監査とコンサルで企業を支える未来プラス監査法人の未来戦略:未来プラス監査法人

監査とコンサルで企業を支える未来プラス監査法人の未来戦略:未来プラス監査法人

事務所名:

未来プラス監査法人

代表者:

公認会計士・税理士 松下英司

事務所エリア:

福岡

開業年:

2023年4月

従業員数:

Q.現在の御社の事業内容について教えてください

「我々は大きく2つのサービスを提供しておりまして、1つが財務諸表監査、いわゆる上場会社等の会計監査を軸にするサービスです。もう1つがコンサルティングでして、会社の成長度合いに合わせたサービス形態をご用意しております。コンサルティングを細かく紐解きますと、最初のスタートアップ時期、これは資金調達を含める形でのスタートダッシュをかけたい会社様を、海外展開等も含めた成長時期の展開を支援するサービスです。

そして、会社は必ずと言って良い程どこかのタイミングで出口を迎えるので、その出口として上場なら上場の支援、M&AならM&Aの支援、親族内承継であれば親族内承継の支援等をしていくという形ですね。更に特徴としてその先の、出口を迎えられた社長ご自身のあり方、そして社長ご一族のあり方を綺麗にまとめていくようなサポートを考えております。」

Q.現在の監査業務や業界全般における課題とは?

「買い手、売り手、世間を表す”三方よし”という言葉がありますが、監査業務においてもそれぞれの課題があるなという風に思っています。例えば監査業務の買い手としては、上場企業や大手の医療法人などが挙げられますが、そうしたところが監査を受けられない”監査難民”という言葉があるくらい、会計監査をする側の数が足りない、もしくは会計監査を受けなくてはいけない会社様の数が多いという現状があります。これは法律上の問題であるとは思うんですけれども、1つの課題ですね。

二つ目は売り手の監査法人なんですけれども、実は中で働く働き手の業務の質と量に、非常にアンバランスが生じてきているなと感じています。最近大手の監査法人を辞められた方も、自分がやっている業務量のあまりの多さに押しつぶされてしまうというようなことを言っておられましたし、私の友人でもそうした心身的な問題を抱えてお辞めになるケースはあったりしましたね。やはり業務の質と量を適性にするための効率化や改善は引き続きやっていかなければならないというのが、2つ目の課題ですかね。

最後に世間という形で申し上げますと、一般の方々は会計監査や監査法人、もしくは公認会計士について、なかなかご存知ない方も実は多かったりするんですよね。ですから、我々の社会的な存在意義などをきっちりお伝えし続けることも大切かなと思っています。我々の実態と一般の方々のイメージギャップを埋めるような啓蒙活動をしていかなければいけないのかな、というのが課題の3つ目です。

また、実は監査法人はコンプライアンス意識が過度なところがありまして、これは大切な考え方ではあるんですけれども、証拠を残すための作業に時間が掛かり過ぎるという側面があります。自分たちがやっている監査証拠を集積させて、全体をもって意見表明をするのですが、業務のほとんどの時間が資料作りに割かれてしまい、例えば上場する会社が虚偽の表示をしたり、間違えたりしていないだろうかという、会計監査として本質的な部分を見抜くための時間が割けないという問題があったりもしますね。

監査業務は人手ではなく人材を増やす必要があるのですが、実は公認会計士の合格者数を増やした時期がありました。内部統制への監査に伴ってかなりの数が必要になるということで、金融庁を含めて行った施策でしたが、これがかなり質の低下を招いたと上の世代の方々は仰っています。諸先輩方からこうした声が聞こえてくるということで、私自身はどうこう申し上げるつもりはありませんが、弁護士の司法制度改革と少し状況が似ているのかもしれませんね。」

Q.なぜ、監査法人は監査業務だけでは支援不足なのか?

