- 事務所名:
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GVA TECH株式会社
- 代表者:
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山本 俊(弁護士)
- 事務所エリア:
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東京都渋谷区
- 開業年:
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2017年1月
- 従業員数:
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68名(2025年6月時点)
目次
Q1. 現在の事業内容を教えてください
GVAで現在展開しているのは、大きく2種類のサービスです。
ひとつは「法務オートメーションOLGA(オルガ)」という法務部門向けのSaaSで、もう一つは法務手続クラウド事業として「GVA法人登記」や「GVA商標登録」という登記や商標の手続きを支援するクラウドサービスです。
特に商標に関しては、ユーザーが自分で登録資料を作成し、申請までできる仕組みを提供していて、いわば商標の世界でのセルフサービス化を実現しています。弁理士などの専門家が担っていた部分を、テクノロジーの力で代替しようとしているのが特徴です。
Q2. 上場を目指したきっかけはどのような背景でしたか?
上場については、明確な目標というよりも、最初からやる前提で考えていました。起業するのと同じ感覚で、「そのうち当然やること」と捉えていました。
もちろん、上場はゴールではなくスタート地点ですから、経営としては一つの通過点。なので、特別な決意表明というよりは、流れの中で自然と取り組むことになっていったという感じですね。
最初から上場を前提に、組織作りや経営の設計をしていたつもりです。
Q3. 上場を目指す中での苦労や大変だったことはどのようなことでしたか?
とにかく大変でした。まず、実績を積み上げていく中で、将来的な見通しと整合性を持たせる必要があって、いわば成長にストレッチをかけるわけです。それでいて、内部体制やガバナンス、法務リスクの管理なども強化しないといけないので、アクセルを踏みつつ同時にブレーキをかけるような状態が続きました。
さらに、上場の可否は事業の実力だけでなく、経営者の属性、株主構成、外部の事情にも大きく左右されます。たとえば、ハラスメントのリークが出ただけでストップになることもある。実際、他社でそういう例を聞いたこともあります。投資家の志向やタイミングも重要で、世の中のムード次第でチャンスが閉ざされることもある。
だからこそ、すべての条件が整うこの瞬間に全力を注ぐしかなく、極めて神経を使うプロセスでした。さらに、準備に時間をかけすぎると、外部環境が変わってしまい、ビジネスそのものが立ち行かなくなる危険もある。上場というのは、自分たちがどれだけやり切ったとしても、経営者の力ではどうにもならない要素も多いです。
Q4. 実際に上場したとき、ご自身の感想や社員の反応はいかがでしたか?
上場自体は、もちろん大きなイベントではあるのですが、うちの中では「当然やることをやっただけ」という感覚が強かったです。社内でも大々的にパーティーを開いたりはせず、むしろ年末年始の区切りと重なったこともあって、すぐに日常に戻りました。
ただ、そのなかでも特に印象に残っているのは、社員や関係者がとても喜んでくれたことです。普段は冷静な大人たちが、本当に嬉しそうな顔をしていて、それを見たときに「ああ、報われたな」と思いました。全国から社員が集まる納会と上場日が偶然重なっていたのもあって、皆でその瞬間を分かち合えたのもよかったです。
SNSなどで多くの方に祝福していただいたのも、想像以上にありがたく感じました。特に、士業業界からの祝福は、公的な意味でも評価されたという実感がありました。法務省管轄の企業での上場は、実はまだ数えるほどしかなく、そういった意味でも周囲の反応は特別だったと思います。
とはいえ、上場後は浮かれ気分になる暇もなく、すぐに通常業務に戻りましたし、ビジネスとしてはここからが本番だという認識です。
Q5. 現在お考えの業界課題、自社の企業課題はどのようなものですか?
