新しい価値を創る診断士が語るこれからの戦い方:株式会社展示会営業マーケティング 清永健一氏

新しい価値を創る診断士が語るこれからの戦い方:株式会社展示会営業マーケティング 清永健一氏

事務所名:

株式会社展示会営業マーケティング

代表者:

清永健一

事務所エリア:

東京都品川区

開業年:

2015年5月

従業員数:

1人

Q. 中小企業診断士業界の現状をどう認識しているか?

中小企業診断士としても業務をほぼ行っていない僕がお話するのはおこがましいのですが、中小企業診断士業界について、僕が感じている点を正直にお話してみたいと思います。

一口に中小企業診断士と言っても、大きく「企業内診断士」と「独立診断士」に分かれます。割合で言えば、企業内診断士がだいたい6割くらいでしょうか。企業内診断士の方は、それぞれの会社の中でそのスキルを活かして活躍されている印象がありますね。

一方で、独立診断士の方々に関しては、二極化しているように思います。すごく上手くいっている人もいれば、正直しんどそうな人も多い。僕自身はそこまで業界の内情に通じているわけではないのですが、話を聞いていたり、様子を見ていたりすると、そんな印象を持ちます。

実際、コンサルティング会社の倒産件数が過去最多を記録したというニュースもありましたよね。そういったことも含めて、この業界全体としてちょっと不安定な要素があると感じています。補助金頼みのモデルでやってきた診断士さんなんかは、国の予算の組み方一つで一気に浮き沈みが出ますから。実際、補助金の仕組みが変わってしまって困っているという話も耳にします。

だからこそ、診断士として生き残っていくには「自分だけのUSP(独自の強み)」を持っているかどうかがすごく重要になってきます。ただ資格を持ってるだけでは仕事にはならない。実際、「中小企業診断士」であることを、前面に出してお仕事をしておられる方は、あまり上手くいっていないことが多いのではないでしょうか?逆に、すごく活躍しているコンサルタントさんのことをよく調べてみると実は中小企業診断士資格を持っておられた、というケースが多くあります。これ、他の国家資格とはちょっと違う点だと思うんですよね。

中小企業診断士には独占業務がありません。これをデメリットと取る人もいますけれど、僕は逆に、だからこそ「自由にできる」資格なのではないかと思っています。要は、枠にとらわれずに自分のスタイルで価値提供ができるかどうか。診断士という肩書きにあぐらをかかず、むしろ自分なりの切り口をどう見つけて、それをどう発信していくかがすごく問われるんじゃないかなと。

そういう意味でいうと、この資格って「取ったら終わり」じゃなくて、むしろ「取ってからがスタート」だと僕は思っています。

Q. 現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?

僕の事務所が今も継続できている理由を聞かれたら、一番に挙げたいのは「前向きで素晴らしいお客さんに恵まれている」という点です。これはもう、偶然のようで必然だったとも思っています。特に僕は「展示会営業®コンサルタント」として、展示会に出展する企業の営業支援を専門にしています。この「展示会に出る」という行為自体が、すでに企業の前向きさや成長志向を表しているんですよね。だって、展示会って出展料や準備コストもかかるし、時間も人も使う。つまり、何らかのリスクをとってでもチャレンジしたいという企業しか、展示会には出展しないんです。そういう前向きで積極的な企業と自然に出会えるポジションにあることが、僕の事務所の継続を支えてくれている最大の理由です。

中小企業診断士業界を見ていると、例えば資金繰りとか経営改善計画、リスケとか、どちらかといえば「マイナスをゼロに戻す」支援が中心の領域ってありますよね。それもすごく大事な仕事なんですが、僕自身は「ゼロをプラスに、さらに大きな成果にする」ような前向きな支援がしたかった。展示会という場は、まさにそのニーズが凝縮されているんです。売上を伸ばしたい、新しい取引先を開拓したい、自社の技術や製品をもっと広めたい。そういう強い想いを持っている社長さんや営業担当者の方々と関わることができるからこそ、仕事にも前向きな熱量が乗ってくるし、やりがいも大きいんですよ。

