- 事務所名:
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株式会社ビジネス交渉戦略研究所
- 代表者:
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代表取締役 生駒 正明
- 事務所エリア:
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東京都
- 開業年:
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2020年11月
- 従業員数:
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目次
Q.本書は、どのような書籍ですか?
「交渉というと苦手意識を持っている方も多いと感じています。交渉とはコミュニケーションであり、交渉力は誰でも向上するものであるということを、できるだけ優しくていねいに伝えたいと思って書いたのが本書です。この本の冒頭は”交渉しなくても交渉ができる、そんなことが実現したらいいですよね“という書き出しで始まっています。つまり交渉するという特別な意識を持たなくても、普通にコミュニケーションしながら交渉を進めることができるということを最初にお伝えしたかったのです。
それではどうするのか、ということですが、まず意識の持ち方を変えることが重要になります。意識の向け方にフォーカスを当てて交渉を捉えることで、皆さんの中に交渉力を上げるための心構えや考え方が浸透し、どんどんうまくなっていくのです。具体的には”交渉上手な人が意識している20項目”を示し、それらのポイントを意識していくとどうなるのか、という形で展開していきます。
例えば、私はボクシングの経験があります。横須賀さんはボルダリングをされます。何も知らない人は、ボクシングは難しいな、怖いな、と思うかもしれません。確かに難しい部分はあるのですが、例えば相手の攻撃が来た時に、頭や額に当たってもそれほど痛くありませんが、顎の先端は危ない、といったようなポイントが幾つかあるのです。そうしたことが分かってくると、自然と適切な行動ができるようになるものなのです。私はボルダリングをやったことがありませんが、おそらく同じだと思います。
要するにコツが分かっていると、それを意識することで力むこともなくなり、無駄なことをやらなくて済む、変なところに気を使う必要がなくなってきます。このポイントを踏まえて実行していけばうまくいくのです。これは交渉でも同じことが言えます。スポーツや音楽と同じように、コツやポイントを掴んで進めていけば怖くないし難しくない、そういうことをお伝えしたいと思って書いた本です。」
Q.本書を執筆したきっかけは?
「前著の『ビジネス交渉力の鍛え方』は、ある意味テキスト的な本で、交渉力をつけるにはこういうことをやりましょう、という構成になっています。今回は交渉をもっと広く皆さんに知ってほしいと考えたので、とっつきやすいように読みやすさを重視しました。また、ここ1~2年で、価格交渉・値上げ交渉のセミナーの依頼が物凄い勢いで増えてきている状況があります。インフレになってコストが上がっているけれども、その分の価格転嫁ができない、値上げ交渉ができないという課題について、講演のニーズが高まっているのです。
そこで、今回、価格交渉のコツや最近注目を集めている心理的安全性を踏まえた社内交渉・社内コミュニケーションについてもお伝えしたいと考えました。前著発行から2年が経っていますので、その間の様々な社会の動きを見ながら最新の交渉力の高め方を皆さんにお届けしたいと思い、価格交渉と社内コミュニケーションを章立てにしました。出版そのもののきっかけについては、知人から出版社が著者を探していると聞き、お会いしてからトントン拍子で話が進んだ感じです。最初の打ち合わせで”いいですね”という感想をいただき、すぐに話が動き出しました。」
Q.本書の特長や、類書と違う点は?
「書店に行って交渉術の本を探すと、例えば『ハーバード流交渉術』のような海外の交渉術を翻訳したものや、弁護士の方が書いている本、あるいは心理学者が書いている本などがあります。私の場合は、ビジネスの第一線で33年、1万件の交渉を重ねてきた経験から、現実のビジネスの世界で培った交渉ノウハウの重要ポイントを凝縮した交渉本というのが特長です。
また、交渉というと戦いをイメージさせる本が多い中で、勝ち負けではなく、お互いの納得感を重視した形で展開しているというのも特長の1つだと思います。かつて私がプロボクサーライセンスを取得した若い頃は、強気の交渉にこだわり過ぎて失敗をするという経験を何度もしました。戦いという発想ではうまくいかず、相手に納得してもらうには信頼関係が必要だとその時気づいたのです。1回きりの交渉ならまだしも、ビジネスで中長期的に付き合うのであれば、なおさら信頼関係が重要なのです。
そこから、相手に寄り添うカウンセリング的な進め方や、一緒にこの課題解決に向かっていきましょうという形のほうが、結果的にうまくいくということを体感しましたので、交渉は戦いではなく合意を目指すコミュニケーションであるということが伝わるようなアプローチをしています。こうした考えをもとにして、社内交渉にも触れているという点も本書の特長と言えます。社外との関係より、人間関係が長く続く社内のほうが、信頼関係を継続することが難しい部分もあります。
1人で仕事を完結することはできません。助けてもらったり助けたりという関係性が重要で、周りに応援してくれる人がいるかどうかで結果は大き変わってきます。社内コミュニケーションは、管理職が若手に対して指導をするということだけではなく、若手が上司へどのように報告して動いてもらうかという点も重要ですから、本当に幅広いものなのです。」
Q.本書はどのような人に向けて書きましたか?
