税理士事務所は、ChatGPTとどう向き合うべきか?(2023年4月NHK「首都圏情報ネタドリ!AI時代を生きる術」出演):株式会社アイユーアソシエイツ 竹田清香氏

税理士事務所は、ChatGPTとどう向き合うべきか?(2023年4月NHK「首都圏情報ネタドリ!AI時代を生きる術」出演):株式会社アイユーアソシエイツ 竹田清香氏

事務所名:

株式会社アイユーアソシエイツ

代表者:

竹田清香

事務所エリア:

東京都

開業年:

2022年

従業員数:

5人

Q.ChatGPTについて、率直な感想と現状認識は?

「AIへの質問力=プロンプトエンジニアリングのスキルが高いか、というところで回答が変わってくるのではないでしょうか。どのように前提を敷いて、どのように問いかけをするのかというところですよね。社内でも今”こういう問いかけを作るといいよ”といった指標としてプロンプト例をNotionに纏めています。AIへの質問力次第で、いかようにも使いこなせると感じていて、GPT 4になって更に回答の精度は上がったと感じております。

従来までの単語検索に対する回答との違いとして、文章で質問したものに対して、なめらかな文章で回答が返ってくることに驚いてます。ChatGPTの強みとして、「明快な回答のない問いに対して論理的に解析及び分析をして文書回答すること」にあると感じております。私は語彙力があまりないので文章作成時に頼っておりまして、ChatGPTに対して”もう少し優しい表現で”“小学生でもわかるように文章を作成して”といったような、ふんわりした前提に対して文脈を捉え新しい文章を作り出すことができるのは非常に魅力的ですね。」

Q.ChatGPTについて、社内の意見は?

「メンバーからの反響としては、まだまだ使えていない、どういう場面で使えば良いのだろうかといった感じでした。他には、回答に対する不安というか、確認の必要性ですね。何しろ、それらしく間違えて回答してくるものですから、じゃぁそうした時に根拠をどこから引っ張ってきたのかという質問をしますと、それでも尚それっぽい間違いをしてくるといったところで、やはり専門家として精度チェックが課題だと感じているところです。」

Q.ChatGPTに対して、どのような取り組みをしているのか?

NotionでChatGPTとは何か?生成系AIの解説からおススメのYouTube解説動画、プロンプト例を纏めたページを作成し、これに基づいて1時間程簡単な操作方法レクチャーを行いました。検証を進める上で個人情報の流出リスクが怖いので、個人が特定できるような質問を行ってはいけない等の留意点もしっかり伝えております。某大手企業がコードをそのまま書いてしまって流出した話もありましたので、使い方には十分留意するようにと。

その上で「アカウントを付与して、色々まず聞いてみてよというところから始めました。まずは触ってみるところから、慣れるところからやってみてっていう感じですね。次の展開ですが、まずアイユーコンサルティンググループとしては役員直下で、ChatGPTについてこれからの事業展開、つまり社内での効率化とクライアントへの価値提供ができないか検討チームを立ち上げております。これからキックオフを実施し、まずは1人1つずつ、実務での活用アイディアを持ち寄って話をしようというところから進めております。

注目している点として今後働き方にどのようなインパクトを与えるかですね。社内のルールなどを上手く覚えさせることで、社内業務のチャットボットのような役割を担ってもらったり、相談業務の壁打ちとして利用するなどの活用方法が期待できます。我々はコミュニケーションツールとして、Chatworkを主に使用しておりますので質問の応対はChatwork、回答を考えるのはChatGPT、情報蓄積をsalesforceやKintoneで行いナレッジの蓄積と応対ができる環境構築を実現したいと考えております。」

Q.今後、ChatGPTやAIが士業事務所でどう活かされるのか?

「凄く小さな話ですと、例えば勘定科目の質問などに使えそうですよね。まずは先ほどお話したチャットbot的な使い方が1番近いというところでしょうか。資料の生成はちょっとChatGPTでは使い辛いので、他の生成系AIを使う形になると思いますが、よくある質問を取り溜めておいて回答してもらうというようなところで使えると良いなと思います。」

Q.ChatGPTやAIの未来をどう予想する?

士業にとって良い相棒でいて欲しいというところですね。当社の母体である税理士法人アイユーコンサルティングは相続事業承継に強みを持つ事務所ですので、この分野はAIで解決できる課題は少なく、人との対話力や折衝力が求められると思います。当社アイユーアソシエイツは経理アウトソーシングと業務改善効率化をメインとしております。

業務改善の現場では、経営者の方は何が悩みか分からない状況であり、課題の言語化がボトルネックであるケースが大多数です。それこそプロンプトを作るよりも更に前の前の前、といった段階にいらっしゃることが多いのではないでしょうか。悩みを言語化できない、表現の時点でサポートが必要ですので、まず解像度を上げるフォローはやはり人でしか出来ないので、そこに価値を見出していきたいと考えています。」

Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?

「人にしか出来ない価値を見出すためには、やはり人間力といったところですかね。我々もキャリア別研修や、人としての価値を高めるための心の研修、マネージャー研修などを実施しておりますが、やはりこういったところを大事にしていきたいと改めて思いましたね。取り組んでいる事務所は多くないようですが、研修制度は重要だと感じています。

また、一般の方にとって士業に相談するということは凄くハードルが高いようで、自分の質問が間違っているかなと思っておられたり、ガチガチに緊張して来られる方もいらっしゃいますよね。皆さん凄くお顔が強張っていたりされていることが多いので、ファーストクエスチョンの相手としてAIの存在でワンクッション挟むのは良いかもしれません。

一緒に未来を考えてあげるとか、先を読んであげること、AIが提示した内容を共に考えられる人が良いなと思うんですよね。回答を鵜呑みにして行動するのではなく、こういう回答が出てきたけど本当はこうだよねとか、違うよねとか、それこそお客さんに寄り添えるというところが価値かなという風に感じますね。」

竹田清香 プロフィール

株式会社アイユーアソシエイツ代表取締役。税理士。
大手都市銀行系列の証券会社にてプライベートバンキング事業に従事。
中堅・中小企業オーナー、資産家を対象としたコンサルタント業務を行う。
税理士法人勤務を経て、事業会社ではIPO支援事業に従事。
2018年に税理士法人アイユーコンサルティングに入社。
2021年、社内に経理アウトソーシング・業務改善コンサルティングサービスを行うリューション事業部を発足。
2022年10月、同事業部を分社化し、株式会社アイユーアソシエイツを設立し、代表取締役に就任。
フルタイム勤務で子育てと両立し税理士試験に合格したエピソードを持ち、メディア掲載実績も持つ。