実務20年の社労士DX・AIで推進する業務改革と価値創造:社会保険労務士 荻生労務研究所 荻生清高氏

実務20年の社労士DX・AIで推進する業務改革と価値創造:社会保険労務士 荻生労務研究所 荻生清高氏

事務所名:

社会保険労務士 荻生労務研究所

代表者:

荻生清高(特定社会保険労務士・生成AIアドバイザー)

事務所エリア:

熊本県熊本市

開業年:

2021年5月

従業員数:

1名

大杉:まずはお名前と事務所所在地、保有資格、そして現在の主な取扱業務について教えていただけますか?

荻生:特定社会保険労務士の荻生清高と申します。熊本市内の中心部にあるコワーキングスペースに事務所を構えておりまして、手続き代行や給与計算、労務相談、就業規則の作成、顧問業務といった、一般的な社会保険労務士業務で事業主様や人事担当の方々をサポートしている他、クラウドを活用した勤怠管理・給与計算システムの導入支援にも力を入れています。

大杉:なぜ数ある資格の中から社会保険労務士を選ばれたのでしょうか?

荻生:一言で言えば、勉強の延長で自然と社会保険労務士に行き着いた感じですが、以前勤めていた製造系の企業で人事労務部門に配属されたことがきっかけです。全くの未経験でしたが、いきなり社員数1,800人規模の会社で労務管理や社会保険の手続きを担当することになったんですね。上司は外回りが多くほとんど何も教えてくれず、前任者は引き継ぎをせずに退職済みでしたので、完全に独学で業務を覚えるしかありませんでした。周りに相談できる人もいない環境で、本当に手探りの中いきなりの実戦でしたね。

出入りの多い会社で、入社だけでも毎日10人くらいはいたでしょうか、とにかく役所に電話をして聞いたり、社会保険事務所や労働基準監督署に確認したりと少しずつ知識を積み重ねていきました。そうした中で、やはり労働法や社会保険の仕組みを根本的に学びたいと強く思うようになり、社労士資格の取得を目指したという感じです。当時の部長が社会保険労務士でしたので資格自体は身近で、他の資格は知りませんでしたね。

大杉:全くの未経験からそれだけの規模で業務対応されていたのは、本当に驚きです。そこから開業に至る経緯はどのような感じだったんでしょうか?

荻生:勤めていた会社がリーマンショックで人員整理を行うことになり、最終的には私も整理対象になったことがきっかけですね。その後、2つの社労保険労務士事務所で10年余り勤務してから開業しましたので、実務で言えば20年ほどのキャリアがあり、業務の流れは一通り理解している状態でのスタートでした。とはいえ、これまで経験した事務所では紙の運用が多かったので完全オンラインにしたいという思いがありまして、私一人で運営しているということもあり、クラウドツールやオンラインツールを導入して業務を効率化しています。

また、コワーキングスペースを利用することで事務所の固定費も抑えていますので、「フルリモート・フルペーパーレス・ローコスト」な事務所になっていますね。コスト面で言えば自宅事務所という選択肢もありますが、やはり紛争解決業務を行うということもあって自宅住所を公開したくなかったので、コワーキングスペースの活用に落ち着きました。

大杉:コワーキングスペースという選択は興味深いですね。入居者同士の交流など、何か具体的なメリットはありましたか?

荻生:たくさんありますね。まず新しくてきれいですし、コワーキングスペースは地元の新聞社が運営しているので発信媒体を利用できるサービスがありまして、利用料金内で地方紙にセミナー情報を掲載してもらえるんです。また、定期的に他の入居者との交流会が開催されていますので、その場で相談を受けるといったビジネスチャンスもあります。スタートアップやベンチャー企業など様々な業種の方々が集まっていて、最近ではアドバイスをきっかけに顧問契約につながったケースもありました。

大杉:逆に荻生先生から提案できる機会もありそうで良いですね。現在の主要顧客はどういった業種なんでしょうか?

荻生:医療系、製造業、ビルメンテナンス業など、幅広い業種の方がいらっしゃいますね。大学発ベンチャーの経営者など、スタートアップ企業の方もおられます。

大杉:どういったルートで依頼が来ることが多いですか?

荻生:私が認定アドバイザーとして利用しているクラウドシステムのホームページで、それを使える社労士を検索したら私がヒットした、というケースですかね。また、熊本県社会保険労務士会のホームページにある会員検索ページから私をピンポイントで探してくださる方がそこそこいらっしゃるようです。一般的な検索エンジンよりも、何らかのページを経由して辿り着いてくださっている感じですね。

大杉:私は社労士会のホームページから依頼が来たことはないのですが、何か工夫されていることがあるのでしょうか?

荻生:プロフィールを充実させることで選ばれる可能性を高めている、ということはあります。セミナー講師として社労士を探している方が会員検索をして見つけてくださることもあるようです。熊本でDXに強い社労士が少ないという点も、アドバンテージがあるのかもしれません。

大杉:社労士会のホームページはUIも使いやすく、専門分野も検索できて割と優秀な導線なんですね。クラウドシステムを活用されているということですが、少し詳しく教えていただけますか?

