FPのYouTubeメディア戦略:株式会社鬼塚FP事務所 鬼塚祐一氏

FPのYouTubeメディア戦略:株式会社鬼塚FP事務所 鬼塚祐一氏

事務所名:

株式会社鬼塚FP事務所

代表者:

鬼塚祐一

事務所エリア:

福岡県福岡市

開業年:

2015年4月

従業員数:

1名

Q.FP業界の現状をどう認識しているか?

「私はもともと郵便局で簡易保険の営業をしていたのですが、”保険屋さん”と言われてしまうことが凄く嫌だったんですよね、ダサいと言うか格好悪いと言うか、何か嫌だなと思っていて。FPだとなんか格好良いなと思っちゃって目指しました。ですが、業界に入ってみたらFPもダサいイメージだったんですよね。ファイナンシャルプランナーという言葉だけで何となく格好良さそう、という漠然とした印象を持っていたからですが、結局辞めてマネーセミナーをやっているFP事務所へ転職しました。

そこから色々なFPさんを見るようになりましたが、なんだかダサいんですよ、見た目からまずダサい、ファッションに気を遣っている人もいませんし見た目もイマイチで。見た目を求められている業種ではないのですが、なんか格好良くなくて、そうすると格好良いと思われたほうが良いなぁと思いました。

以前に勤めていた会社はIFA兼業の保険代理店で、何かしら金融商品を販売していたのですが、当時は何も売らずお客さんからいただくフィーだけで生活するのは無理なんじゃないかと思っていました。執筆という方法も聞いたりはしますが、原稿料が安くて生活できるのかなという世界ですし、非常に忙しそうなんですよね。

8年前に独立する時も、何も販売しないでやれるのかとは思いましたが、もう嫌気が差していたので何とでもなれと。独立する前の会社員時代からコンサルティングについて勉強はしていて、ブログで集客してリストを作ってセミナーを開催する、ということもやっていましたので、何とかお客さんを集めることはできて、あとはもう売り物をコンサルにして、お客さんからいただくフィーだけになるようにすればいいなと思いました。

料金については当時一緒に学んでいる中で活躍されている方々が大体2時間5万円で設定されていたので、その人たちがやれているのならそれでやれるんじゃないかと思って、カウンセラーさんが多かったので業種は違いましたが、先輩方の背中を追いかけて同じ価格帯でやってみました。その頃もうメルマガの読者さんが1,000人くらいはいましたので、まあ全然売れないことはないだろうと独立してすぐに募集したら、初月に6名から申し込みがあって30万円の売り上げになったので多分なんとかなるな、とその時に思いました。メルマガの人数さえいればなんとかなるかなと思って、飛び込んだ感じですね。

資産形成を選んだ理由は、保険商品が面白くないと感じていたからです。営業が嫌いだったということもありますが、保険は位置付けとしてマイナスの状態をゼロに戻すための金融商品ですから、その時しか感謝されないんですよね。ガン保険であればガンになってしまった時だけなんです、役立つ瞬間が。何か面白くありませんし、なかなかそういう場面にも遭遇しないしで、売り方としても結局は今の保険よりこちらのほうが安くなりますよ、みたいな感じで乗り換え乗り換えになりますから、自分では何も生み出していないな、と思ったんですよ。

もうお客さんがコロコロ転がっているだけじゃないかと。面白くないなと思っていたところ、たまたま以前勤めていた会社が老後資金や資産形成を分散投資で運用しながらやろう、ということをやっていて、それが何かちょっと新しく感じたんですよね。マイナスから0じゃなくて、どんどん増やしていくということであれば別に万が一のことが起きなくても喜んでいただけますし、しかもその投資したお金で経済が活性化していくことがちょっと面白いと思ったんですよね、プラスの方向がなんか良いなぁと思って。

その会社ではマネーセミナーもやっていたので、10時間くらいあるセミナーを受けて、社長の話を録音して文字に起こして、半年かけて丸暗記しました。これで自分がいかに今まで喋りが下手だったのか、言語化できていなかったと言うか、説明できていなかったのかということに気づいて、ただ喋るだけじゃなく体系的に話す、考えてストーリーを組み立てるということがあるんだなぁと思いましたね。」

Q.現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?

「もう金融商品を販売しない、というだけで差別化になっちゃうんですよ、他にいないんですよね。ですからFPよりもむしろ、ライバルとしてはYouTuberのほうが近いですね、書籍も出版しているような有名な方がいて、登録者数では足元にも及びませんけど。そういう存在を迷惑だと思う人もいるようですが、私の場合は逆にラッキーみたいな感じで、彼らが間違ったことを言うのでこちらが正確に情報を伝えることでお客さんを増やしてくれています。

私自身もYouTubeを活用していて、正直コロナの影響で売り上げが下がった時には非常に助かりました。出張しての対面セミナーや対面コンサルが全くできませんでしたので、YouTubeで巻き返した感じです。YouTubeを始めたことでメルマガの読者も増えました。最初はオンラインのセミナーで集客ができたことにびっくりしたのですが、ある意味でこれはコロナの良い影響なんでしょうね。

対面では20名満席にするのも苦労していたのに、料金を変えずにオンラインで募集したら100名くらいの申し込みがあって、コロナでオンラインセミナーが当たり前という環境になっていなければ起きなかったことだろうなと思います。あとは、YouTubeを視聴している層は恐らくオンラインで学ぶということ自体に全く抵抗がなくて、オンラインセミナーにも抵抗なく申し込んでくださったのかな、とは思っていますね。

オフラインとオンラインでお客さんの質は特に変わらないのですが、昔より申し込みが早くなりました。以前はメルマガを1年前から読んでいて、やっと申し込んでくれたんだ、ということがありましたが、YouTubeは本当に最近見つけましたという方がすぐに申し込んでくれていますね。」

Q.FP業界の現状と未来予測は?

