- 事務所名:
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シリウス総合法務事務所
- 代表者:
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寺内正樹(社会保険労務士・行政書士)
- 事務所エリア:
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東京都渋谷区
- 開業年:
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2002年11月
- 従業員数:
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2名
目次
Q.社労士業界・行政書士業界の現状をどう認識しているか?
「現在の私の業務としては、社労士のほうが割合的には多くなってきていて大体7:3という感じなのですが、実は著作の中で一番売れたのは行政書士として出版した法人設立の本なんですよ。そういう意味で特に昔からずっと見てきた行政書士に関して思うのは、凄く色々な方が増えたなというイメージですね。元々そういう傾向はあったと思いますが、更に加速した感があります。
社労士もやはり多様化は進んでいるのかなという印象で、昔は本当に”THE 士業”ではありませんが、独占業務を中心とされている方が多かった中で、色々な要素を工夫して採り入れている方々が以前と比べて増えたように思います。独占業務が士業本来の仕事ではありますので別にそれが悪いということではないのですが、段々それだけでは難しくなってきているという状況もあるんでしょうね。
また、私自身が両方の資格を持っているので目が向くということはあるのかもしれませんが、周囲にも結構ダブルライセンスを考えている方は多い感じがします。行政書士の方が社労士の勉強もしたい、逆に社労士の方が行政書士も勉強したいという両方のパターンがあって、ダブルライセンス自体は昔から言われていることではありますが、今も両方の資格を組み合わせて考えている方は少なくはないと思います。
私は士業として通算で21年目に入りましたが、感覚として両方の資格を上手く活かしている方が増えているような印象です。昔はダブルライセンスと言いつつも社労士と行政書士を持っている場合は、殆どの方が社労士寄りの業務内容で派生的に許認可を受けるといった感じでしたが、最近は行政書士の資格を上手く活かして、ビザ関連の業務や外国人の労務と組み合わせるといったケースもよく目にしますね。
行政書士の主力業務である建設業許可にしても、社会保険に入るということだけで大騒ぎになるような感じでしたから、社労士の範疇である労務的な内容と組み合わせることで業界的にずっと後回しにされてきた諸問題に対応することができますし、企業で発生する問題が複雑化してきたことでダブルライセンスの効果が高まってきたということもあるのかもしれません。」
Q.現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?
「良い意味で士業にはこだわってこなかった、という点だと思っています。先ほど少し申し上げた”独占業務だけをやります”という発想は最初からなくて、どちらかというとお客様が困っている状態の時に、寺内が何かしらの相談を受けてちゃんと問題が解消できるという解決策を提示できれば良いと考えていました。それが自分の資格で対応できる業務範囲であればもちろん自分でやって、ダメだったら他の士業さんや他の方を紹介するという形でお役に立てれば良いんだと。
あとは自分自身が経営そのものに興味を持っていましたので、きちんと勉強して知識やノウハウをお客様へ提供するといったコンサルの方向性も選択肢にあって、資格を取ったから何としてもこの資格でやり遂げるんだというよりは、あくまで顧客視点から自分が切れるカードに社労士や行政書士があるという感じでふわっと考えていたことが、かえって良かったと思います。」
Q.司法書士業界・行政書士業界のマーケティングに関する所見は?
「それこそ横須賀さんが士業マーケティングの本を出された頃は誰もそんなことは気にしていなくて、ブログを使っている方も全然いらっしゃいませんでしたよね。ホームページを持っている方も殆どいないという感じでしたが、逆に今は士業もマーケティングのことを考えていない方が殆どいないんじゃないかと思えるくらいに浸透してきたなぁと思います。
マーケティングが当たり前のものになってきた世の中には、ツール自体も色々なものがありますから、自分にあったものをちゃんと選択した上で、自分のやり方で展開できるかどうかが次の課題としてあるのかなと。既に基礎的なこと自体は凄く士業に広まったな、という印象です。」
Q.貴事務所経営のDX化と業界のDX化についての所見は?
「社内規程SaaSなど確かに色々なものが増えましたよね。例えば社労士の分野で言えば中小企業は多かれ少なかれ何らかの形でHRテックを活用しているなど、一部かもしれませんが企業のDX化が進んでいますので、士業としてはちゃんとした知識を持っていないといけませんし、サポートができるようになっていかなければいけないと思います。
ただ、アナログな話をいたしますと人に関するトラブルが凄く増えているなと感じていて、特に最近は義務を果たさずに権利を主張する社員というような労務トラブルが目立ちます。そうなりますとやはり解雇の話に及んでしまいますが、一方で採用に力を入れて、良い人材の確保に頑張っているという両極端な方向性が必要とされている実態もありますから、限られた資源の中で上手く回していくためにもDX化の検討は必要になるでしょうね。
若い人の働き方も変化しているようで、先日も60代の社長さんから色々とお話を伺ったのですが、ご自身の若い頃はお金を稼ぐために頑張るということが普通の感覚だったものの、最近の若い人はお金よりも休みが欲しいといったような、根本的な変化を感じさせる事例が沢山あるということでした。VUCAとは言いますが、本当に先が見えない時代ですよね。ハラスメントにしても、かつてはパワハラとセクハラの2大ハラスメントに気を遣っていたところ、今ではもう何を言うにしても本当に気をつける必要があります。
私は元々行政書士のほうが先ですので、ずっと法務寄りの方向でしたしやり甲斐や楽しさも感じていましたが、そのうち人に関連する問題を結構ご相談いただくようになってきました。そういった内容にも法律的な答えはあるのかもしれませんが、究極的には人の問題ですから法律的な答えを当てはめるだけでは回答が出せませんよね。今回のケースをどうやって解決の方向へ持っていこうかと考えたり、試行錯誤をして、会社の社長さん達と一緒に形を作っていくという仕事が、凄くやり甲斐があって面白いと感じて今のビジネスのベースになっています。これはまだDXでは難しい領域ではないでしょうか。」
Q.貴事務所経営の採用と教育に関しての考え方と指針は?
