区議会議員と行政書士という選択:ひうち優子行政書士事務所 樋内優子氏

区議会議員と行政書士という選択:ひうち優子行政書士事務所 樋内優子氏

事務所名:

ひうち優子行政書士事務所

代表者:

樋内優子(行政書士)

事務所エリア:

東京都世田谷区

開業年:

平成25年

従業員数:

Q.士業の新規開業者や現在経営中の事務所について感じることは?

「今はAIが出てきたことで、士業の仕事自体が無くなるという訳ではないが、減るのではないかと言われています。そこで、本来の申請業務は、全部ソフトにお任せして、コンサルの部分で差別化を図るという士業の先生が増えてきているのを実感しています。外側にいて書類を提出するということではなく、士業も内側で会社の拡大について、一緒に方向性を考えるといったような、社長のニーズに応えて報酬をいただく、というコンサルの部分にシフトしていると感じています。」

Q.現在の議員活動や事務所経営の状況は?

「議員の仕事がメインで7割、行政書士の仕事は3割くらいでしょうか。やはり選挙前は行政書士として仕事をすることは難しいので、時期や使える時間によって受ける業務を調整しています。とはいえ、直近で4月に選挙があったのですが、2月までは法人設立業務にあたっていました。」

Q.なぜ、議員と行政書士事務所の両立を考えたのか?

「そもそも議員は、本来は立法が主な仕事です。国会議員は法律を作る仕事で、区議であれば条例を作ることが仕事ですので、法律を作る仕事に携わる者が、法律を熟知する必要があると思い、資格を取得して、法律の専門家として仕事をしようと考えました。区議として今5期目になるのですが、3期目に入ってすぐに勉強を始めて1年で合格しましたので、大学が法学部で、ベースがあったとはいえ大変でした。在学中に取得しておけば良かったなと思いましたね。議員になってから資格を取得するというパターンは珍しいかもしれません。」

Q.取り組んでいる事務所経営と多様性の可能性について思うことは?

「多様性や可能性ということですと、やはり資格の取得によって、議員としての仕事に、相乗効果が得られたなと思っています。特に行政書士試験で出題される地方自治法については、議員としての仕事を通じて、実態に即した形で仕組みをより深く理解することができました。

具体的には、例えば道路が陥没していてそれに躓いた人から、区が損害賠償請求をされるという案件で報告を受けた時、昔はそういうことがあったんだなで終わっていたのですが、今は国家賠償法2条だなと。普通は議員も含めて一般の法律を知らない人であれば、なんで道路の陥没で賠償請求されるんだろうと思うところ、行政の過失について根拠法令も知っている上で納得できる。要は、根拠法令は何だろうと考えられるようになったというようなことですね。

また、世田谷区は高齢化率が2割を超えているので地元の高齢者とお話をする機会も多く、相続対策について聞かれるのですが、議員をしているだけだとそこまで具体的なアドバイスはできないんですよ。しかし行政書士であれば法律に基づいた適切な説明ができますし、私は相続業務も取り扱っていますので、認知症になってしまうと契約行為自体ができなくなるので、今のうちから公正証書で遺言書を書いておいたほうが良いですよ、など、解決につながる具体的なアドバイスが出来るということも、効果として分かり易い例だと思います。このあたりは議員としての知識だけだと限界がありますよね。

特に高齢者は警戒心が強い人も多いですし、そもそも誰に相談したら良いのかも分からないので、入り口として議員の立場でお話が聞けるというのは、逆に行政書士としてのメリットになっているのかもしれません。我々士業としては当たり前のことでも、他士業の先生とお繋ぎできる、きちんとした対策の説明ができて解決まで導けるということについて、皆さん結構安心してくださいますね。」

Q.これから、事務所経営の多様性はどのようになっていくと考えているか?

