税務相談の未来像:AIチャットシステムが変える士業業務の光と影:株式会社VOLTMIND代表 北森聖士氏

税務相談の未来像:AIチャットシステムが変える士業業務の光と影:株式会社VOLTMIND代表 北森聖士氏

事務所名:

株式会社VOLTMIND

代表者:

北森聖士

事務所エリア:

大阪府大阪市

開業年:

2024年2月14日

従業員数:

Q.御社の事業について教えてください

「AIソフトウェアの開発、AI DXソリューションの提供、AIサーバー販売などを行なっております。特に自社開発サービスである、生成AI×税務のチャットシステム『税務GPT』、生成AI×労務のチャットシステム『労務GPT』には力を入れておりまして、AIを使って資格を持っている方々をサポートできるような事業を展開しています。

その他、企業様からのAIサービス受託開発も行っておりまして、薬剤師向け、美容室など多くの業界で生成AIが使えるようにサービスを一緒に作っていける体制も用意しております。また、企業に対するAI研修事業も順次公開予定なので、AIをもっと業界の皆様に身近に思ってもらえるような会社を目指しています。」

Q.現在の士業を取り巻く生成AI市場と、抱える課題について考えを教えてください

AIが脅威になると考えている方は、まだ少ないのかなと感じています。そのような中で色々な士業向けの生成AIがありますが、どのベンダーも探り探り提供している部分があるのかな、というのが正直な印象です。また、体制としては士業の資格を持っている方が発案されて、AI開発を行っている会社と組んで作っていることが多いようです。

AIによる相談対応については、現在ChatGPTをシステムに繋げて返答させているパターンが多いと思うのですが、ハルシネーション※という課題が生成AIはあります。

今後は、回答精度のレベルを上げるために、根幹から正しい税務情報をシステムに教育させていく必要があるので、生成AIシステムの選び方としてどこから学習しているかを明確にできるレベルの高いシステムを選ぶ方向に変わってくるかと思います。

※ハルシネーション
チャットAIなどが、もっともらしい誤情報(=事実とは異なる内容や、文脈と無関係な内容)を生成すること

弊社はAIのエンジニアによるコミュニティを抱え、技術力に強みがあり、ユーザー様からのフィードバックを迅速に取り入れ、回答精度の高いサービスを心がけています

他社の多くがチャットのUIシステムで提供されているところ、弊社のツールはLINEグループで使える点や、参照URLを表示させるなどニーズに合わせて自由自在にカスタマイズができる点も強みですね。更に、今後はChatworkへ展開を予定しおり、現在は弊社内で試験運用を開始しております。

先日も『税務GPT』を利用してくださっている税理士法人さんから”これはなくてはならないものだと思います”という一言をいただけて非常に嬉しかったのですが、やはりLINEグループでの対応は士業のクライアントにとってもメリットが大きいようなんですね。先方の担当者をグループラインに追加していただくだけで、質問に対して1分くらいで返答してくれますから、士業の皆さんは少し補足をする程度で済みますし、クライアントとしても返事が遅いという不満が解消されます。

こうしたインフラが整っていくと、士業の皆さんが同じような質問に何度も答えることから解放される一方で、一般的な質問ならAIで十分だと考える企業が出てくるでしょうから、そこは課題になると思います。実際、とある税理士法人からLINEグループ機能をクライアントに実装して使いたいというご要望もいただいたのですが、同時に先方から仕事をしていないと思われてしまうリスクがあるので、不安だとも仰っていました。質問はAIにするから顧問料を下げてくれという話になりかねませんからね。

資金力のある士業法人等であれば、単価が下がっても数を多く取れるのでAIで自動化しようということになるのかもしれませんが、なかなか踏み切れない士業さんも多いのかもしれません。この判断は、今後の士業ビジネスとして大きな分かれ目になるかもしれないなと思っています。」

Q.「税務GPT」とはどのようなサービスですか?

