- 事務所名:
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YOU 司法書士法人
- 代表者:
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代表司法書士 松本光平
- 事務所エリア:
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東京都渋谷区
- 開業年:
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令和 5年 6月
- 従業員数:
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大杉:まずは簡単に自己紹介をお願いできればと思います。お名前と事務所の所在地、資格と現在の取り扱い業務を教えていただけるとありがたいです。
松本:松本光平と申します。東京の渋谷で開業しておりまして、資格は司法書士ですね。業務については商業登記をメインとしていて、その中でもスタートアップに関連する業務に力を入れている状況です。
大杉:数ある士業の中で、なぜ司法書士の資格を選んだのですか?司法書士を目指すことになったきっかけや背景について教えてください。
松本:もともと資格業を目指していたわけではなくて、サラリーマンからの転向になります。経歴としては飲食店で働いたり、中小企業や保険の営業など色んなことをやってきましたが、30代前半に入社したスタートアップ企業が、就職して3年ほど経った頃に資金繰りの悪化で突然倒産をしてしまったんですね。仕事が急になくなって転職活動を始めたんですけれども、20代の頃に転職回数が多かったこともあり、あまり良い就職先が見つからずという状況でした。このまま転職活動をしても難しいなと考え、手に職をつけるというか、独立できるような資格を選ぼうと司法書士の勉強を始めたという経緯です。
大杉:独立のしやすさで司法書士さんがパッと浮かんだんですか?
松本:そうですね、もともと行政書士の資格を持ってはいたのですが、独立するのは難しいかなと思っていまして。行政書士の勉強をした時に、実は司法書士の資格にも興味があったので、いい機会というか、無職なので本当に時間はありましたから(笑)挑戦してみようかな、といったところですね。
大杉:取り扱い業務のメインがスタートアップということで、やはりもともとベンチャーにいらした経験から専門業務を選択なさったんですか?
松本:まず、なぜ商業登記を選んだのかと言いますと、資格を取る前に中小企業にいましたので、社長が結構身近な存在だったんですよね。会社経営や組織を見ていたので、不動産登記よりも会社経営の登記に興味がありました。あとは勉強する中で会社法を面白く感じて、会社法の条文を読み込んだりしていましたので、それを活かせる商業を選んだという感じですね。会社法は民法よりも新しい法律だからなのか、構造的にコンパクトにまとめられていて分かりやすく感じました。
大杉:私は会社法を難しく感じるのですが、改めて勉強の必要性を感じます。スタートアップ分野に特化された経緯はどのような感じなのでしょうか?
松本:合格した後すぐに独立は難しいと思ったので、3年ほど事務所に勤めて修行したのですが、そこが商業登記専門でベンチャー系のお客さんが多かったんですよ。中小企業の登記とベンチャーの登記両方に携わる中で、スタートアップの業界に接して興味を持ったという感じですね。
大杉:最初のお客さんはどのように見つけられたんですか? また現在、クライアントさんとはどのように接点を持つのでしょうか?
松本:独立前から営業活動というか、顧客と繋がりを作るというようなことは、できていなかったので、開業当初は、顧客0からのスタートでした。なので、営業活動はできることはなんでもやるという気持ちで活動していました。最初はいわゆる交流会での名刺交換もやりましたね。あとは支部の司法書士会に問い合わせがあった案件を紹介してもらったり、開業当初からホームページの構築は力をいれていて、集客の入口にしようと思っていました。
現在のクライアントさんとの接点は、イベントへの参加も入口の一つですし、もちろん紹介もありますが、ホームページからのお問い合わせが結構あります。スタートアップさんは結構ネットで調べていらっしゃるので、自分たちでやるケースも多いとは思うんですけど、やってみたんだけども難しいとか、増資とかで外部の株主が入ってくると不安だから、みたいなとことで探し始めるといった感じのようです。
大杉:わかります、最初とりあえず全部自分でやろうとしますよね。自分たちでチャレンジした後に松本先生へ依頼するというケースで、何か困ったことなどはあるんでしょうか。
松本:増資などが多いのですが、全部の手続きが終わってあとは登記するだけという案件が来たりもするんですよね。本当は着手前から相談してもらうのがベストなんですけど、本当に最後の最後だけのご依頼ですと、途中のアドバイスができないので本当にもったいないなと思います。もちろん、ご依頼いただくことで、登記が手間なく終わるというメリットはありますが、専門家に相談するメリットは、その前の、出資比率だったり投資契約の内容、種類株式の内容など、交渉の段階から相談してもらえたら、起業家が不利にならなかったのにという場面もよくあります。
大杉:社労士業務でも同じようなことがありますので、非常にお気持ちがわかります。逆にスタートアップの方々と関わることで良かったことなどはありますか?