「最初に頭に浮かんだのは若手リーダーで、具体的には新任課長などの役職が付いた方々です。対外的な交渉もありますが、社内で人をまとめることも一つの交渉力ですし、中間管理職となると自分の部署だけでなく他部署とも話をしなければならなくなりますので、それを踏まえた交渉力が必要になってきます。ですから、若手と申し上げましたが年齢というよりは、上司も部下もいて、他部署との連携も始まり、社外との取引もあるという中で、交渉力を必要としているタイミングの人たちには特に効果があると思います。」
Q.士業は交渉をどう考え、実践すれば良い?
「交渉では相手との信頼関係構築を目指すことが重要です。信頼関係ができると、商売が広がる可能性が高まります。士業の方はご自身の専門分野をお持ちだと思いますが、その伝え方には2つあります。1つは縦に深く、その分野の中でも特に自分が強い部分を強調するアプローチです。例えば社労士なら”就業規則が特に強いです”というように、専門分野での強みをアピールします。
もう1つは、就業規則が専門であっても、横の広がりを持たせる方法です。この人に頼むと社労士の分野以外でもいろんなことが分かる、場合によっては他の分野のプロを紹介してくれる、というように、この人と付き合っておくと、専門分野のみならず、ワンストップで色々なことが相談できると思ってもらえるような存在になることです。
やはり何かしらの強みを持つことが重要で、士業であれば”この手続きができます”というだけでなく、それをベースとして、自分の強み、付加価値をどう伝えられるかが大切になってきます。簡単に言うとコンサルティングができるかどうかということになるかもしれません。その中身は、縦に深くするか、横に広くするかという選択もありますし、人間的な信頼関係も大事です。何か困った時に真っ先に相談しようと思ってもらえる人になれるかどうかというところだと思います。」
Q.本書をどのように活用してほしい?
「まずは意識を変えてほしいです、気づきのきっかけにしてほしいのです。一言で言うと、交渉上手な人が何を考えているのか、交渉上手な人の思考法を自分の頭の中にインストールしてほしいということです。そうすることで見え方が違ってきます。相手と話していても、ただ漠然と聞いていたものが、キーポイントをチェックしながら聞こうという姿勢に変わってきます。
本書は各項目の最後にポイントとしてまとめが2、3行書いてありますので、そのポイントだけでも頭に入れておいてもらえると効果的です。そういう考え方の癖をつけておくと交渉で困ることもなくなり、うまく話が進められるようになります。本書に書いてあるポイントを活用して、何かある度に思い出してほしいと思います。」
Q.本書を通じてのメッセージは?
「交渉というとビジネス交渉を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、交渉というのはコミュニケーションであり、日常的に皆さんがプライベートでも行っている行動なのです。交渉力は、一度身につけると減ることはなく、どんどん蓄積されていく能力です。交渉を本格的に、体系的に学んだことがないという方は、この本をきっかけに学んでいたたくことで自力がつき、実生活でも役立つものになると思います。
交渉力がアップすることで、ビジネスも人生も豊かになります。人生を豊かにするために交渉力を身につけましょう、ということを一番お伝えしたいです。」
株式会社ビジネス交渉戦略研究所 代表取締役
ビジネス交渉コンサルタント
慶應義塾大学商学部卒業後、丸紅株式会社に入社。国内外の数多くの交渉に携わる。33年間の商社勤務を経て独立。総合商社の現場で培った交渉力に心理学的アプローチを加えた独自の「交渉準備の7ステップ」を体系化。「交渉でもったいないを無くす」をモットーに、ビジネス交渉の研修やコンサルティング、さらにはトップネゴシエイターの育成に力を注いでいる。弁護士向けに心理交渉術セミナーを実施、さらには、大手自動車メーカーから交渉研修の引き合いを受けるなど、活動の幅を広げている。徹底した交渉準備の強化とロールプレイを重視した実践的な研修が高い評価を得ている。