「24時間365日、LINEで手軽に税務の疑問を解決できるサービスで、税務に関する相談をLINEで質問するだけで、各省庁から必要なデータを抽出し、要約して教えてくれます。更に、根拠となるURLも合わせて教えてくれるため、簡単に情報源を確認できるのが特徴です。

財務省、経済産業省、国税庁、中小企業庁、地方公共団体など、最新の情報を常にアップデートしており、対象税目は、法人税、所得税、消費税、相続税、資産税、地方税、減価償却となっております。税務に関する実務、判例を常にアップデートしており、ユーザーの悩みに合わせた最新の情報を提供していることから、会計士・税理士の皆様はもちろん、企業の財務・経理担当者様、個人事業主の方にもご活用いただけるツールです。

実際、中小企業のバックオフィスの方々にもご利用いただいておりまして、小規模ですと1人で税務も法務も労務も担当しています、ということが少なくないようですから、意外と需要が多いなと感じているところではありますね。簡単に使えましたというお声もいただいております。

税務に関する実務内容も強化学習させておりますので、LINEで質問していただけば1分以内に質問内容を要約し、参考URLつきの返信文が完成します。特に税理士さんは、クライアントさんからの質問に対して、幾つも文献を調べて文章を考えて書いて送るという作業を、大幅に効率化することが可能です。また、税理士さんは割と税務以外の質問をされてしまいがちですが、ある程度の分野をカバーしておりますので、これらの対応についても負荷を軽減していただけると思います。

また、税理士さんは申請書類の作成にも割と時間を取られているとお伺いしましたので、AIで申請書類を8割方作成できる機能のβ版を、夏頃には完成させたいと考えています。」

Q.「税務GPT」の開発背景について教えてください

「生成AIが発展している昨今、生成AIを実務で使用していくニーズが急速に高まっています。特に、会計事務所および税理士法人ではスモールビジネスでの資金留保や利益確保、資金調達による事業拡大など事業フェーズにより優先事項が異なるため、AIで最適な回答を判断することが難しいことが課題にありました。

また、顧問先からのメールやチャットを用いた質問に応えるために業務が中断したり、新人スタッフの教育のために質疑応答を繰り返すことに時間が割かれて、高度な税務相談や顧問先別の提案に時間を費やすことが困難な状況が問題となっているようでした。

そのような中で当社は、手軽に生成AIを利用してもらう必要を感じ、大規模言語モデルの研究開発で培った技術を駆使した、精度の高い税務特化AIチャットシステム『税務GPT』を開発した、というのが開発の背景です。

…と申し上げると非常に固い感じがしますが、実は懇意にしている税理士法人さんと”こういうのあったら便利だよね”とお話していたことから始まっています(笑)。やはり税理士さんといえども、税務に関する全ての最新情報が頭に入っている訳ではないでしょうし、正直なところ不得意な分野もお有りだと思いますので、いつでも何でも聞ける天才税理士がAIとして横にいてくれれば心強いのかなと。

色々とリアルなところをお話してくださった税理士法人の代表はもう20年超税理士をされているのですが、社内の所属税理士はそれほど利益が高くない、基本的に6〜7割は会議に使っているので、この時間が削減できれば新規開拓もできるのに、ということだったんですね。こうしたニーズがあるのならば、私としてもちゃんと勉強して資格を取られた方々だからこそ、企業価値の向上といった本業に集中していただきたい、税理士資格がなくてもできることはAIに任せていただきたいなと思い、開発に着手しました。」

Q.他社のAI相談ツールとなにが違うのか?

「1番の差異であり強みとしては、自分たちで言語モデルを開発している点だと思っています。例えばGPTを使って税務を教えるとなると月額利用料などが高額になってしまいますが、弊社はAIサーバーを自社で保有していますので、ランニングコストの削減が可能です。つまり、弊社と同レベルのサービスを同等の値段で提供することは、恐らく他社にはできないことだろうと思っています。

また、冒頭でもお伝えした通り、技術力の高さとご要望に対する早急な対応力には自負がございまして、AIに知見がない方でも使いやすい実装を心がけて作り込んでいます。LINEを選択したのは、日本人が1番使っているコミュニケーションツールでリリースすることの価値や、ユーザー体験を意識してのことでもあります。」

Q.なぜ出力精度がChatGPTより高いのか?

「各省庁の国内税務に関する情報を全て強化学習させている他、独自でも税務に関する専門知識を追加していることが挙げられると思います。ネット上には間違った情報もありますが、各省庁の正しい情報を認識させ、似たような情報がある場合は、省庁の情報を優先するようにしていますので、日本の税務に関する分野ではChatGPTよりも出力精度が高いという訳です。

更に、税理士さんは各税法の問答集を参照されることが多いとお伺いしておりますため、その全てを記憶させたものにアップデートする予定でして、今後より向上する精度に期待していただければと思います。」

Q.「税務GPT」を、税理士はどのように活用できる?