「行政書士の世界はどうしても専業が好まれる文化があると思いますが、私は風当たりのようなものを感じたことは全然ないです。それには工夫があって、司法書士の先生と連携することで私が対応できない時でも、業務が滞らない体制を組んでいます。常に相談しながら進めていますので、詳しくない分野もカバーできますし、法律のダブルチェックにもなっています。私が議員の仕事で忙しい時も、レスが遅くなってしまうということもありません。

議員活動をやりながら、どう営業しているのか不思議に思われているようですが、議員の仕事をしていると色々な方と知り合うので、「そういえば行政書士をやっていたよね、お願いできる?」というケースも結構あります。つい先日、議員の集まりに行った時には、挨拶で行政書士もやっていますとお伝えすると、誰に相談したらいいのか分からないので相談したいというお声がけもいただきました。オンライン集客は全くしていませんが、普段お付き合いのある方や仲良くさせていただいている中でという感じです。

しかし、これは特に議員だからという訳ではなく、コミュニティへ継続的に顔を出すという意味では士業の先生方も同じではないでしょうか。例えば色々な方が加入されている法人会に入り、定期的に顔を出して仲良くしていくなどの動きは全て共通することだと思うんですよ。要は士業の取り扱う内容って気軽に仕事が出せるようなものではないので、例えば相続であればお亡くなりになった、後見契約が必要になった、そういう時に会って思い出してもらえれば良い、継続的に人と会うということが大事なんだと思っています。

多様性ということであれば、最近は士業と兼業している地方議員も増えてきていますね。議員が先というケースよりは、士業をしていて議員になる方のほうが多いようです。支部で政治連盟の業務をやっている中で、議員と接するうちに自分もやってみたいと思われるということがあるのかもしれません。ただ、地方議員の仕事はなかなか大変ですので、両立できるとしても今までと同じように行政書士の仕事をすることは難しいと思います。自分が実務をしなくても、経営が成り立つ規模の事務所は別として、行政書士単体としての収入は減少することもあるかもしれませんね。」

Q.今後、士業事務所が生き残るためには何が必要か?

「ベタですが、自分の強みを作っていくことが大事だと思います。例えば入管業務をメインにされている方ならば元々外国人を雇用している会社に勤めていた、風営法であればご自身が夜のお仕事をされていて業界の実情に詳しく人脈も持っているなど、誰にも負けない強みを持つことが1つですよね。他には冒頭でも触れましたがコンサルで差別化していくなど、自分にしかできないものを持つというところでしょうか。

私自身の今後としては、以前から政策の中心に据えている”教育”について、教育現場に社会人経験のある専門人材を入れるキャリア教育をもっと広げていきたいと思っています。先日、地元の金融機関の協力を得て中学校で金融教育を実施しました。今はQRコード決済などでお金の価値が感覚的に掴み辛くなっていると思うので、FPの資格を持っている専門家が、お金の使い方やなぜお金が存在するのか、何時間働いたらどれくらいのお金になるのか、といった授業をしていただいたのです。

それだけではなく、生活のための収益を得るには人が働く以外にも、お金を働かせることができるといったお話までしていただいて、充実した内容になりました。校長先生のご興味によって濃淡はあるのですが、やはり専門分野の人をどんどん学校に入れて、色々な大人を見て育って欲しいなと思っていますので、引き続き取り組んでいきたいですね。

また、私は『自転車都市せたがや』という安全利用に関する取り組みをしているのですが、教育と町づくりを融合させる取り組みにも力を入れていきたいと思っています。自転車に限らずですが、公共交通機関と融合させてスマートシティを作ることを目指しているところです。」

樋内優子 プロフィール

プロフィール
●世田谷育ち
●育成幼稚園 卒園
●筑波大学附属小・中・高等学校 卒業
●東京学芸大学 教育学部 数学選修 卒業
●慶應義塾大学 法学部 卒業
●幼・小・中・高等学校教諭1種免許取得
●平成19年初当選、以来、連続当選

好きな言葉 継続は力なり
趣味:将棋、ジョギング、山登り、自転車、花火鑑賞