経営者、起業者方向け 身近な事例解説【教養としての「行政法」入門】服部真和

経営者、起業者方向け 身近な事例解説【教養としての「行政法」入門】服部真和

事務所名:

服部行政法務事務所

代表者:

服部真和(行政書士)

事務所エリア:

京都府京都市

開業年:

2009年9月

従業員数:

1名

Q.本書は、どのような書籍ですか?

「一般的にメジャーではないんですけれども、本来は日本で生きていく上で重要な、行政法と言われる抽象的な分野の法律を扱っている本ですね。

私は”法規制”という言い方をすることが多いんですけれども、国民に何らかの規制をしたり、逆に何か給付をしたりすることで日本が実情を保っている法律の裏側を、要素分解して説明する本になっています。」

Q.本書を執筆したきっかけは?

「もともとは、私に何らか本を書いてくださいという編集者からのオーダーがありました。当初は複雑でわかりにくい、いわゆるテック系やデジタルまわりのビジネスモデルを説明した内容にして欲しい、という要望だったんです。

しかし、その編集者が所属している出版社さんが法律に強いということと、私としても本業が行政書士であることから、どうせなら行政法とビジネスモデルを絡めた内容にしようということで、若干軸を変えることにしました。」

Q.本書の特長や、類書と違う点は?

「従来の行政法に関する書籍は、勉強すると用語や学説に振り回されてしまいがちで、私自身にもそのような経験がありました。そうしたことから、できれば今回は普段法律に関わっていない人にも教養として理解していただきたいと考えたんです。

教養にしては分厚いのですが(笑)、極力みなさんにとって身近な事例を使って、実はその背景に行政法があるんですよという納得を誘っていく方向で執筆しました。」

Q.本書はどのような人に向けて書きましたか?

「基本的には、やはり経営をされている方や、これからビジネスがしたいという方をメインの読者層として考えていましたね。どうしてもビジネスモデルと関連させよう、というところから企画が始まっていますので、最初にイメージする読者としてはビジネスをしている人か、ビジネスに何らかの興味がある人になっています。

その次に、学生さんや主婦の方など、生き辛さを感じているけれども何故だか分からない人に向けて、1つの答えを示す形でお伝えできれば良いなと思いましたね。最近も話題になっていますけれども、やはり選挙に自分たちの民意が反映されていない、という意見がたくさん出ています。

それをもう少し解像度高く言語化できるように、例えば”こういう政策であるべきなのに、こうなっていないから”民意が反映されていなくてダメなんだ、と表現できるようになって欲しいという個人的な思いがあって書きました。

もちろん士業の方へ向けてもいます。どちらかといえば1章から7章はおさらいと言いますか、自分たちが勉強してきた行政法というものは、改めて現場から見たらこうだよね、という捉え方をしていただきたいですし、8章に関しては”今まで考えたことがないな”という視点をご提供できれば良いな、と思っています。」

Q.士業の方には本書をどのように活用してほしい?

一般の方向けに行政法の重要性を理解して欲しいと思って書きましたので、逆に士業の方なら「こういう説明をすれば一般の方に自分たちの重要性が分かってもらえるのか」ということを、トレースするような形で使ってもらえたらありがたいな、と思っていますね。

法学部出身の方を除いて、多くの士業は行政法を学ぶ機会がないまま実務に取り組んでいるのが実情ではないでしょうか。そうすると、どうしても1つ1つの手続きにとらわれてしまうようなところがあると思います。しかし、その背景では統一的なルールのもとで運用されている、という点が重要なんですよね。

行政書士であっても行政法が苦手な方は同じですが、行政法に馴染みが薄いかもしれない社労士さんや税理士さん、司法書士さんであっても、手続き業務をやる時に実はその後ろにもっと原則的なルールがあること、場合によってはそこから自分たちの仕事のやりにくさを補えるような部分があることを、感じ取っていただきたいと思っています。

具体的には、例えばそれほど多くはないにしても、士業としては正しく処理をしているにも関わらず申請が拒絶されるケースがありますよね。そうした場合の対応は、仕組みを知っていなければ出来ないことだと思います。どこに問題があって、その問題をどこへ伝えれば良いのかということは、やはり行政機関の種類や行政作用を理解していなければ難しいのではないでしょうか。その点はこの本を読んでいただくと、だいぶ頭の中で構造化ができるんじゃないかなと思っています。」

Q.本書を通じてのメッセージは?

「特に士業さんへ向けてということですと、本書は自分の携わっている手続きが何であるのか、その趣旨目的から理解していただけるように説明しているんですね。

また、行政法は社会的課題を解決するために何らかの法律になっていたり、その法律を詳細な形で命令に落とし込んでいるものもありますので、その法律を所管したり命令を出している省庁が、なぜその省庁なのかということが全て構造的につながるように書いてもいます。

やはり業務をしていく中で、単に手続きだけを見るのではなく、その趣旨目的が何で、所管しているのはどこで、なぜその省庁なのか、といった全体のつながりを理解していただけたら、より業務がやりやすくなるんじゃないかなと思うんですけどね。

また、士業ではなく本書をお手に取ってくださった方は、自分たちがなんで生き辛いのか、世の中はこういう風に回っているけれども、なんで自分の思う通りに変わらないんだろう、と思っておられるのかもしれません。しかし行政法を通じて裏側を知ることで、一般の方であれば自分たちがどういう行動を取ればいいのか、選挙の時にはどういうところを見ればいいのか、選ぶべき議員さんはどういう人なのか、といったことが分かると思います。

あるいは経営者であれば、ビジネスに対してなぜ規制がかかるのか、なぜそれをちゃんと守らないといけないのか、あるいは規制が守りにくいものであれば、現場と法律のズレが生じていることなどが分かるでしょう。そうした守りにくい規制がある場合には、政策提言やグレーゾーン解消制度を活用するといった、よりビジネスをやりやすくする方法のヒントが載っていますので、活用していただけたらありがたいですね。」

服部真和 プロフィール

1979年生まれ。京都府出身、中央大学法学部卒業。京都府行政書士会所属(常任理事)特定行政書士。日本行政書士会連合会(理事・デジタル推進本部 副本部長)。服部行政法務事務所所長。経済産業省認定 経営革新等支援機関。総務省電子政府推進員。ギター弾きとITコーディネータの兼業という異色の経歴から、行政書士に転向する。ソフトウェアやコンテンツなどクリエイティブな側面における権利関係を適切に処理する契約書や諸規程の作成を得意とし、アーティスト支援やスタートアップ支援を中心に活動。新規事業創出の場面を中心に、補助金や融資などの資金調達、経営改善、その他許可申請などの行政手続きを通して企業活動全般と法規制に関するコンサルティングを行っている。