15,000件の入管業務を取り扱った行政書士の経営術:行政書士川添国際法務事務所代表 川添賢史氏

15,000件の入管業務を取り扱った行政書士の経営術:行政書士川添国際法務事務所代表 川添賢史氏

第1章 プロ士業の履歴書

Q.現在のお仕事内容について、教えてください。

大阪府枚方市に行政書士事務所を構えています。開業が2008年ですので、15年目になりますね。当初から入管業務と呼ばれる外国人のビザ手続きを専門としてまして、おそらく申請手続数は合計で3,000件ほど、相談件数ですと15,000件ほどを取り扱ってきました。

同業他社があまり手がけていないような、日本で生活するにあたってのプライベートなお悩みについても積極的に対応する方針ですので、他士業からのご相談やご依頼も多数いただいています。

Q.行政書士の資格取得以前は、どのようなキャリアをお持ちだったのでしょうか。

学生の期間が長かったもので、仕事として始めたのは行政書士が初めてです。

元々は高校生の時にアメリカへ留学していて、当時から外国や外国人に興味を持っていたので大学で国際関係学を勉強しました。更に深く学びたいと思い大学院へ進み、いま仕事にしている外国人関連の法律や制度について勉強しながら、具体的に何か役に立てることはないだろうか、法律で外国人に関わるような仕事ができないだろうかと考えて、弁護士の試験を受けようと当時できたばかりのロースクール(法科大学院)に行ったんです。しかし、法科大学院を卒業した後の司法試験はとても苦労をして、外国人の手続には「行政書士」という職業があるとはじめて知り転向、行政書士試験を受けて27歳の時に開業しました。どこかの会社に勤めたり、他の事務所に勤めていたということはありません。

Q.開業前から実務につながる本格的な勉強をなさっていたのですね。法律を活かすという意味では色々な士業が選択肢に入ると思うのですが、なぜ行政書士の資格を選ばれたのでしょうか?

やはり最初のイメージは法務といえば弁護士さんという感じがしていたのですが、よくよく調べてみるとその当時に外国人法務を専門で取り扱っているのはわりと行政書士、それもその一部の人くらいだったんですよ。15年ほど前になりますが、業務としては外国人法務自体がまだまだ走りという感じでしたね。

今でこそ知られてきましたが、当時は行政書士業界内でも「国際業務・入管業務」はまだメイン業務として取り扱っていない方が多く、主流ではありませんでした。ここ十数年でかなり認知が広がってきたように思います。

Q. 行政書士試験について、取り組んだことを教えてください。

司法試験を前提とした学習をしていましたので、行政書士試験としては過去問を3年分ほど取り組んだくらいだったと思います。当時の行政書士試験は割と易しかったと言うと語弊があるのかもしれませんが、特に試験対策は行いませんでした。

むしろ、行政書士はどのような仕事なのか、どういう人が開業していて、成功事例はあるのか、といった業界の調査は受験前からわりとしっかりやりました。仕事とする以上はある程度勝ち目があるかを事前に調べておこうと考えました。その過程で、20代の人でも活躍されている成功事例として横須賀さんを知りましたし、職業としてある程度の世間的な信用を得ているようだったので、仕入れも不要で、お金も社会経験もない20代の若者がすぐに独立開業しても仕事としてはやりやすいかな、という感触を得ました。

Q.具体的にどのような勉強をしましたか?

・マーケティングの勉強について

行政書士試験を受験しようか迷っていた時には、タイトルに「行政書士」と付いている本に幾つか目を通していました。2005~6年あたりからでしょうか、行政書士の成功事例といった内容の書籍が何冊か出ていたんですよね。そういった内容の本を読んで、わりと個人事業での仕事がしやすいし、年齢が若くても、実績が特になくてもスタートしやすいという印象を受けました。そのくらいに横須賀先生が天才塾を始められて、実務を勉強しようと思った時に色々な先輩方から学べる場もあるということもあって、業界として大丈夫そうかな、勝ち目があるかな、と感じていたんです。

試験合格後に行政書士として登録した頃には、これも2000年代後半くらいからだと思うのですが結構マーケティングに関して色々なことが言われ始めていて、いわゆるダイレクトレスポンスマーケティングに関する本が出たり、フリーランスの士業もネットとリアルの両方で集客や販促を勉強しましょう、という流れになっていました。私は当初から小規模の職人的な事務所をイメージしていて、組織化したいというスタンスではなかったので、個人や小人数で特定のお客さんに対して特定のサービスを出す、といういわゆる「専門特化」を極めれば、集客・販促についてはそれほど心配しなくても良いかな、と思えるような情報環境だったように思います。

