葬儀業界の現在と士業との関連性:株式会社ティア 鵜野智教氏

葬儀業界の現在と士業との関連性:株式会社ティア 鵜野智教氏

事務所名:

株式会社ティア

代表者:

冨安徳久

事務所エリア:

愛知県名古屋市

開業年:

1997年7月

従業員数:

約608名

Q.葬儀業界の現状

「葬儀業のビジネスを一言で申し上げますと、お亡くなりになった方をご葬儀からご出棺までサポートする業態、ということだと思います。しかし、葬儀はあまりに非日常的で、当然ご存知ない方もたくさんいらっしゃいますので、弊社は事前にご相談を受けるところから事後のお手伝いも含めてサポートしているという形です。

終活というものが一般的になり、昔に比べるとご相談に来館される方が増えています。また、ここ20年ほどで葬儀会館などご自宅以外の場所で葬儀をされる方も増えてきましたので、そういう意味では施設も増えていると思います。

コロナの影響もありますが、最近は昔に比べて参列者の人数が少なくなり、家族葬と呼ばれているような、本当に身近な方だけでお見送りをされるということが非常に増えてきたなという印象です。また、簡素化されており、一旦ご安置だけをしてそのまま火葬場へ行くような、いわゆる火葬式や直葬という言い方をするスタイルが増えてきたように思います。

葬儀業界へのコロナの影響は非常に大きく、これまでは家族葬であっても40人〜50人の参列者数が普通でしたが、10人程度であったり1桁であったりと、送る形としては非常に変わりました。」

Q.葬儀業界の変遷や変化

「かつては近所の方はもちろん、会社の方が参列にいらっしゃいましたし、もう少し昔であれば会社の方がご葬儀をお手伝いするようなこともあったのですが、今ではそうしたことはなくなりました。そうした意味で繋がりのようなものが希薄になっていると思います。ご遺族の思いとしては、あまり気を遣わない相手のほうが関わりやすいので、そちらへ移行しているようです。

規模としても、2000年代のはじめ頃までは、一般の方でも100人単位の参列者が集まることは珍しくなかったので、町内会の方たちへの対応としてバスを手配したりもしていましたが、これも今や皆無です。原因としては、コロナ以前から家族葬の流れではあったのですが、やはりご遺族側が知らない人が来ると気を遣うということで呼ばなくなった、また金銭的なものもあると思います。ひと昔前であれば200万円は必要というイメージだったものが、ご葬儀に対してその額を出そうという風には思わなくなったのかなと感じます。全体的には低価格化へ向かってきています。

そのような中で弊社の考え方としては、まずお客様から沢山”ありがとう”をいただくことをベースにしていて、お客様ファーストと表現するのはおかしいかもしれませんが、一番大切にしていることです。昔は今よりもお客様が情報をお持ちでなかったということもあり、どちらかと言えば葬儀社主導という部分もありましたが、弊社は丁寧に、お客様に寄り添ったご葬儀を進めてきました

今はお見送りなどのサービスに携わる人数が少なくなってはいるのですが、できる限り故人様のために色々な方へお声がけをして、良いお見送りができるようにご提案させていただいております。ただし、あくまでもご提案で、それをご遺族がどのように思われるかというところはあるのですが、できる限りサポートを推進していきたいというのが弊社の考え方です。

他社との違いについては、お客様からのご質問と、こうしたインタビューのようなビジネスのお話では少し違っていて、前者であれば先ほども申し上げたような本当にお客様に寄り添った形でのご提案という点に加え、価格が明瞭であることです。業界的に不透明であったところを、いち早く明瞭化し、お客様に分かりやすいサービス内容や価格でのご提供に努めてきました。

ビジネスとしては、当然現在の葬儀内容をいち早くお客様へご提案し、かつ、葬儀会館と呼ばれるような葬儀を行う施設をドミナントで展開することによって、地域でのブランドを確立していったことが成功要因だったのではないかという風に思っています。

先ほども触れた通り、ここ数年のトレンドとしては少人数化に尽きますので、お亡くなりになった病院からご自宅へお帰りにならず一旦どこかへご安置して、ご遺族とは火葬場で待ち合わせをするといった、お葬式をあげない形も増えてきました。どんどんコンパクト化へ向かっていることについては、我々としては思うところもあります。やはりちゃんと送って差し上げたいという気持ちがあります。

