミュニケーションを基本としています。ビジネスチャットは顧客の全従業員に導入されていることも多く、チャットを利用する利点としては、顧客の従業員一人ひとりにチャットを通じて我々が直接アプローチすることで、顧客の社内コミュニケーションもサポートすることができますし、証憑の提出などファイルの授受や、業務ワークフローとしてのインターフェースとしての活用などが一元化できる部分にもあります。現在はコミュニケーションのインターフェースとしての利用に留まりますが、今後活用の範囲を広げていきたいと思っています。具体的な活用の仕方としては、例えばカメラを起動して領収証を撮ると、クラウド会計ソフトと連携して経費精算が起案され、「Chatwork」上でプレビューによる最終確認をするとフローが進んで上司へ承認依頼が飛ぶ、上司が承認すると申請者へ通知が行くといった形で、コミュニケーション・ファイルの授受・業務ワークフローのインターフェースを「Chatwork」に寄せ、一元化するようなイメージです。色々なSaaSを導入していると、ログイン画面などのUIが頻繁に変わっていたりするものですが、慣れ親しんだ「Chatwork」のUIで業務を進めていける世界が実現することで、お客様にとってのメリットも大きいと考えています。
現在はまだ人で捌いている部分も多くありますが、将来的には自動化していくためのAPIやiPaaSなどを駆使しながら、裏側の業務支援サービスと繋いでいくことを想定しています。また、やはり一部はバックオフィスに付随した専門的な領域もあるため、社労士や税理士をはじめとした士業の先生方と連携を図っていくことを今まさに視野に入れているところです。」
Q.BPaaSは企業にどんな成果をもたらすか?
「現状、DXをしたいという理由でBPaaSを使っていただくケースは少数でして、どちらかというと『給与計算を担当していた人が辞めてしまった、どうしよう』と調べている中で、我々のサービスに辿り着いてくださることのほうが多いです。DXそのものに課題感を持たれている企業は少なく、現状は業務が問題なく回っているので大きな課題ではないという認識の企業の方が多いように感じています。担当者の退職などがきっかけでご相談いただいた場合、我々としてはこれを機に改めてオペレーションを見直し、デジタル化することでより効率化しましょうとご提案をさせていただきます。そのタイミングでSaaSの選定や導入の支援をさせていただくことが多いのですが、BPOで欠員をカバーした場合と我々のBPaaSを導入した場合の違いは、やはりDXが推進できることが1番大きなポイントです。
この図はDXの段階を4ステップに分解したものです。ほとんどの中小企業はデジタル化が進んでいない「ステップ0」で、業務に必要な情報のほとんどが紙で管理されており、何かを探そう・伝達しようとすると、都度、アナログなやり取りに工数をかけている状況です。業務の一部でもデジタル化することで、効率化を図れます。これ自体もまず大きな一歩だと思いますし、デジタル化が進むとデータの分析が可能になるため、経営の意思決定としても使えるようになります。我々が提供するBPaaSを使っていただくことで、その一歩を踏み出していただければと思っています。」
Q.BPaaSと士業の連携可能性は?
「いくつかのパターンがあると考えています。先ほど申し上げた通り、我々はエンドユーザーの方から担当者の退職をきっかけにご相談をいただくことが多いのですが、中には顧問をされている士業の先生方へ相談されるケースもあります。顧問先から作業の部分もお願いできないかと相談をされるものの、先生方もお忙しく手が回らないため、我々が担うことになるパターンが比較的多いんですね。これは間接的な連携になるかと思います。また、先生方のお仕事を分解すると、いわゆる上流のコンサルティング的な部分、ライセンスに伴う独占業務、そしてそこに付随する作業の3つになるかと思いますが、コンサルティングに注力するために作業の部分を切り離したいというご相談を直接いただくケースもあります。技術が進化していく中で作業的な部分はどんどん合理化されていきますが、コンサルティング的な部分は長い時間軸に亘って価値を継続できる領域かと思いますので、そこに集中していただけるように我々が作業部分を巻き取るという役割分担が分かりやすいのかなと思います。」
Q.BPaaS連携に求められる士業の資質やスキルは?