「会計監査には、最終的に会社様が出す数値が適正か否かに関する意見表明という枠組みがあります。この枠組みはかなり抽象的な概念で、適正意見の概念自体を大きく解釈し業務量を減らしたり、小さく解釈することで業務量を増やすこともできるのですが、どこまで会社様に意見を言って良いものか、経営判断にズバッと切り込むくらいのことを言っても良いのかという判断が、なかなか難しかったりするんですね。会計監査は第三者としての意見表明だと言いながらも、監査法人と契約しているのはその意見を出してもらう会社様ですから、会社様の顔色も気になるわけです。

もし契約を切られてしまったら、何千万円、何億円が一気に飛んでしまうという世界ですから、そこへの配慮もしつつ言えないことも沢山あるなというのは、前職の頃に感じていました。また、そもそも会計監査というものは第三者としての意見表明なので、会社の内部から本質的に色々なものを組み立てるお手伝いができないということがあります。そこに私は少しもどかしさを感じてもいましたね。

ただ、田舎である熊本の会計事務所に戻ってからは、組み立てから会社様と一緒に行うことができるようになって、やはりそうした表現も大切だなと。つまり第三者としてずっと言い続けてもできなかったことが、内部からのサポートによって、改善を含めて会社様を上場まで持っていくことが実現できた、こういう世界観も両方で走らせるべきだなと思ったんです。

かつては私も社員として働いていましたが、熊本に戻ってから11年、どんどん商い人としての気概が醸成されていきまして、何ができるのかを突き詰めていく中でこうした表現が出てきました。お客さんから言われたことに対して、できませんではなく一旦”もちろんです”って受け入れたいんですよね。その上で、私のバックヤードにいる優れた専門家たちを集めて、何をどう解決できるのかを考えられる監査法人でありたいですね。上場にあたって必要な対応は昔と比べ物にならないくらい増え、そして複雑化していますので。

もちろん、法律上にある会計監査の枠組みで契約している場合、コンサルの表現は法律を守った上でしかできませんが、会計監査ではなく上場手前で組み立てを手伝ってほしいというケースに関しては、どんどん内部に突入していって人材の配置や商品構成まで一緒に協議できるような関係性で、我々は行きたいなという風に考えています。」

Q.「福岡プロ・マーケット」はIPO市場にどんな影響を与える?

「どこまで影響が出るのかは非常に難しいところですね。TOKYO PRO Marketができて十数年が経ちますが、当初は特定投資家向けというところにスポットライトを浴びて活動をはじめたので、そもそも売買が起きないんじゃないかと見る向きがありました。そこで次のウェーブが来たのがJ-Adviserの方々で、例えば日本M&Aセンター様や、今は船井総研様など色々なところが取られていますが、そうしたところが上場する会社側へ意義を説明することで認知を増やしていくという活動があったんですよね。

今回の福岡プロ・マーケットもそういう土台には乗っているものの、やはり私が本質的にとらえているのは、周りの人たちがどう支援するかだと思ってます。膨らみ方は周りの人たちの支援次第かなと、つまりどういう会社様を連れてきて、そして特定投資家さんたちも少しながら売買があったらいいなといったところを含めてですね。福岡プロ・マーケットはプロマーケットの中で成長させたいというのが福岡証券取引所の狙いでしょうし、我々としてもその成長のお手伝いをしていきたいなという風に思っています。

どんな影響を与えるのかに関しては我々自身がやること次第で大きくなりますし、我々だけではなく色んな方々に登壇していただかなければいけない、巻き込んでいかなければいけないという表現になりますね、難しいので答えにはなっていないんですけれども。」

Q.これからの監査法人や税理士法人に必要な戦略や人材などは?

「80歳に近い、とある先輩とお話をしている時に、先生はこれから会計業界や監査法人業界はどうなっていくと思われますか?と問われたんですよ。つらつらと述べた後、更に先生はどういう経営戦略でいきますかと聞かれ、私はちょっと詰まりました。監査法人もあるし、税理法人もあるしと。そうしたらその方が、監査法人の枠組みや税理法人の枠組みでサービス展開を考えるから、そこに限界が生じるんだと仰ったんですね。実は大きな税理士法人の代表の方々もこれからどうしていくべきかを迷っていて、その時にやはり業界の枠組みで考えているから限界を感じてしまうと。

つまり、私は一般の会社様と同じような、何なら株式会社ではありませんが、お客様のため、日本国民のために何ができるかをきちんと中心に据えて、監査法人があったり税理法人があったり、という枠組みで経営を考えていきたいという風に思っています。これが今後の私が採っていく経営戦略ですね。この考えを横須賀さんはまさにコンセプト経営だと評価してくださいましたが、外へのメッセージ性が経営理念にも現れているような、理念経営という形は私の中でも非常にしっくりくる世界観です。一つの言葉をもとに何ができるのかという派生のあり方を、日頃から考えていますね。