そもそも僕が展示会の可能性に気づいたのは、営業マン時代の一つの出来事がきっかけでした。当時はケーブルテレビの営業をやっていて、飛び込み訪問が基本。でも全然売れない。何度も門前払いされて、もうメンタル的にもきつかったんですよね。そんなある日、会社の命令で地域住民の方向けの地上デジタル放送PRイベントに参加することになって。イベントなんて面倒だなと思いながらも、売れない営業マンには発言力もなく、断ることもできません。どうせやるなら「しっかり取り組もう」と考えました。

そのイベントが終わった時、驚きの結果が出ました。翌日から僕の携帯が鳴りっぱなし。「昨日の人に話を聞きたい」とか「ケーブルテレビを申し込みたい」という声が次々に届いたんです。一切、売り込んでないのにです。ただ、わかりやすく説明していただけ

そこで僕は、「売る」ってことの本質は「場を整えること」だと気づきました。展示会というのは、まさにその「売れる環境」が整った場所だったんです。

それから展示会にのめり込みました。業務として出展するのはもちろん、イベントの演出や顧客の興味の引き方、集客の仕掛けまで、自分なりに工夫して実践していきました。そのうちに他のケーブルテレビ会社から「やり方を教えてくれ」と視察に来られるほどになって、自分の中で「これはどの業種でも使える」と確信を持ちました。この展示会営業のやり方をもっと広げていきたいと思ったのが、中小企業診断士を取得し、コンサルタントとして独立するきっかけだったんです。

ただ、独立当初はうまくいかなかったですね。最初は「中小企業の営業力強化支援」みたいな少し広めのテーマで活動していたのですが、今ひとつ反響がなかった。セミナーをやっても人が集まらない、集まっても成約につながらない。苦しみました。そんな中で、展示会支援をピンポイントで頼んできてくれた企業さんがいて、「よし来た」と思ったんですよ。自分が一番得意な領域でしたから。その案件を全力でやって、成果も出て、企業さんにもすごく喜んでもらえた。それが転機でした。

それからは完全に「展示会営業®」に特化しました商標も取得して、セミナーのタイトルも「中小企業が展示会に出展して売上を伸ばすセミナー」というような明快なものに変えたら、反応が全然違う。集客数も、成約率も、5倍以上に上がりました。これは間違いないと確信しました。

今でこそ、コロナ以降の展示会ブームもあって、展示会支援をされるコンサルタントさんがチラホラ出てきていますが、2015年時点では、展示会専門のコンサルタントは日本に僕しかいませんでした。偶然ですが、展示会営業Ⓡコンサルタントという唯一無二のポジションと「自分だけのUSP(独自の強み)」をつくり上げることができたのです。しかも結果として、展示会という場に特化したことで、前向きな企業とだけ関われるようになりました。お付き合いしている社長さんたちも個性豊かで魅力的な方が多いのです。僕はそういう個性的で魅力的な中小企業の社長さんが大好きなんですよ。皆さん、僕のコンサルを受けたことで「うちって、ええ会社なんや」とこれまで以上に誇りを持ってくれたり、「展示会という場で、堂々と自社の想いを発信できた」と感謝してくれたりしてくれます。そういう言葉が何よりうれしいんです。

そして、そんな方々と一緒に成果をつくっていける今の環境こそが、僕の事務所が続いている一番の理由だと思っています。展示会という場がなければ、今の僕もなかった。だからこそ、これからもこの道をまっすぐに歩んでいきたいと思っています。ぼくは、「展示会は、中小企業が自社の想いや志を世の中に堂々と宣言する最高の場だ」と信じています

Q. 生成AIやDXは、診断士業界にどのような影響を与えるのか?

生成AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化が進む中で、中小企業診断士業界も例外ではなく、大きな影響を受け始めていると感じています。特に、一般的なコンサルティング業務を中心に活動している診断士の方々は、その影響をより強く受けることになるのではないでしょうか。なぜなら、定型的なアドバイスや情報提供といった業務は、AIによってどんどん自動化・標準化されていくからです。