Q.葬儀業界が抱える課題

「やはり低価格化です、1件あたりの単価はかなり下がってきています。また、葬儀社を選ぶ動線がかなり変わってきているということもあります。昔は、ご近所の葬儀社に頼めば良い、または互助会任せ、あるいは病院から紹介されるようなこともありましたが、今はネット検索や、弊社のような互助会ではない会員制の葬儀社が増えてCMが流れていたりもしますので、お客様の選び方が年々変わってきていると感じています。

ただ、弊社の場合はドミナントにより展開地域での認知度が高いので、オフラインでご用命いただいていることが多いです。『ティアの会』という会員制度にご入会いただきますと葬儀費用が割引価格でご利用いただける他、会員様の優待サービスとして宿泊施設やレストラン、衣料品が安くなったりもしますので、事前のご相談にいらした際などにご入会をお勧めしています。生前入会が原則で、もちろんご相談のタイミングはご事情によって様々なのですが、ギリギリに入会される方が最も多く、中にはご自身の葬儀のことを早めに考えられて弊社を選んで入会してくださる方など、様々です。

また、『ティアの会』の特徴としては、弊社で1度ご葬儀をあげていただきますと、権利が失効します。1会員権あたりご葬儀1回ですので、ご尊父さまの葬儀をあげていただいた後、再入会されるという方もたくさんお見えになります。

高齢化と人口減少という社会的背景に関しては、弊社としても計画に従って出店先の調査を行った際、飽和状態の地域もある訳ですので、空いているところをしっかり埋めてブランディングしていくということだと思います。高齢化云々よりも、売上や件数を増やすためにどういう風にやっていくのかが課題というところです。」

Q.葬儀業界と士業、専門家との関わり

「一番関わりが大きいのは、やはりお葬式が終わってから発生する、何らかの手続きです。不動産の登記や、遺産分割協議書の作成、銀行の解約などが多いです。相続税の申告についてはヒアリング対応や、お客様からのお問い合わせに対して士業の先生をご紹介するといったところす。あとは、事前のタイミングとして遺言書の作成などです。

ご協力いただきたい士業の特徴としては、お客様に対する柔らかさや丁寧さが1番です。私のイメージで申し訳ないのですが、どちらかといえば士業の先生は固くお話しになる方が多いように思いますので、あまり営業的でもなく、ちゃんとお客様とキャッチボールができて、きちんとヒアリングしていただける方であることが大前提になります。

また、案件管理という側面で、きちんとコミュニケーションが取れる方であっていただきたいです。割と”全然連絡がない”というクレームが多く、戸籍の収集中など待機のタイミングがあるのは分かるのですが、お客様にとっては動きが見えませんので、今はこういう状況ですというような進捗のコミュニケーションは結構大事だと思います。こうした対応が不足している先生は多く、お客様としては弊社へ依頼して先生を紹介してもらっているという認識で、お出迎えや供養などお客様と弊社とは都度のコミュニケーションがありますので、クレームも早い段階で弊社へ届きます。お客様としても弊社としても、進捗管理とコミュニケーションに気を配っていただける先生が1番です。

また、お葬式の直後ですのでご家族は当然通常の精神状態ではない訳ですが、ファーストアプローチでそこに配慮してお話をしていただけない方や、事務的な対応をされる方も少なくないようで、そこはやはり”この度はご愁傷様です、本当に大変でしたね”というお気持ちやお言葉がないと、葬儀に関わる仕事は難しいと思います。葬儀社から紹介を受けて出向かれるという先生であれば、尚更です。

昨今は、士業の先生から弊社との協業アプローチを受けることも増えていますが、やはりお客様は物理的に近い地元の先生をご要望されることが多いですし、個人情報の管理が厳密であることなどは当然として、1度人柄を見て決めたいということも大きいようです。」

Q.葬儀業界の展望について

「2040年までは、葬儀の件数は増え続けると予測されています。弊社としても同様だと思います。実際今もずっと増え続けていますし、もちろん努力はしていくのですが、一方で単価が間違いなく下落しているということも見えているので、それこそ士業の先生方との連携による手数料なども、副収入として大切なものになってくると思います。

弊社の今後としては、お客様の人生をトータルデザインしていくことに関わっていきたいと考えています。葬儀という”点”だけではなく生前から、”線”として長くお客様をサポートできるようにサービスを拡充して、トータル・ライフ・デザイン事業を発展させていきたいです。」

鵜野 智教 プロフィール

株式会社ティア 葬祭推進部 部長 鵜野智教

愛知県出身 2009年ティア入社 主に大手企業、団体、法人向けの法人契約や業務提携などのアライアンスを担当し、2020年より士業との業務提携にも従事。