GVA manage 徹底攻略:GVA TECH株式会社 代表取締役 山本俊氏

GVA manage 徹底攻略:GVA TECH株式会社 代表取締役 山本俊氏

事務所名:

GVA TECH株式会社

代表者:

山本 俊(弁護士)

事務所エリア:

東京都渋谷区

開業年:

2017年1月

従業員数:

67名(2023年6月時点)※業務委託含む

Q.GVA manageの開発背景

「ローンチして半年ほどの新しいサービスですので、まず『GVA manage』について簡単にご説明しておきますと、基本的には法務案件の管理システムで、事業部とのやりとりなど、法務案件に関する全ての情報を蓄積、一元管理して、分析したり活用したり出来るマネジメントシステムです。開発のスタートは割とふわっとしていて、法務部と各事業部との間にある問題に関して何かできることはないかな、という感じでした。他のプロダクトの類似品を作ろうと思ったというよりは、純粋にユーザーの声を聞くことで進めていて、海外にはマターマネジメントという領域があるということは、開発・リリースしていく過程で結果的に知りましたね。

弊社のパーパスは”法律とすべての活動の垣根をなくす”というものですよ。ざっくりお伝えすると、やはり法務の大きな壁というか、そこを壊していくということを、テクノロジーを使って実現したいというところです。

『GVA manage』自体の構想は2年ほど前からありました。まず『GVA assist』の話にはなりますが、AI契約レビューの理想形は、法務の知識がない事業部でも使えるというところにあると考えていて、それこそが本当に垣根を壊しているという感じですからね。ただ、やはりそこに到達するにあたって現在のツールは、ある意味で自然言語の類似性をもとに、雛形や解説を出しているに過ぎないんですよ。もちろんそれ自体も今までは出来なかったことで、確実に業務効率化の役割を果たしてはいるのですが、最後の判断は人がやるという前提なんですよね。

そんな中で、本当に法務の知識がない人でも何も考えずに使えるものに落とし込んでいくというのは、ちょっときついかなと。そうした点を整理していくうちに、やはりもう少し事業部と法務部の間に入り込めるというか、双方に価値を生み出すものを作らなければいけないかなと思い始めました。AI契約レビューは、事業部からの依頼を受けて、法務部が裏側で使うツールという感じなんです。

実際にヒアリングしていくと、やはり事業部が法務部へ依頼する際のストレスであるとか、法務部が案件管理をするにあたってデータの分析が全くできていないということが分りました。どの部署から依頼が来ているのかという話にしても、数が分かれば色々と手が打てる訳です。本来ならこの事業部からはもっと依頼が来ていなければおかしいんじゃないのか、あるいはやたらと多いのでは、といったことなどを管理するために、双方にメリットがあるものとして形にしたのが『GVA manage』です。走りながら開発が続いている段階ですので現在は少し法務寄りではありますが、事業部への価値提供や、事業部との接合点を強く意識しています。

GVA manageのサービスサイトで公開していますが、割と大きな企業にも多くご利用いただいていて、評判は良いですし、皆さん結構すぐに使えるようになっておられるという印象ですね。具体的には割とベタではありますが(笑)”情報の共有や正確性の課題が解決できて、業務効率化も大幅に向上した結果、質とスピードが高まった”というレビューをいただいています。また、”事業部はログイン不要で、コミュニケーション方法を変えずに済んで良かった”という、すぐに使えるという価値についての事業部からの声は嬉しかったですね。

これまでの法務部と事業部との情報共有などは、コミュニケーションがあまり上手くいかないケースが多かったようで、例えば依頼の際にメール等で雑に投げられていたものが全部集約されるだけでもシステムを使う意義は大きいと思います。情報がまとめられていないと全てが個別の案件になりますから、似たような依頼が五月雨式に来て蓄積もされず繰り返されるというような無駄が発生していたりして。更に、ツールそのものですよね、メールでも来るしTeamsでも来るという感じで、わざわざExcelへ転記して共有フォルダで格納するというような。実はメール・Excel・共有フォルダの3種の神器を使っている会社が1番多いんですよ。