ただ、僕が取り組んでいる「展示会営業®」という領域は、比較的AIやDXの影響を受けにくいジャンルだと考えています。展示会というのは、リアルな場で人が直接会って話すという特性がありますし、出展者と来場者の間に生まれる空気感や信頼関係というのは、まだAIでは完全に再現できない部分です。

とはいえ、AIやDXを無視するわけではありません。僕自身、コロナ禍で展示会が開催できなかった時期には、「オンライン展示会」という形で事業を展開しました。これは、リアルの展示会が再開されたときにもスムーズに移行できるし、仮にリアルが戻らなくてもなんとかなるような、両輪での体制を整えるための取り組みでした。

つまり、重要なのは「AIやDXをいかにうまく取り入れるか」だと思うのです。たとえば、生成AIであれば、自分の専門分野の知識やノウハウと組み合わせて、新しい価値を提供できるようにする。単にツールとして使うだけでなく、そこに自分の独自性や経験を掛け合わせることで、他にはないコンテンツやサービスが生まれる。「自分だけのUSP(独自の強み)」があってこそ、それらのツールが生きてくるのだと僕は思っています。

言ってみれば、AIやDXはシャープペンシルみたいなもので、持っていると鉛筆よりいちいち芯を削らなくて済む分便利に使えるけれど、字の美しさや勢みたいなものの伝わり方は、結局使い手のスキルや感性に左右される。そんな時代だからこそ、診断士として生き残るには、「自分にしかできないこと」を磨くことが何より大切になってくると実感しています。

Q. これから生き残っていける診断士・コンサルタントの条件とは?

これからの時代において、中小企業診断士やコンサルタントとして生き残っていくためには、ただ知識や理論を語るだけでは不十分だと思います。生成AIのようなテクノロジーが発展し、いわゆる“正解”を提示すること自体が誰でも簡単にできるようになっている今、「診断士としての正しさ」だけを武器にするのは限界があると感じています。

だからこそ大事なのは、「あえてはみ出す勇気」なんじゃないでしょうか。つまり、「中小企業診断士的な正解はこうだけど、社長のお話を伺っていると、むしろこっちの方がいいと私は思います」といった具合に、教科書通りではないけれど、目の前の相手に本当に必要な提案ができるかどうか。そういう柔軟さと人としての感性が問われる時代になっていると感じます。

そのためには、自分自身の考えや持論を持つことが重要です。「自分=診断士」ではなく、「診断士という武器を持った自分」という立ち位置で、「自分だけのUSP(独自の強み)」や自分なりの視点、哲学を持ちつつ、相手の個性と融合しながら価値を生み出していく。中小企業の社長さんって本当に個性豊かな方が多いですから、その人と一緒に新しい答えをつくっていく感覚が求められると思います。

とはいえ、資格を持っているという安心感、いわば“品質保証”も大切です。コンサルタントという言葉には常に怪しさが付きまといますよね。そんな中、国家資格としての信頼性があり、最低限の経営における専門知識が担保されているというのは大きな強みです。でも、その上でさらに「自分だけのUSP(独自の強み)」を活かして「自分にしかできない提案」ができる人が、これからの時代に必要とされるコンサルタントだと思います。

つまり、知識+個性+柔軟性を持ちつつ「自分だけのUSP(独自の強み)」を活かせる領域で勝負している。このような人こそが、中小企業診断士としてもコンサルタントとしても、これからの時代を勝ち残っていけるのではないかと思っています。

清永健一 プロフィール

株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。中小企業診断士、展示会営業(R)コンサルタント。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒。 展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」など多くのメディアで取材を受けている。 支援実績は1300社を超え、ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没している。  NHKラジオ総合第一で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関して、テレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。 著書の『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』、『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に1回しか営業しない』など合計7作はいずれもamazon部門1位を獲得している。展示会のオモテもウラも知り尽くす稀有な存在。