タクマネが革新する税理士のDX最前線:株式会社タクマネ 柿澤庸太氏

タクマネが革新する税理士のDX最前線:株式会社タクマネ 柿澤庸太氏

事務所名:

株式会社タクマネ

代表者:

柿澤 庸太

事務所エリア:

東京都千代田区

開業年:

2023年12月

従業員数:

10名

Q.税理士事務所を取り巻くDX、生成AIの状況などについての所感は?

「事務所の規模によってDXの状況が変わると感じています。大手や中小の事務所ではDXへの取り組みが積極的に進められている一方で、10名以下のような少人数で経営している事務所や個人で経営している事務所では鈍化しているという印象です。

また、これには年齢も関係していると考えており、30代や40代の税理士は新しい技術やツールに対する抵抗感が比較的に少なく、積極的にDXや生成AIを取り入れる傾向がありますが、少し年齢層が高くなりますとこれまでの流れを踏襲するような動きになることが多く、かつITリテラシーが業界全体的にもあまり高くないというところもあり、DXに踏み込めていないと感じます。特に税理士業界は平均年齢が高いという事もあり、このまま引退するまで紙とペンで業務をする方針の事務所もたまに聞きます。

しかし、日本全体で高齢化と労働力不足が問題になっている中で、この業界の背景にも高齢化と会計人材の減少という課題がありますので、これからの10年でDXやAIを導入しなければ、業務効率化が追いつかず市場についていけなくなるリスクが高まると考えています。特に記帳代行や経理業務は税理士の独占業務ではなく、代行業者も多く出てきていますので、これらに取って代わられてしまう可能性がありますし、顧問先側の意識も変化していますから、長年のお付き合いがある顧問先であっても安心とは言えないように思います。市場の転換に合わせて業務効率も変化することが重要ですね。」

Q.「タクマネ」とはどんなサービスか?

「簡単に申し上げますと、独自AIで税務のタスクを効率化できる業務支援ツールです。事務所内のタスク管理や顧問先の情報管理、スケジュールの進捗管理を、AIによって自動的に行えるものになっています。また、生成AIによる税制の調査やタスクの自動登録をも可能にしていますので、毎年の税制改正への対応のご負担を減らしていただけるなど、いつでも税務を味方につけていくことができます。

会計人材が少ない中で積極的な未経験採用に乗り出す事務所も多いと思いますが、こうしたAIツールを駆使することで、教育や業務フォローにも活用していただけると思います。とにかく人が足りないというお声を良く耳にしますので、少しでも手を動かせる人がほしいというご要望にお応えできると嬉しいですね。」

Q.「タクマネ」開発の背景や理由は?

日本の経済を活性化させるためには税理士業界を変革しなければならないと考えたからです。もちろん企業ごとにそれぞれ課題はありますが、特にスタートアップやベンチャー企業の成長を支援したいという動機が強かったです。これらの企業は税理士と顧問契約を結んでいない、あるいは高額な顧問料を理由に契約を敬遠しているケースが多々あり、その結果として税務面で十分なサポートを受けられず、企業成長の妨げとなってしまう状況が見受けられました。そこで、税理士の効率化という形でサポートできないかとAIツールを開発した、という形です。

また私は、顧問料をいただいてサービスを提供している一般的な税理士と、経営コンサルとして上流工程から踏み込んでいるレベルの税理士の2パターンがいらっしゃると考えています。企業としては、どうせ費用を捻出するのであれば経営コンサル的な業務をしてほしいでしょうし、実際にそのほうが事業もスケールしていくと思いますので、そのためには税理士業界を効率化していき、経営コンサルができる税理士をもっと増やしていきたいという気持ちがあります。

機能開発の着手としては、タスク管理・スケジュール管理が最初でした。顧問先ごとに細かい条件が異なる中での漏れやミスの発生が課題だと思いましたので、これを横軸一線で管理することを優先した形です。また、人手不足によりどうしても属人化していく傾向があることから、入退所の度に業務が止まってしまうといったことを防ぐために、『タクマネ』によるタスク管理の標準化で、全員が同じ認識でミスや漏れのない業務を行える形を整えたかった、ということもあります。」

Q.ChatGPT等、ほかの生成AIと何が違う?

