「できるだけ、無駄な税金を払いたくない」多くの経営者はそう考えます。
もちろん、適切な節税は効果的ですが、経営者の極端な“税金嫌い”は会社を潰す可能性を秘めています。あなたの会社の経営者の税金感覚、そして社長の会計スキルはどうでしょうか。
「『節税』と『税金嫌い』は似ているようで異なります。極度の税金嫌いは会社を潰す可能性を高めます」というのは、経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。「ほかにも、一般的に経営者には決算書を読み解く会計スキルが必要と言われますが、実際はそうでもありません。」
今回は、会社を潰す社長とそうでない会社の「節税と会計スキル」について、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。
■税金を払いたくない社長がお金をなくす理由
例えば、小規模企業共済や倒産防止共済、企業型確定拠出年金などで適切に退職金を貯め、節税するというのは法律で認められている方法ですし、賢く堅実な方法です。
以前よりは難しくなりましたが、生命保険を活用した節税対策なども、ひとつの節税手法といえるでしょう。これらは戦略的に行うものですから、手堅い「お金を残す方法」だといえます。こういう経営者は、必要な税金はきちんと収めますし、先々のことを考えているので、危険なシグナルとは逆に高評価ともいえます。
一方で、世の中にはとにかく「税金を支払うのが大嫌い」と言う経営者もいます。理屈ではないのです。とにかく払いたくない。嫌。まるで駄々っ子のように支払うのが大嫌い。こういう経営者は、前述の赤字決算が大好きです。
「黒字決算にするヤツは、頭が悪い。わざと赤字にしておけば、法人税はゼロになるのによ!」みたいなことを言います。
だから、会社の利益をゼロにするように経費を使いまくります。接待も大好き。社員に大盤振る舞いすることもあります。なんかすでに危険な匂いがしますね……。
適切な節税は堅実。でも、こうした「税金アレルギー」のような経営者にはちょっと注意が要ります。それは、法人税をゼロにしたいがゆえに、利益分の経費を使ってしまうから。つまり、目的のないお金の使い方をしているわけです。
これだと、まさに「宵越しの銭は持たない」よろしく、会社には現預金がいつも少ない状況になりがちです。そして、会社に現金を残したければ、納税する必要があります。
ざっくり、五〇〇万円の利益が出たとします。この場合の中小企業の法人税率は一五%(ちなみに大企業は一律二三・二〇%)。七五万円が法人税となり、この金額を収めなければなりません。
少し賢ければ、四二五万円が残ったと考えられるのですが、税金アレルギーの経営者はこの七五万円が許せません。だから「税金で七〇万円も八〇万円も取られるくらいなら、五〇〇万円使ってしまえ!」になるわけです。
この「税金アレルギー」タイプの経営者は、業績が伸びているときはイケイケでいいのかもしれませんが、窮地に弱いといえます。赤字だと銀行からお金も借りられませんしね。