一方で、法務の案件管理サービスを会社へ導入した際に、全社員がアカウントを持って法務の中身を見に行けます、ということが果たして良いのかという問題があります。年に1回相談するかどうかという人もいる訳ですから、今まで通りにメールで依頼ができる、その結果が全部蓄積されていくという形に落ち着く会社が多いですね。先ほどもお伝えした通り、現時点では法務部のほうが凄く助かっているというシステムではありますが、まずは法務部が良くなれば絶対に全社的に良くなるはずですので。ただ、この”今まで通りのツールを使える”ように作るのは大変でした。」

Q.GVA manageのサービス内容

「溜まったデータを分析ダッシュボードでデータ分析できるというのは新しいのではないでしょうか。今のところですが、月の案件数、依頼部署、依頼数、契約書の類型、法律相談の類型などが分かるようになっています。また、シンプルではありますが前例の検索が可能で、これはメッセージのやり取りや、契約書のバージョンまで含めて全て蓄積されているから出来るのであって、そうした状態になっていること自体が今までになかったことなんですよ。従来であれば分散しているメールやファイルなどの情報を、全部セットで探せるということは大きいと思います。

事業部とのコミュニケーション方法を今までと変えることなく、案件を一元管理できる、更にデータ分析やナレッジマネジメントにも活用できる、全部が繋がっているというところがポイントかな、というところです。過去の案件が推移も含めてすぐに取り出せるので、予防法務にも役立つと思いますよ。契約書の最終版だけしか保存されていない場合には把握できない、ドラフトからどのように変わってきたのかということまで確認できますので、やり取りの内容や契約書のバージョンなどが塊で全て蓄積されているということの効果は大きいんです。

イメージとしては、世の中にSalesforceが入って来て可視化されたことで営業の改善が進んだ、あの流れです。今のところ法務ではそういうことが全くないので、Salesforceが世の中に出る前の営業みたいな感じだと思うんですよ。人間って可視化されると改善策を思いつくもので、そういう風な時代にしていきたいと考えています。改善という意味では、私自身に法務部の経験がない一方で、AI契約レビューの実務はやっていたので結構バイアスがかかっている自覚がありましたので、『GVA manage』を作る前に100社へヒアリングしたことで純粋に課題を吸収できたという点は良かったですね。

とにかく聞きまくって、あまり妥協せずに皆で解決策を考えましたので、技術力はもちろんですが、課題への理解の深さが活きたサービスになっていると思います。管理項目もカスタマイズできるようになっていますよ。今後はデータ分析や検索性の強化、ChatGPTを使った事前整理ができるように進化させていく予定です。」

Q.士業との関わりや、今後の士業とAIとの共存等

「現実問題として、企業の法律案件は増えています。昔に比べてコンプライアンスが重視されていますし、売上が伸びて取引先が増えている企業は意外と多く、新規事業をやる人も増えてきていますから、そうした側面から少しずつ法律案件が増えているようです。特にスタートアップは売上が伸びた後に法律問題が出てくるというのはよくある話ですしね。法務部の仕事が増えているのに、人が採用できないというお話ばかり耳にします。

企業の法務部と士業との関わりとしては、例えば顧問弁護士への法律相談や、難しい契約書に関する依頼があると思うのですが、企業側はそれなりに法務コストを使っている訳です。先ほどからご紹介している通り、『GVA manage』は従来とやり取りの方法を変えずに利用できる仕様で、顧問弁護士へ依頼する際にはメールのCCに外部連絡用アドレスを入れるだけでシステムに情報が蓄積されますので、法務部としてもコストが削減できますよね。

ただ、『GVA manage』は基本的に法務部で複数人を抱えているような企業が対象で、それほど法律案件が多くない、案件管理をしなくても済むような中小企業であれば、士業へ依頼するほうが良いと思っています。そういう意味で、『GVA manage』は士業と競合するようなものでは全くありませんので、共存関係にあると言えるのではないでしょうか。」

山本 俊 プロフィール

弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立、2022年ジュリナビ全国法律事務所ランキングで43位となる。2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。法務管理クラウド「GVA manage」、AI契約書レビュー支援クラウド「GVA assist」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法律とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。