資格取得から地域貢献へ行政書士としての歩み:行政書士橋本やすのり事務所 橋本泰則氏

資格取得から地域貢献へ行政書士としての歩み:行政書士橋本やすのり事務所 橋本泰則氏

事務所名:

行政書士 橋本やすのり事務所

代表者:

橋本泰則

事務所エリア:

兵庫県伊丹市

開業年:

2024年11月

従業員数:

大杉:まずは簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか。お名前、事務所の所在地、取得されている資格、そして現在の業務内容や今後取り組んでいきたいことについて教えていただければと思います。

橋本:はい、ありがとうございます。改めまして、橋本泰則と申します。兵庫県伊丹市で行政書士事務所を開業しました。登録は2024年11月1日、開業したばかりの新米行政書士です。まだまだ肩書きに見合うかはわかりませんが、一歩を踏み出したというところですね。主な業務としては、医療や障害福祉に関連した分野を中心に取り組みたいと考えています。加えて、補助金サポートなども手掛けていく予定です。

大杉:ありがとうございます。それでは早速、行政書士を目指されたきっかけについてお伺いしたいのですが、なぜ行政書士を選ばれたのでしょうか?

橋本:きっかけの前に少し背景をお話しいたしますと、私には大学4年生になる息子がおりまして、彼が高校3年生のとき、2020年のコロナ禍で高校野球の最後の大会が中止になってしまったんですね。それまで一緒に野球を楽しんでいたのですが、彼が野球をやめた後、私自身も空虚感を覚え、子ども中心の生活が終わり、「自分の趣味って何だろう」と考えるようになったんです。

57歳で役職定年を迎えるタイミングが近づいていたこともあり、この節目を機に何か新しいことを始めたいと資格の取得を検討する中で、行政書士という資格を知りました。行政書士は、独立開業が前提であり、国家資格で独占業務があること、また、業務範囲が広く、スモールビジネスを組み立てることができる点に魅力を感じました。雇われる働き方から離れ、自分の力を試したいという思いが強かったことも理由の一つです。

大杉:なるほど、特に行政書士の場合、資格の取得後すぐに開業する方も多いですよね。実務面での不安などはありませんでしたか?

橋本:不安がないと言えば嘘になります。ただ、開業してみて感じたのは、行政書士業界は非常に温かい方が多いということです。先輩方からアドバイスをいただいたり、研修で知り合った方々が助けてくださる場面が多々あって、一人で模索するのではなく、業界全体で支え合っている印象を持っています。

試験に合格した後、マーケティングを目的にXをはじめたのですが、行政書士の方々とつながりがたくさんできたのも心強いですね。今お話をしている時点でフォロワーさんが888名と末広がりで縁起も良いです(笑)。横須賀さんのこともXを通じて知りましたし、60歳を過ぎても新しい展開があるものだなと実感しています。

大杉:医療や障害福祉という分野に力を入れたいとのことですが、製薬会社でのご経験が活かされる場面も多いのではないでしょうか?

橋本:そうですね、MRと呼ばれている営業職からスタートして37年間働き、医療機関や医師とのやり取りを通じて、業界の動線やニーズを把握してきました。その中でも特に、お医者さんは本当に患者さんのことを考えているんだな、ということが印象に残っておりまして、先生方が患者さんと向き合う時間を増やせるよう、事務作業などをサポートする形でお手伝いしたいなと考えています。

大杉:医療関係者と士業は、社会的使命を持つという点で共通していますから、相互理解しやすい関係性ですよね。前職で定年前に国家資格を取るというお話をされたところ、同僚の皆さんが興味津々だったということですが、自分も後に続こうという方はいらっしゃったのでしょうか?あるいは社内に資格保持者がいらしたのでしょうか?

橋本:いましたよ、中小企業診断士や行政書士を取ろうと考えている方が何人か、他の人には言わないでくれと言われていますが(笑)。私は入社以来ずっと営業畑でしたが、役職定年(57歳)のタイミングでコンプライアンス部門へ異動になったんです。そこで認定コンプライアンス・オフィサー」という民間資格を取りましょうという話になりましたが、当初は全く乗り気ではありませんでした。

試験は3科目あって、内容は①企業経営と企業倫理、②コーポレート・ガバナンスと内部統制、③企業法務といった法律関係の教科で、③企業法務だけでも民法、会社法、行政法、消費者関連法など、本当に触りの部分だけでも300ページくらいありましたね。お恥ずかしい話、この時に初めて薬機法と景品表示法以外の法律に触れまして、民法第一条の信義則に感銘を受けたことを覚えています。

この民間資格は、司法試験合格者、それから司法書士試験合格者、行政書士試験合格者については試験科目の中で③企業法務が免除になるのですが、そこで行政書士を知りました。聞いたことがない資格でしたので少し調べたところ、面白いなと。作れる書類が1万とか2万とか書かれていて、もちろん医療系も含めて許認可が関わるところ全てなので、これは多分自分次第、組み方次第で何にでも資格者として関与できるな、すごいことだなと思いましたね。

コロナ禍の余韻が残る頃で外出を控えていて時間もありましたから、どうせ法律の勉強をするならと法律系資格試験に向けて動き出した感じです。そうは言っても勉強時間と難易度の関係があるので、予備校が出している勉強時間の目安の中で、現実的に思えた行政書士を選びました。

大杉:私も最初は行政書士の資格を取りましたので、共感いたします。橋本先生のプロフィールからは、地域への恩返しという思いを強く感じますので、そのあたりを詳しくお聞かせいただけますか?