松本:やはりスタートアップの起業家の人たちは熱量が高いというか、これをやりたいんですっていう姿を見ていると、自分たちも頑張らなきゃ、みたいな気持ちになりますよね。
大杉:そうですよね。あとはスピード感ですとか、他にスタートアップの特殊な点はあるのでしょうか?
松本:やりとりのスピード感というのもありますが、増資、減資などアクションのペースやリミットが普通の会社と違います。例えば、いつ着金させたいという話が普通の会社だと一か月前あたりに来るのが、スタートアップは今月その手続きを初めて今月で終わらせるといった感じで、業務のスパンが短い傾向にあります。キャッシュアウトしそうなのでどうしても月内に着金させたいというような事情もありますので、仕方がないとは思います。あと減資についても、決算期末ギリギリでご相談をいただくとか。全体的に早くやらないと、クライアントが希望するスケジュールに間に合わないようなタイトな感じで来るので、それに対応するためには調べながらやってますということだと多分追いつかない、ある程度の経験があるから要望に応えられるということはあるように思いますね。
あとは、普通の中小企業だと関与する人たちが身内ですよね、株主にしても。スタートアップの場合は外部の投資家だったりするので、余計にミスが許されないということはあると思います。当然IPOだと後々「この時はちゃんとやっていたのか」という点を見られたりするので、緊張感はありますね。もちろん会社によってだいぶカラーが違いますが、VCだと担当によっては非常に細かい方がいらっしゃったりもしますし。
大杉:そういう意味でも専門特化されていると効率的だったりしますよね。そうした中、どのような経緯でBAMBOO INCUBATORで活動されるに至ったのでしょうか?
松本:スタートアップ業界を良くしようというか、世の中のために貢献しましょう、みたいなことで活動する団体っていままで参加したことなかったのです。知った経緯としては、たまたまXでメンバーの石本憲史先生と知り合ったことがきっかけでした。別のところで代表の千葉直愛先生ともお仕事をしたことがあったので、活動に興味を持ったという感じですね。きちんと知識を持っていて同じような悩みを共有できる人は少ないので、参加によってスタートアップ業界で横のつながりが出来るという点にもメリットを感じています。
大杉:まだまだ狭い業界ですからね。BAMBOO INCUBATORでは『ANGELs』や『シン・ストックオプション』など、他にない取り組みをされていて、松本先生は開発にも携わられたそうですので、軽くお話を伺えますでしょうか。
松本:そうですね、『ANGELs』というエンジェルラウンド向けの投資契約書の雛形というものはこれまでになかったですよね。資金調達の方法としては『J-KISS』というものが有名ですが、それしかなくて逆に選択肢が狭まっていたので、『J-KISS』に当てはまらないパターンにも使えるよという選択肢を増やすために『ANGELs』を作ったところはあります。
『シン・ストックオプション』については、ストックオプションって税制的に色んな士業が関与しないとなかなか上手く良いものができないので、士業の横断的な支援が必要な仕事なんですよね。サービスの提供側が単体でやっていると、この部分は税理士さんに聞いてください、この価格の算定は会計士さんにお願いしてください、といった感じで起業家側が動かないといけない状態だったので、雛形を出すことでそれを解消したのが『シン・ストックオプション』です。これも非常にメリットが大きいかなと思っています。
大杉:そうした、本業とは別の活動をされる中で、ご自身の事務所運営とはどうバランスを取っておられるんでしょうか?
松本:両方の活動によって時間をとられる面もあります。
BAMBOO INCUBATORで得る知識のアップデート等が、自分の仕事に役立つ面もあるのですが、それとは別の目線ではやりがいを得ている部分があるので、実益とやりがいの両面にメリットがあるという感じかもしれません。活動を通じて、スタートアップの方々の熱量を受け、スタートアップ業界を良くしたいと考えて活動することが、巡り巡って日本の成長だったり社会貢献などにつながる感じがしますので、やはり大きなやりがいを感じています。
大杉:これからの司法書士業界、特にスタートアップ支援の分野に、どのような変化や可能性を感じていますか?