荻生:顧問契約の場合は私が使用しているシステムをご利用いただきますが、そうでない一般的なシステムをご希望の場合は、スポットで導入支援も行っています。基本的には顧客に直接システム契約をしてもらい、サポートは顧客の状況に合わせて柔軟に提案している形です。例えば自分で操作できるようになりたいというケースであれば、うまくいくような仕組みや手順をこちらで設計して、業務フローができたところで引き継ぐ、というようなサポートになりますね。

あるいは価格を安く抑えたいということでしたら、システムのベンダーさんが提供している導入支援プログラムを使っていただいて負担が増えないようにしつつ、私がカバーする部分だけを請求することもあります。お引き受けする時は最終的にお客様ご自身で全てができるようになって卒業していただきたいという気持ちでやっているのですが、実際には「これもやってよ」という感じで、私のやることが多くなっていきますね(笑)。

大杉:可能な範囲で結構ですので、お使いのシステムやオススメのソフトについて教えていただますか?

荻生:手続き関係は『SmartHR』、給与計算は『マネーフォワード クラウド給与』、勤怠管理は『KING OF TIME』を利用しています。お客様から情報をいただかなくてもご自身で登録できる、特にスタートアップ支援において自由度の高い労働時間設計ができる、といった点を考慮して選んでいるという感じですね。

大杉:私自身もお客様がなかなか卒業してくれない問題を抱えているので勉強になります。そうしたサポートの中で、熊本という地域で特有の課題やニーズなどはありますか?

荻生:これは熊本特有というよりも地方に共通している課題かもしれませんが、一つは社労士の認知度が全く足りないということがありますね。例えば、年に1度8士業合同の無料相談会をやっているのですが、他士業の方々すら社労士が何をやっているのかあまりご存じないので、一般の方は余計にそうなんだと思います。コロナ禍の最中に顧問社労士がいない企業をアドバイザーとして回った際も、社労士が雇用調整助成金の支援ができることが知られていませんでした。

ただ、熊本地震での災害対応経験を活かして、コロナ禍では熊本県社労士会が事業者支援を全国に先駆けて行った点は好プレイでしたね。ホームページのUIが優れている点など、熊本県の社労士会は意外と立ち回りが上手いので、そういう意味では恵まれているのかもしれません。知名度の低さは私たちの発信不足もあると思うので、逆にそこをきちんと伝えていけば、熊本ではまだまだニーズがあると思っています。

大杉:コロナ禍ではあまりスムーズに動けなかった社労士もいたようですが、雇用調整助成金など一般企業での豊富なご経験をお持ちの荻生先生にとっては伏線回収になった形ですね。今後取り組んでいきたいことや目標などについてお聞かせいただけますか?

荻生:やはり、本格的にベンチャー・スタートアップ支援に力を入れていきたいなと思っています。すでにある程度の人数を雇って仕組みができて、という状態で壊してやりなおすくらいだったら、最初から相談していただけるほうが良いですから、会社の立ち上げ時期からきちんと労務管理や制度設計で関わって、スムーズな経営をお手伝いしたいですね。また、AIを活用してより事務所の業務効率化を進めたいと考えており、そのノウハウを顧客サービスの向上にも展開できればと考えています。

大杉:起業の時点で相談してほしい、本当にその通りですよね。私も代行じゃなくて仕組みを作りますというメッセージはどんどん出していきたいと思っています。最後に、これから士業を目指す方や開業される方へ向けて何かアドバイスをいただけるとありがたいです。

荻生:冒頭でお話した通り私は全くの未経験で、社労士という資格を知らないうちからこの仕事に携わり、今でも向いてないとさえ思っていて(笑)開業なんて全く考えていませんでした。人生は本当に何が起こるか分かりませんから、もちろん将来設計も大事なのですが、目の前のことをきちんと適切にやっていけば道は開けるということなのかなと思っています。これは現在の自分に言い聞かせていることでもありまして、実は今でも未経験の仕事がたくさん来るのですが、とりあえず受けてから考えるというスタンスですね。

この先さらにAIが発達しても、社労士が活躍できる余地はまだまだ大きいと思いますので、社労士を目指したいという思いがあればぜひ入って来てほしいですし、もし私の知見でお役に立てることがあれば、お話させていただきたいと思います。

大杉:それはとても心強いですね!本日は貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍を楽しみにしています。

荻生清高 プロフィール

特定社会保険労務士。
熊本市内の社会保険労務士法人で10年にわたり勤務社労士として従事し、医療機関・建設業や運送業・製造業など、多様な業界の労務管理支援を手掛ける。2021年5月に熊本市で社会保険労務士 荻生労務研究所を開業。現在は労務管理支援、勤怠管理・給与計算システム導入支援を手掛けるとともに、労働法と労働判例の調査・分析力を活かし、ユニオン対応・問題社員対応など紛争の未然防止活動、セミナー講師や寄稿・執筆活動を展開している。
今後はスタートアップ支援施設に入居する地の利を活かし、スタートアップ・ベンチャー企業の支援に注力、労働者と企業が共に成長できる環境作りを進める予定である。労務管理の専門家として、知識を現場で活かしながら信頼されるパートナーを、目指している。
著書に「4人以下の小さな会社・ひとり社長の労務管理がこの1冊でわかる本」(Kindle)。

インタビュアー 大杉宏美 プロフィール

クレド社会保険労務士事務所代表。大阪大学法学部卒業。 サントリー(現サントリーホールディングス)株式会社を経て、医業経営コンサルティング会社に参画。クライアントの抱える多様な問題に応えるため、社労士資格、行政書士資格を取得し開業。医療法人・スタートアップ企業の労務コンサルティングを得意とする。医業専門リーガルサービス法人共同代表、専門家集団『BAMBOO INCUBATOR』所属。医療労務コンサルタント、キャリアコンサルタント。