「LINEを登録することですぐにお使いいただけますし、日本人が普段から1番使っているコミュニケーションツールですから、使い方も簡単です。その上で、クライアントからきた質問をLINEで『税務GPT』に送るだけで、精度の高い回答を得ることができますので、これまで必要としていた調査時間や社内確認時間の削減を目に見える形で実感していただけると思います。

また、会計事務所や税理士法人によって得意な分野、不得意な分野があると思いますが、『税務GPT』は日本の税務に関する情報を強化学習させている為、これまで以上に幅広い業種のクライアント獲得が可能になります。

先ほども少し触れましたが、具体例としてとある税理士法人では、代表が1番時間を使っているのが社内会議で、税務に1番詳しい代表への質問が絶えなかったようでした。しかし『税務GPT』を活用することにより代表の業務が削減され、社外での新規クライアント獲得活動、自分の時間の確保、社内組織の構築時間の確保、採用活動の強化に繋がったというお声もいただいております。」

Q.どのくらいの業務削減が可能でしょうか?

「具体的な数字はユーザーの環境等により異なりますが、例えば、税理士事務所が対応しているクライアントからの質問に、1分程度で回答できるとしたら如何でしょうか?事前に必要だった、質問された分野に詳しい人への社内での確認時間、回答するために調べている時間、文章を作成するといった時間が削減され、全部で1分程度になるとお考えいただければ判りやすいと思います。

また、税理士法人や会計事務所に所属する全員が税理士資格を保有しているということはないでしょうから、資格が必要ない仕事にもリソースを割いておられるところ、所属している税理士の時間が削減されることで、税理士の資格を有しているからこそできる業務に集中でき、社内の業務効率が改善されます。クライアント企業へ価値向上や資金調達などを提案する時間が確保でき、顧問継続率の向上や、新規開拓のリソース確保に繋げていただけるのではないでしょうか。」

Q.貴社の今後の展望について教えてください

「『税務GPT』には、補助金等の申請書類作成機能の実装を予定しているところです。年度によって文言や分野も変わるため、まずは会計士・税理士様のサポートができるレベルを想定しておりまして、その後、より高い精度の向上を目指します。

また、夏頃には税務相談の返答精度をさらにアップデートする予定です。会計士・税理士の皆様が”本来すべきである業務に集中していただける”ように、24時間365日対応してくれるコンシェルジュのような存在を目指してサービスの向上を目指し、多くの方に使っていただけるようにしていきたいですね。

士業の皆さんは、せっかく勉強して難しい試験に受かり、国家資格を取得されているのに、本来やるべきでない仕事をされているケースが凄く多いように感じています。そういう意味では士業に関わらず薬剤師さんなど、幅広く有資格者に対して寄り添えるようなサービスを展開していけたら良いな、という感じです。」

Q.今後、どのような士業が生き残っていけるのか?

「生成AIの登場により、士業の仕事が無くなるのではないかといった意見も多いですが、私たちはそのようには思っていません。生成AIと士業は協業していくべき存在と認識しております。

これまで行なっていたクライアント対応の時間や調査時間などにAIを活用することにより、より深く企業価値の向上や資金調達などに時間をかけることができるようになれば、その結果、会計事務所、税理士法人の価値が上昇し、企業からの需要が高まると予想しているからです。士業業界には、これまで培ってきた文化や方法論が多くありますが、AIを活用できるようになれば対応できるクライアント数が増加し、収益の向上が見込めます。また、業務効率化による省力化ができ、1人当たりの平均年収が向上するようにもなるでしょう。

逆に言えば、AIやDXに遅れをとってしまうと、これまでと同じような従業員数が必要であり、1社あたりからいただく顧問料を高くすることも難しく、これからの時代の戦いに勝つことが困難になることも予想できます。生成AIが登場した以上、まずは時代の変化に対応していくことが大切なのではないでしょうか。」

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北森聖士 プロフィール

関西学院大学在学中に株式会社ライズアースを創業し、在学中に株式会社Donutsへ売却。売却後3年半、インフルエンサー事業に従事。現在は生成AIを軸に生成AI×税務の『税務GPT』、生成AI×労務の『労務GPT』等を展開する株式会社VOLTMIND代表。