これは人材に関してもそうなのですが、一般企業の方々が採用も含めてどう考えるのかという時に、やはり幼少期からの刷り込みってあると思うんですよ。例えばマクドナルドは小さな子どもたちを連れて来てもらうために、遊具を設置したりハッピーセットを用意したりすることで、大人になっても食べ続けてもらう、もしくは職員になってもらうという戦略を採っています。

これを会計業界へ反映するならば、大学だったり高校だったり、専門学校で啓蒙していくことも必要なんじゃないかなと。更にどんどん上流に上流に攻めていき、最終的には赤ちゃんや子どもが会計業界に触れるというのはどういうことなのか、こうしたことを考えつつ、人材の話にも広げていきたいなと考えています。」

Q.生成AI時代になって、どのような士業・専門家が生き残る?

「何かの知識、経験、知恵等を手に入れる時にどうするかということですが、大昔はそれを知っている人に聞いてたでしょうし、あるいは知識や経験等が本にまとまって、大学の図書館や国会図書館に情報が一気に集積していき、私が小さい頃はそこへ知識、経験、知恵を求めて色んな人たちが集まっていました。そこからインターネットの登場で、いわゆるGoogle先生を含めて検索すれば良いという時代になった。

ただGoogleの言っていること自体が本質的に正しいかどうかはよく分からない、じゃあそこから次はという時に、私が懇意にしている京都大学経済学部の澤邉教授が、今からの時代は”知っている人を知っている人を知っている”ことが非常に大切だという風に仰っています。これは何なのかというと、最後3つ目の知っているが、我々でいうところのお客様ですね、そのお客様が我々のことを知っている。そして我々は何を知っているか、専門的に特化して何かができる人たちを沢山知っている。

つまり、最初の知っているが専門的にいっぱい知っている人、これを我々ジェネラリストは2番めの知っている人として知っている、そういう我々のことをお客さんは知っている、こういう状況がある中で、組織も含めた最初の知っている人がより専門立ったサービスを展開していくという形だと思います。真ん中に位置する我々は、ジェネラリスト的な形で色んな情報を捌いて、色んな形で提供していく。これからは、最初の知っている人と中間の知っている人、このどちらかに寄っていくような選択と集中が必要かなと。まずは前提条件として、そういったことをきちんと解っていく、形容していく会計人は必要かなと思いますね。

このお話は人の話で、やっぱり人の間で話がどんどん展開できるような形が問われているのではないでしょうか。最初の知っている人に関しては、より法律だったり数値だったり、詳しく詳しくどんどん深掘りが必要かもしれませんが、私としてはジェネラリストを目指しているので、そういった方々も私とはコミュニケーションを取っていただかないと困るのは困るんですけど(笑)。

この先には量子コンピューターであったり、もしくはもっと先にはコミュニケーション自体ができるような機械が出てくるのかなと思いますので、こうしたものにアンテナを張りながら、そういう世界で我々に何ができるのかなと、ずっとずっと考えていく、その姿勢が必要ではないかという風に思っております。」

松下英司 プロフィール

未来プラス監査法人 代表社員 公認会計士・税理士 松下英司
熊本県熊本市出身
平成21年に公認会計士試験に合格後、KPMG 有限責任あずさ監査法人に就職。
当該法人においては大手上場企業の会計監査とIPO、企業再生関連の業務に従事。
平成25年に熊本市の松下欣司税理士事務所に入所後、税理士の父と共に、他士業との連携を深め、医療・社会福祉関係も含めた企業再編、事業承継、相続対策のサポートにて地元企業に寄与。
令和2年にLONG AGE税理士法人の代表社員に就任。地元企業の上場支援にも貢献後、福岡に未来プラス監査法人を設立、その代表社員に就任。
その他、
・京都大学上級経営会計専門家(EMBA)
・熊本大学 非常勤講師
・あんしん経営をサポートする会  代表幹事
・Ja-BIG 取締役