松本:司法書士の業務としては、不動産登記や商業登記、成年後見の分野などがあると思いますが、新しく開業しようとする時に不動産登記や不動産決済をやろうとすると競合が多くなかなか大変なので、待っていれば仕事が来る後見業務で開業する人が結構いるんですよね。商業登記で開業という人は少なかったというイメージです。
しかし、最近は商業登記をやりたいという若い人たち増えている気がするんですよね。ホームページも見かけますし、うちに若手の方が開業相談に来たりもします。不動産登記は仲介や銀行など関係者が多いので、必然的にスケジュールを縛られがちですが、商業登記は比較的スケジュール的に自由ですし、先ほどお話したように関係性的にやりがいを感じられますので、そういうところなのかな?と思ったりはしています。
大杉:スタートアップに限らず、松本先生ご自身の今後の目標などはありますか?
松本:司法書士として目の前の起業家を支援したいという気持ちはありますが、もう少し広い視点では常に自分も事業をやりたいなと思っています。自分も事業をやりつつ、そのノウハウや経験をお客さんに提供できるようになれば独自性も出ますし、資格者としてだけではなくて、事業をやっている側としてのアドバスもできるようになると思いますので、そういった方向性で資格に縛られない活動をしたいですね。
大杉:確かにそうですね。これからキャリアアップを目指す士業の方々に向けてアドバイスをお願いできますか?
松本:業界特化ができるのは東京だからかもしれないので、同じことは難しいのかもしれません。ただ、これから開業しようとか、どんな業務をやっていこうかと思った時に、営業しやすいとか仕事に繋がりやすいという考え方でも良いと思うのですが、やりがいという面で業務を選ぶのも大切なことかなと。先ほど大杉先生が業務特化は効率化だと言ってくださいましたけれども、専門特化によって業務数が増えるので成長も早いですし、どんどんノウハウが溜まっていきます。そうすると、先を走れるということもありますので。
どうしてもやり始めの時はちゃんと手順が固まっているものをやりたいとか、新しいことにチャレンジしたくない、失敗したくないという感覚があると思いますが、新しいことをやっていかないと業界が発展しませんし、それによってお客さんの支援が漏れてるということもあるかもしれないので、チャレンジはしてほしいなと思います。もちろん資格業としては失敗できませんから最大限の努力はするものの、どうしても分からないことが出てくる、そこはもう不安に思うよりも、官公庁の窓口だったり、先輩や同期などに素直に相談する、お客様にリスクも説明した上で信頼をしてもらって、やってみるという姿勢も必要なのではないでしょうか。
大杉:松本先生のお話で、スタートアップ業界に興味を持たれた方も多いかもしれませんね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
YOU司法書士法人(東京都渋谷区) 代表司法書士。1977年生まれ。明治大学政治経済学部経済学科卒業。2017年8月ゆう司法書士事務所を開設。2023年6月にYOU司法書士法人に法人化。商業登記専門の司法書士事務所として、ITベンチャーを中心に設立の段階から、IPO、バイアウトまで多数の支援を行う。商業・会社登記に特化した司法書士事務所として、IPOを目指すスタートアップ企業を中心に資金調達、ストックオプション、組織再編などの支援をしている。 直近では、「専門知識は力なり Expertise is Power.」を合言葉に集結した士業団体BAMBOO INCUBATORにおいて、 投資契約書雛形『ANGELs』、スタートアップ向けモデル原始定款、シン・ストックオプション(新SO)の開発に携わりセミナーの登壇などもしている。

クレド社会保険労務士事務所代表。大阪大学法学部卒業。 サントリー(現サントリーホールディングス)株式会社を経て、医業経営コンサルティング会社に参画。クライアントの抱える多様な問題に応えるため、社労士資格、行政書士資格を取得し開業。医療法人・スタートアップ企業の労務コンサルティングを得意とする。医業専門リーガルサービス法人共同代表、専門家集団『BAMBOO INCUBATOR』所属。医療労務コンサルタント、キャリアコンサルタント。