橋本:私の家族について少し触れますと、母は現在89歳で、父は鬼籍に入っており、弟は障害を抱えているという状況です。母は「障害者の親亡き後」問題の解決のため、障害者の親の会で活動していました。昔は今ほど法律も整備されていませんでしたので大変なことが多かったと思います。私が25年間東京で勤務していた間も、地元の方々や地域のコミュニティに助けていただいたことが何度もありました。そうしたことから、この恩をいつか返したいと思い続けていたところがありまして、どんな状況の方にとっても住みやすい環境づくりに貢献したいという気持ちが根底にありますね。

大杉:素敵なお話ですね。資格の取得と帰郷を同時に考えておられたのですか?

橋本:そうですね、会社員として転職するのも選択肢ではありましたが、地元への思いと行政書士の仕事がマッチしたということはあります。サラリーマンで副業をされる方も多い時代ですから、私の経験を伝えることでお役に立てるのではないかな、とも思っているところです。実際、私が資格を取得したことで刺激を受けた後輩は、久しぶりにやらなければいけない勉強ではなくやりたい勉強ができて楽しいと言っていますしね。

大杉:定年が見えてくると生き方そのものを考えはじめますからね。橋本先生は現在、地元の伊丹市へ戻っておられるということですが、具体的な地域との関わりはどのような感じなのでしょうか?

橋本:まだ2周間ほどなので成果が出るには短いのですが、地元に戻ってきたことで、地域の方々との繋がりがどんどん広がっています。多くの方が応援してくださっていますので、行政書士として、地域に貢献できる仕事を増やしていきたいですね。

先日、子ども食堂の運営者の方とお話する機会があったのですが、私のイメージと全く違っていて、境遇に恵まれない子どものサポートというよりは、お年寄りも含めた地域のコミュニティになっているということを知ることができ、子ども食堂を例にとっても色々なサポートの可能性があるなと感じています。

また、事務所はレンタルオフィスを借りているのですが、オーナーが地域で顔の広い方で色々な方とつないでくださいますし、中小企業家同友会へも入会予定で、これからも焦らず着実にコミュニティを作っていこうと思っているところです。

大杉:開業から間もないながら、アナログのつながりが広がっていて凄いですね。最初の一歩はどのようなきっかけだったのですか?

橋本:地元ですからね、既にこちらで事業をやっている知人もいますし、伊丹市は人口20万人くらいで都会というよりは田舎ですから、つながりが広がりやすいということはあると思います。サラリーマンの時には全く気づいていませんでしたが、出身地ならではの繋がり方というか、自然に小・中・高がどの学校だったのかという話にもなりやすいですしね。

大杉:確かに、たまに帰省するだけでも地元とのつながりを感じるものですからね。これから行政書士としてやっていけるという手応えについてはいかがですか?

橋本:やっていけるかどうかは不安がありますが、今は楽しみのほうが大きいですね。定年が待ち遠しくて、次の人生をワクワクしながら踏み出すなんて、2、3年前までは想像もしていませんでしたので。

大杉:行政書士は何にでも関与していける資格ですから、未来を感じますよね。最後に、今後の目標を教えていただけますか?

橋本:まずは、行政書士として一人前と認められる存在になることが第一目標です。その先には、行政書士の枠を超えて、地域や業界に新しい価値を提供できるような活動をしたいと思っています。資格を取ったからこそ得られた人との繋がりを大切にしながら、一歩一歩進んでいきたいですね。また、補助金のサポートを通じて、地域の事業者の方々がしっかりと稼ぎ、地元に還元していける環境づくりも目指しています。

大杉:ありがとうございました。資格がテーマのインタビューではありますが、生き方や自分の力をどのように社会へ還元していくのかという、とても深いお話でしたね。

橋本泰則 プロフィール

1964年、福岡県北九州市生まれ。関西学院大学商学部卒。 新卒から定年退職まで37年間、国内製薬企業勤務。定年退職後、地元(兵庫県伊丹市)に戻りセカンドキャリアとして2024年11月に行政書士事務所を開業。60歳からの人生再チャレンジ。医療法人設立・運営、障がい福祉事業設立・運営、補助金業務を中心に活動予定。約25年東京勤務の間、高齢の母とダウン症の弟を地域が見守ってくれました。「もっと、地域に貢献したい。障がい福祉と医療から。―37年の知見をあなたにー」を想いに、地域への恩返しと活性化にこれからの人生尽くしたい。

インタビュアー 大杉宏美 プロフィール

クレド社会保険労務士事務所代表。大阪大学法学部卒業。 サントリー(現サントリーホールディングス)株式会社を経て、医業経営コンサルティング会社に参画。クライアントの抱える多様な問題に応えるため、社労士資格、行政書士資格を取得し開業。医療法人・スタートアップ企業の労務コンサルティングを得意とする。医業専門リーガルサービス法人共同代表、専門家集団『BAMBOO INCUBATOR』所属。医療労務コンサルタント、キャリアコンサルタント。