開業した後は、年齢も近かった横須賀さんを具体的な一つのモデリングとして参考にしていたのですが、やっていくうちに色々質問や疑問もできてきたので個別相談のある天才塾(当時)に入会しました。この頃はまだそもそも士業にホームページは必要かがテーマになるような状況だったので、そのホームページにどういう内容を載せるのかとか、どうやって問い合わせにつなげるのかという情報は出ておらず、多くは会社概要だけが記載されているような簡単なものでした。そうした中で、記事のコンテンツを入れていきましょう、ニーズを考えましょう、SEO対策をしましょう、広告を打ちましょうと提唱していたのが横須賀さんでしたので、マーケティングコンサルのような形でコンセプトの明確化や、ある程度の売上が立った頃には外国人とのマッチングに広告を始めて運用していきましょう、といったアドバイスをいただいたりしながら、自分でも色々なことを試していきました。広告については、当時は駅のベンチ広告、新聞広告、チラシ、パンフレットなど、オフラインのマーケティングも一通り試ししましたよ。もう今はやっていません。

SNSなど色々と戦略的なツールがある今とは違って、当時のオンラインマーケティングはコンテンツそのものを仕掛けるといったような割とシンプルなモデルでしたが、実際に行っている人が少なかったので非常に効果があったと思います。PPC広告の費用にしても、現在の5分の1程度で同じくらいの効果が出るかなという感じでした。最終的には最も効率が良かった、ホームページ+PPC広告に落ち着きましたね。

・実務の勉強について

入管業務に関しては、所属している大阪の行政書士会は研修が手厚く、交流会も結構な頻度で実施していて、先輩方の自主的な研究会などもありましたので、実務についてそれほど困るということはありませんでした。私は当初から入管業務をやると決めていましたので、勉強の機会を見つけては積極的にアクセスしていたのですが、先輩方も丁寧に教えてくれましたし、あとは本屋に並ぶ本はすべて読んで学ぶことで十分対応できたと思っています。

第2章 プロ士業の営業術・実務力

Q.開業のときに考えていた事業計画やプランはどういったものでしたか?

開業当初から小さなサイズのビジネスを想定していたので、あまり細かい数字までは出しませんでした。ターゲットは外国人、それに外国人と結婚したい日本人、外国人を雇用したい日本の会社などを想定していました。入管業務ですから各種のビザ、具体的には配偶者ビザ、永住ビザ、就労ビザなどのサービス分類ごとに適した広告を、想定ターゲットごとに目に留まるであろうメディアで出稿するといった、シンプルなモデルで計画していた感じです。

どちらかというと私はプレイヤーと言うか、自分自身でお客さんと相対して、書類作成や提出などの実務を自分自身でやっておきたいと思っていますので、マネージャーとしての方向性は最初からプランにありませんでした。想定している範囲内でできるだけ効率的に、高単価で提供できるサービスモデルをややふんわりとだけ計画していたような感じですね。

川添賢史 プロフィール

川添賢史(かわぞえさとし)
行政書士川添国際法務事務所代表。1980年大阪府枚方市生。高校在学中にアメリカ留学、立命館大学で国際関係学、神戸大学大学院で国際人権法・国際民事法を学ぶ。立命館大学法科大学院修了(法務博士)。大阪府行政書士会常任理事・総務部長・枚方支部支部長。
“Diversity, Equity and Inclusion”の価値を信じ、“外国人と事業者への支援を通じて多様で成長力のある多文化共生社会をつくる”がミッション。合同会社グローカリンク代表社員、一般社団法人SDGs事業推進機構理事、日本語教育・多文化共生推進協会kotoba監事などを務める。

“More essential, More critical(常に好奇心をもち本質的・批判的に考え大胆に行動する)”が信条。多文化共生&異文化理解がライフワーク。趣味は海外旅行と古典読書。家族は妻・娘2人・トイプードル2匹。

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プロ士業 成功事例ファイル―15,000件の入管業務を取り扱った行政書士の経営術―

著者

横須賀輝尚・川添賢史

15,000件以上の入管業務を取り扱った川添行政書士のロングインタビュー。事業ドメインの設定から具体的なマーケティング手法まで、入管業務の経営術がこの1冊に。