「ChatGPTやGeminiといった生成AIは性能が高く便利ですが、どうしても日本の税法に関する知識や情報が不十分ですし、既存の生成AIはデータベースを持っていない情報の数字の計算に弱いということがあります。そのため、弊社独自のファインチューニング(FT)を行ったり、レトリーバル強化生成(RAG)を追加することで制度を高めています。また弊社は大学院との連携や、生成AIの数字処理を研究していたエンジニアも在籍していますので、日本の制度を理解した上で数字的な弱点をカバーできている点が特徴です。さらに、アウトプットには国税庁の該当する公式リンクを生成するようになっており、信頼できるエビデンスに基づいた判断ができるようになっているため、ハレーションについてもご安心いただけます。

さらに、『タクマネ』には顧問先管理機能がございますので、登録している情報を読み込んで顧問先に合ったタスクの自動生成提案ができるようになっています。例えば、消費税を簡易課税にしませんか?という提案を生成AIが自動でサジェストします。この点にはとことんこだわっており、ロジカルと実用性を意識して機能を実装しました。税理士からの自主提案が少ないというご意見もよく耳にしますので、そういった点をカバーして早めの節税対応などに繋げることを狙ってます。」

Q.「タクマネ」は税務・会計シーンにどんな影響を与える?

「税理士業界だけではなく、会計業界も含めて抜本的に変わっていくとみています。AIによってタスク管理やスケジュール管理を自動化することで、業務効率の大幅な向上はもちろんですが、知識や経験があまりない方でもしっかり税務業務を行えるようになりますので、これまで発生していたタスクの漏れやミスを防いで安定した品質の高い税務サービスが提供できるようになります。現在、所得の申告漏れが全国で1兆円以上もあると言われており、こうした知識不足や提案不足を原因としたトラブルも減らせます。

また、事務所内で管理者として動いている方にもメリットがありまして、タスクが自動的に可視化されていきますので業務の全体把握が容易になり、スタッフのフォローや教育にリソースを割けるようになります。さらに、業務の標準化・統一化による無駄な工数の削減が働き方改革にも繋がり、実際に弊社のクライアントで月に15時間程度を削減した事務所もあります。AIというと仕事を奪われるという話にもなりますが、業務効率化によって浮いたリソースを付加価値の高いサービスの提供にまわすという発想で『タクマネ』が役立ち、業界の持続的な成長を期待しています。」

Q.今後、生き残っていける税理士・士業に求められるものとは?

「今まで以上の高い付加価値サービスが求められることになってくると予想しており、それに応えるためには、やはり税務に特化したAIを味方につけて効率化していくことが必要十分条件だと考えています。効率化によって生まれた時間でさらなるサービスを提供することができる、そんな税理士や士業が市場に求められていくのではないでしょうか。また企業としては、AIによって自己解決できる部分が増えていくため税理士のキャリアからでしか言えないようなアドバイスといった、AIにはできない高付加価値なサービスを提供する専門家が求められ、活躍していくと思っているため、弊社としても、同じ想い持った士業の方々をサポートできるAIやDXの形を率先してご提案していきたいです。」

柿澤庸太 プロフィール

大学卒業後に総合コンサルティングファームに入社し、会計・税務を軸としたコンサルティングを主体とした、M&AやIPO、資金調達の支援、管理会計の仕組み作り等々に従事。その後、事業会社を経て、ベンチャー企業の取締役CFOに就任し並行してスタートアップを創業。現在は、2023年12月に株式会社タクマネを創業し代表取締役に就任。
このようなビジネスと並行して2つの大学院のMBAを修了し、会計学の博士課程及び日本会計研究学会をはじめ、様々な学会に所属している。