「適材適所でアウトソースしていくといったような、世の中のトレンドへの関心と、それをきちんと顧客に伝えていただくスタンスが重要になると思います。あとはDXを魔法の言葉として使わず、DXによって解決できるものとそうでないものを正しく理解してもらう必要があると考えます。
また、先ほどDXのステップのお話をしましたが、BPaaSをお任せいただいたからといって、全てが可視化されて定量的に高度な意思決定ができるような状態になるかというとそうではなく、やはり段階を踏んでいかなければいけません。また、DXの段階が進み、データを活用した経営の意思決定をするには、お客様側でデータを扱える人材が必要になります。そのため、先生方にはDXへ辿り着くための段階をご理解いただき、我々と一緒にステップを刻んでいけると良いと思います。
場合によっては何から手をつけたら良いのか、ということもあると思います。その場合はファーストステップとして、紙を電子化するところから始めると良いのではないでしょうか。紙ですと事務所へ足を運ばなければ確認できないということがありますが、電子は場所を選びませんし、今後はより使いやすいツールが出てくると思いますので、このタイミングで進めていただくと良いのかなと思います。」
Q.今後のChatworkにおけるBPaas戦略の展望は?
「幾つかの方向性がありますが、主には我々が受ける領域の広さと深さをどう拡げていくか、そして業務の型化と自動化でいかに効率化をしていくのか、この2つを特に強化していきたいと考えています。
具体的に言うと、まず広さと深さについてですが、専門性が必要な業務を含めたさまざまな領域を、ワンストップで提供していきたいと考えています。例えばBPOは、給与計算を代行します、記帳代行をします、採用まわりのお手伝いをしますといったように、いずれも領域に特化されているところが多いと思います。大企業をターゲットとした場合には、経理部があって労務部があって、という組織体制なのでそのような形態のサービス提供で良いと思いますが、中小企業の場合は1人、ないしは少人数でさまざまな業務を兼任されていることが珍しくありません。そのため、サービス提供側が経理だけ・労務だけと領域を閉じずに、バックオフィス丸ごとワンストップでサービスを提供できる体制があることは、中小企業にとって必要なものだと考えています。
ただ、どうしても業務領域を広くカバーしようとすると専門性の担保が難しくなります。この部分については、現在グループとしてM&Aも含めた積極的な取り組みを行っているところです。具体的には、昨年グループインした『ミナジン』は労務領域に特化した会社で、その領域の「深さ」を究めるパートナーとして期待しています。他にも経理などの様々な領域についても専門的な会社をグループにお迎えする、あるいは自社で立ち上げることも視野に入れながら、広さと深さの両立を図っていきたいと思います。
もう1点はテクノロジーの活用による業務の自動化・効率化ですが、これにも方向性が幾つかあると思っており、1つ大きなものとして捉えているのが大規模言語モデルです。多くのリクエストをいただいておりますし、我々としても非常に活用余地が大きいと考えています。チャットというインターフェイスを使って柔らかい曖昧なコミュニケーションから何をしたいか特定していくラリーを自動化できるかなと思っています。
従来は人がやり取りをしないと判断できなかった業務のアシストを自動的に行う技術の活用は、非常に大きな恩恵を得られる部分ですし、我々としてもやらなければならないことだと思っています。そういう意味では、先程お伝えした経費精算の起案フローのように、裏側にある労務や会計などの領域に特化したITツールとの連携を自動化できるよう進めていきたいと思っています。
チャットコミュニケーションの中で、ワークフローとしても網羅性が担保された情報が承認者へ上がっていけば、差し戻しなどの手間も減ってくるでしょうし、こうしたことはなかなか従来の業務支援ツールだけではできないことだと思います。裏側のシステムをチャットのインターフェイスに寄せて、チャットの中でフローが進んでいく、管理されていくという一連の仕組みを作っていきたいと考えています。」
昭和リースでの勤務を経て楽天に入社。ビジネスマッチング事業のセールスマネジメントやBtoBEC事業の立ち上げと事業マネジメントを経験。その後、エス・エム・エスに入社し、事業開発業務に従事。2017年4月より介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の責任者として事業成長を牽引。2018年4月、エス・エム・エスフィナンシャルサービスの代表取締役に就任。2022年5月、Chatworkに入社し、事業開発業務を担当したのち、2024年4月より株式会社kubellパートナーの代表取締役に就任