「現在は行政書士資格者を正社員として1名雇用していて、主に書類作成の実務をサポートしていただいているのですが、もう少し人を増やそうと直近で2名ほど検討しているところです。昔は数百名を抱えるような大きな事務所への憧れもありましたが、最近は10名くらいの規模をイメージしていて、自分の思いや価値観を共有してくれるメンバーと一緒にしっかりお客様をサポートしていく形のほうが合っているのかなと考えています。
バリューというか、行動指針のようなものを12個掲げているのですが、例えば大まかに申しますと成長や自由、均衡(バランス)、不屈といった価値観に魅力を感じてもらえる方が良いですね。本当はそれぞれにもっと細かい意味があるので、100%全部でなくても一部に共感してくれるような方と一緒に仕事がしていきたいなと思っています。」
Q.貴事務所が得意とする業務についての現状と未来予測は?
「基本的には労務相談が割と多いのですが、時代背景なのか事業承継が少しずつ増えてきている感じです。いわゆるM&Aだけではなく、親族の承継や従業員さんに承継するという話も含めて増えてきていますね。
結局、事業承継と労務は切っても切り離せないという側面があるように思います。例えば新社長へ引き継がれるタイミングで相当数の従業員さんが辞めてしまうケースが割とよくありまして、士業にとってはあるあるだと思いますが、社長の立場からすると一生懸命やろうとしているのに出だしからそういう話になってしまうと、やはり士気は下がる訳です。その原因であったり今後どういう風にしていけば良いのかということを、一緒に考えて対策していくというニーズは出てくると思っています。
この先、どうしても引き継がざるを得ないようなケースがどんどん出てくる中で、スムーズに売れる会社でM&Aが成立するという話になれば、それでもう1つの解決なんでしょうけれども、なかなか全ての会社がそう上手く売れるものではありませんからね。そういった売れない状況の時にどうするのか、社長の交代によって今までのやり方や方針が変わることに不安を感じる現従業員さんが辞めてしまうことを防ぐにはどうするのか、こうしたことを上手く引き継げるような形で繋いであげるということは、これからの時代に凄く重要なことなんじゃないかと思うんですよ。それこそ士業の事務所も引き継ぎという形で統合されていくでしょうね。
会社が引き継がれることによってどんどん弱体化してしまうということになると、せっかく今まで築き上げてきたものが意味がないということになってしまいかねませんので、そういったところのサポートはこれから積極的にやっていきたいと思っています。社労士としてもコンサルタントとしても、社長さんが辛い思いをしないように貢献したい部分です。
ダブルライセンスという側面からアドバイス的なお話をさせていただきますと、それぞれの資格をどういう風に使うのか先に決めておけるのであればそのほうが良いと思います。人それぞれのやり方がありますので、ただ何となく取得してから色々な業務をやってみて決めようということでも悪くはないかもしれませんが、取った以上はその資格を活かしていただいた方が良いですからね。そういう意味では2つの資格を使ってどういう風にビジネスを構築していくのかを考えていただくと、より良いのではないかと思います。」
Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?
「いつの時代も一緒なのかもしれませんが、柔軟に変化できる人ではないでしょうか、私自身が大事にしていることでもあります。これだけ先が読めなくて、どんどん移り変わっていく時代の中で、やはり変化はキーワードだと思っていますし、ちゃんと時代についていけるということは重要ですしね。
もう1つは先ほど申し上げましたが、私の場合はやはり良い意味で士業にこだわらなくて良かったなと思っていますので、色々な可能性を模索しながら士業自体を使っていくということでしょうか。士業であることを大いに使っていただいて、プラスアルファの”アルファ”を自分としてどういう風にやっていくのか、それを上手にできる方が生き残っていくのかなという気がします。」
寺内 正樹(てらうち まさき)
特定社会保険労務士・行政書士
1974年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
2002年、イベントディレクターを経て、28歳で行政書士事務所を開設。
複雑なことをシンプルに変換する「絶対的なわかりやすさ」と経営の理想と現実をつなぐ「本音の
コンサルティング」で、全国600社以上の起業家の創業支援、中小企業の事業化・組織化・仕組
化を支援している。
2005年、お客様のニーズに、より幅広く応えるため、社会保険労務士事務所を併設。
多くの企業の「最初の相談窓口」としてのポジションを確立し、「起業」から「企業」に成長して
いくための戦略・戦術を伝え続けている。特に、新事業・新プロジェクトを通して、売上増加と
社員教育を同時に行なう独自の手法はお客様より高評価を受け続けている。
2010年、株式会社シリウスを設立し、代表取締役に就任。形骸化しがちな人事評価制度の再生
や日本社会の課題である事業承継などにも意識を向け、変化のわかる幅広いコンサルティングを
提供し続けている。
前職の経験を活かした社内イベントによる組織の活性化、これから到来する宇宙時代に向けて一般
の中小企業が無理なく宇宙空間・月・火星等の宇宙ビジネスを展開するためのサポートする事業、
お客様の強みを引き出しシナジーが生じる共同事業の立ち上げ等、常に新しい取り組みを続けている。
商工会議所・業界団体・経営者団体等での講演実績、新聞・雑誌・業界誌等の執筆実績も多数。
著書は「個人事業のままでは損!会社にするとゼッタイ得する!」(かんき出版)ほか4冊。