今、自分たちが真剣に取り組んでいるのは、生成AIを活用して業界全体を変革していくという挑戦です。これまでもさまざまなSaaSプロダクトを通じて業務の効率化を進めてきましたが、生成AIが持つ可能性は、単なる効率化にとどまらず、業務の在り方そのものを変えるような力を秘めています。とくに法務や登記の領域では、従来の作業フローにAIを組み込むことで、専門知識の壁を大きく低くすることができると考えています。
ただし、その分、リスクも非常に大きい。開発には相当な投資が必要であり、一度方向を間違えると、たった一晩でトレンドが変わり、製品自体が時代遅れになってしまう危険性もあります。例えば、かつて注目されたスライド生成系のAIは、今では市場から姿を消しつつあります。こうしたスピード感に耐えうる開発体制と意思決定の速さが求められていると強く感じています。
もう一つの大きな課題は、「効率化」と「需要の創出」、つまり業務をどれだけ効率化できても、そもそも案件や顧客がいなければ意味がないという現実です。士業やコンサルファームは、結局のところ案件を獲得して実行するという2軸のサイクルで成り立っています。この両輪が揃って初めて、企業としても業界としても自由度が生まれるわけです。テクノロジー企業は、とかく後者の効率化ばかりにフォーカスしがちですが、私たちはその両方を見ていく必要があると強く感じています。
そして、それらを可能にするには、サービスの設計思想そのものを根本から見直す必要があります。単なる便利なツールをつくるのではなく、業界の構造自体を変えていくような視点で事業開発を行わなければなりません。だからこそ、GVAとしてはAI時代に最適化された新しいサービスの形を模索し続けています。業務の自動化、案件獲得、ユーザー体験の再設計という3つの要素を一体で考えながら、真に価値のあるプロダクトを世の中に提供していきたいと思っています。
Q6. 現在の士業・弁護士業界に対してメッセージをお願いします
僕は、生成AIがホワイトカラーの働き方を根本から変える存在になると確信しています。これまでにも数多くのテクノロジーが登場しては消えていきましたが、今回ばかりは明らかに違う。精度、応答性、適応力、どれを取っても本命中の本命と言える技術です。
とはいえ、初めて触れたときに「思ったより使えない」とか「人間の感情は理解できないだろう」といった声が出るのも当然だと思います。でも、AIは日々進化しています。昨日できなかったことが、今日できるようになっていることなんて当たり前の世界です。だからこそ、何度も触って、繰り返し試して、自分なりの使い方を見つけてほしいと思います。
特に若い世代は、AIに対して非常に柔軟です。AIが「わかってくれる」「寄り添ってくれる」と感じる瞬間があります。もはや単なるツールではなく、人に近い存在として受け入れられつつある。それだけの力がAIにはあると思っています。
士業の世界では、「これはAIにはできない」と線引きしがちですが、その線はどんどん曖昧になっていきます。交渉、提案、戦略立案のような領域でも、AIはすでに相当な実力を持っています。だからこそ、最初から無理だと決めつけずに、とにかく触ってみてほしい。そして、業界全体がAIとの共存を前提に、新たな価値の提供を模索する時代に入ったと、私は考えています。
最後にお伝えしたいのは、AIを使いこなす力は、これからの士業にとって必須のスキルになるということです。これはパソコンやインターネットが登場した時と同じで、最初は違和感があるかもしれませんが、やがて当たり前になっていく。だからこそ今のうちに、小さなことからでもAIと向き合い、自分の業務や価値の再定義をしていくことが必要です。士業という職業が、時代の波に乗り遅れないためにも、まずは試してみることが大事です。
弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にスタートアップとグローバル展開を支援するGVA法律事務所を設立、2022年ジュリナビ全国法律事務所ランキングで43位となる。2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。法務管理クラウド「GVA manage」、AI契約書レビュー支援クラウド「GVA assist」やオンライン商業登記支援サービス「GVA 法人登記」等のリーガルテックサービスの提供を通じ「法律とすべての活動の垣根をなくす」という企業理念の実現を目指す。