「昔ながらの普通の店舗型証券会社、あるいは営業マンが家に来てというスタイルは、全ての手続きを営業マンがやってくれるというのが良かったんですね。その代わり営業マンは当然売りたいものを進めるので、それを契約することになるのがデメリットで、私はそれが嫌でした。お客さんが良いと思うものを選べたほうが良いよね、と思うのですが、やはりどうしても売る側としては儲かる、ある程度利益が出るものを売らないと、家賃も払えないし人件費も払えないし仕方がない、という面があるのですが、それに対して最近のネット証券ではそこが解消されている訳ですよ。

これはネットが流行ることによるメリットで、お客さんはコストが一番安くて条件の良いものを選べるようになったので、凄く良いことだと思います。ただしデメリットも幾つかあって、特に私のYouTubeの主な視聴者層である50代に多いのですが、まだまだネットに対して不安感があるんですね。このボタンを本当に押しても良いのかみたいな不安が凄くあって、証券会社のホームページで口座を開設するのが怖いんですよ。

50代といえば老後の資産に関して一番考えないといけない年代ですが、極度にネットを恐れている人がいるのもこの年代で、こうした初心者の方々からは全く別の金融機関のサイトが同じに見えてしまうらしく、複数の証券会社にアカウントを持っている場合に違う会社のIDとパスワードを入れてしまって、パニックを起こして全然ログインできませんと言われたりすることもあります。パスワードを手書きで控えているせいでアルファベットのOなのか数字の0なのか分からなくなってしまったり、自分で出来ない人が取り残されていますので、そこには非常に需要を感じています。

私は売り上げが停滞したらその都度新しいことをやらなきゃと考えているので未来予測は苦手なのですが、私自身のことをお話しするとしたら、どこの業界もそうなのかもしれませんが情報自体にお金を払う価値がなくなってきていると感じています。FPはノウハウを教えるのが仕事みたいなところがありまして、保険商品の選び方や、資産形成についても分散しようねとか、インデックスファンドだったらコストが安いのを選んでおくと良いよ、みたいな知識ノウハウですよね。

ですがもうその情報を得ようと思ったら、YouTubeで誰でも無料で得られるということもあって、単発のオンラインセミナーをやめたんですよ、もうこれYouTubeで良いじゃんってなっちゃうので。単発のオンラインセミナーは3万円で提供していて、YouTubeで発信しているものよりは濃い内容でやろうとこれまでの知識やリソースをめちゃくちゃ注ぐ訳で、自分の中でも凄く良いものでお客さんもそれを買って満足して、結局3万円で終わっちゃうんですよね。

もう出し尽くしているのでこれ以上のものは出せないということになると、常に新規を集め続けなきゃいけない、そうなると売り上げもちょっと大変だし、YouTube上に溢れている情報やノウハウを上回り続けるのもこれはちょっと厳しくなるであろう、と思って単発のセミナーは辞めました。その分ちょっとお客さんを絞って高単価なスクールを始めたのですが、ここでは体験価値を提供しようと思っていて、例えば私とLINEでやり取りできるなどのYouTube では出来ないことですね、実際にお会いしたり体験に価値を置いて、情報はもう無料で出していこうという形に、去年の秋ぐらいからシフトしてきました。

コンテンツはあるので、体験や相談できるということを売り物にしていくのが、今後FPとしてやっていくのであれば良いのではないかと思います。そのためにはコンテンツがショボいと 相談しようとは思わないので、無料コンテンツであっても気合いを入れなければいけない訳で、本当にお金を出して相談してくれているお客さんに出すくらいの熱量で無料コンテンツを発信する必要があるかな、と思っていますね。」

Q.これから生き残っていけるFPの条件とは?

「YouYube をやっていくと伸びるんじゃないかな、と思います。FPは文字媒体よりもYouTubeとの相性が良さそうな気がしますね。」

鬼塚祐一 プロフィール

一級ファイナンシャル・プランニング技能士、株式会社鬼塚FP事務所代表取締役。
YouTubeチャンネル「小学生にも分かる投資の授業」は登録者数2万人超!累計再生回数258万回。

大学卒業後、郵政事業庁に入り、ゆうちょとカンポの営業職に従事し5年勤務。その後、女性向けのマネー講座を主催するFP事務所に転職。講師として500回以上、セミナーに登壇する。福岡県職員向けや、年商300億円企業の社員向けセミナーも担当。
2015年4月に独立。日本では珍しい、金融商品の仲介を一切しないFP事務所を設立。
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300名以上の運用実績をホームページにて公開中!テレビ出演、新聞や雑誌の取材多数。
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