行政書士 神話崩壊-行政書士開業と経営、実務の新常識-

行政書士 神話崩壊-行政書士開業と経営、実務の新常識-

行政書士 神話崩壊-行政書士開業と経営、実務の新常識-

横須賀 それではまず手短かに、登壇者3名の自己紹介とお互いが知り合ったきっかけからお話しましょうか。私は自己紹介をすると長くなってしまいますし、ご存じなかった方は出版物などが沢山ありますからそちらへ目を通していただきたいと思います。私が石下さんと初めてお会いしたのは開業した頃でしたかね?

石下 そうですね、開業してすぐに横須賀さんの本を読んで、『天才塾』のセミナーに参加したことがきっかけだったと思いますね。2008年あたりだったでしょうか。

横須賀 そうでしたね、最初から業許可専門ではなくて「環境系」という広い枠で考えていらしたのが、凄くセンスがあるなと思ってよく覚えています。そういう概念が分かる人なんだなって。ですから私は多分、ご相談に対して「良いと思います」とお答えしたんじゃないでしょうか。

石下 当時は「産廃」という言葉を知らなかっただけかもしれない(笑)。宮城さんは今回私がご紹介したのですが、多分最初は『行政書士の学校』で開催したセミナーに来てくれたんじゃなかったかな、と思います。その後で横須賀さんと共通の知り合いでもある司法書士さんも交えて食事に行ったりしましたね。

宮城 行きましたね、懐かしいです。

石下 なんというか不思議な会でしたね、4〜5年前くらいだったと思います。

横須賀 今回のお話は私が石下さんに持ちかけたのですが、色々なSNSでこれから開業する、あるいは開業したての方々が、「なんだか思っていたのと違う」という感想を述べていて、確かに過去の開業本を読んでこの世界に入ったとしたら、そのギャップに驚くだろうなと思ったからなんですよね。私と石下さんだけだとベテラン過ぎるのでフレッシュな方いませんかね、ということで宮城さんをご紹介いただきました。

石下 済みません、巻き込んじゃって。

宮城 いやいや恐縮ですよ、びっくりしました。

横須賀 それでは本題に入りましょうか。本日はこの3人でトークセミナーをお届けしていこうと思います。タイトルこそ「行政書士神話崩壊」ですが、最後は皆さんの希望になるような内容を考えていますので安心してくださいね。やはり古い開業本などは基本的に良い所しか書いていませんので、嘘をついてここは良い世界だよ、何でもあるよ、バラ色だよ、と言ってしまうのは不誠実だと思っていて、そういう意味ではきちんとした真実を伝えて、新常識を皆さんに共有できる場になればという風に思っております。

・3年は食えない説は、いまどうなっているのか?

石下 確かに言っていましたよね。ただ、それこそ3年ということですと丁度コロナが3年ほどで、この期間中に給付金や支援金、また再構築などの補助金を含めて考えると、凄く売り上がったという人が多くなったのもこの3年なんだろうと思うんですよね。ただ、皆さんも恐らくいつまでも続くものではないとは思っているでしょうから、そのお金を使って次の手を打っていたり、何よりそのお金を作る過程で各所と提携したりなどお付き合いが広がったと思いますので、そういった方々は意外とそのまま落ちることなく行く人が多いんじゃないかな、とも思っています。それほど頭を使わない支援金や給付金の対応だけですとノウハウが蓄積されていないので少し厳しいとは思いますが、補助金で頭の使い方と言いますか、コンサル的な考え方が身についた方は特に比較的このままで行けると思います。コロナは外的要因が強すぎましたが、こうした良い方向の話もありますのでここ最近は特に3年我慢すれば、ということでもないと言えるのではないでしょうか。

横須賀 宮城さんが開業された頃、この説はありましたか?

宮城 ありましたね。私がまさに「3年食えなかった」ので(笑)。遊んでしまったりですとか、意識が業務へ向かずという感じで、開業して7年くらい経ちますが3年生〜4年生くらいの気持ちでいます、今。

横須賀 私は開業して3年くらいほぼ専業行政書士で、その後で士業向けのコンサルタントを始めたんですが、私なりの3年食えない説の解釈としては「既存客の紹介で成立するようになるまで3年かかる」だと思うんですよね。実際に私も3年目から行政書士業務に関しては営業が必要なかったので。ですから、何もしないで仕事が入ってくるようになるためには既存客が必要で、3年間真っ当に仕事をすればそうなるよ、という実態がこの説になったんじゃないかな、という風に感じます。

Chat Q.行政書士として来年開業する者です。補助金・助成金関係の手続きは行政書士でなくても可能ですが、行政書士がそういった業務を扱う強みはどういうものなのでしょうか。

横須賀 これは間違っていますね、助成金は社労士の独占業務ですよ。石下先生ご解説お願いします。

石下 端的に申し上げますと、助成金という言葉が使われている制度は基本的に厚生労働省の管轄で、社労士さんの独占業務です。返済不要のお金のうち助成金以外の全てを補助金と言ってしまっても概ね良いのではないかと思いますが、一部は創業助成事業など「助成」という単語を使った補助金も存在しますので、名称というよりは厚生労働省系なのかどうかだけ気をつけていただくと良いかもしれません。

Chat.行政書士会の入会者研修の時に講師の先生から3年は我慢して続けなさいと言われました。

横須賀 これはお2人にもお聞きしたいんですけど、何となく新人が食えないほうが会の上層部は楽しい、みたいな空気はありますよね。誰とは言いませんが「お前らを成功させないぞ」というような空気を私は感じていました。あとはやはり行政書士の世界に入ってくる人の中でも、やる気がある人と登録目的で入ってくる人がいますよね。それは凄く大きな差で、だからこそ行政書士を評価する時に平均化してしまうと駄目だと、上手くいっている場合とそうでない場合に分ける必要があるんだ、という風にも言われますが、そのあたりはどう思われますか?

石下 実務面でお話しますと、プロと言われるまでには1万時間は必要です、という説がありますよね。もちろん古物商許可などのそれほどノウハウ的に深みがない業務はあると思いますので、全部が全部該当する訳ではないのですが、やはりその1万時間をどれだけ短期間でやれるのか、というのは専門家までの1つの道としてはあるように思います。ですからちょっと体育会系的にはなりますけど、最初はそれなりに詰め込んだほうが良いと思っていまして、恐らく平均的に、普通にやっていると3年くらいで1万時間になるよ、ということなんじゃないですかね。

Chat Q.今年開業しようとしています。医療系の許認可か相続を考えていますが、どちらかやっておられる方はいらっしゃいますか?

横須賀 お2人とも該当しないので私がお答えしますが、医療系は医療法人設立などの競合がだいぶ強くなってきましたね。15年前くらいまではそれほどでもなかったのですが、色々とライバルが出てきましたので厳しくなってはきました。やれる人が少なかったので、そういう意味でも増えてきたなという感じですね。相続は色々と考えなければ難しいと思います。実は行政書士が関わる部分は中途半端で、相続登記も相続税申告もやりませんから、コーディネート役をやれる人でなければ残っていないという感じです。

・平均年収の謎と努力すれば年収1,000万円の真実

横須賀 これは宮城さんどう思われますか?私や石下さんよりも若い世代の独立だと思いますので、実際どうでしたか?努力は実りましたか?

宮城 先ほど最初は遊んでいたとお話しましたが、やる気を出して送ったFAXDMや葉書DMなどがすぐに案件につながりましたので、タイミングが良かったのかもしれませんが、動けば変わると思います。もし駄目でも違う方向でチャレンジしていくことができれば普通に可能じゃないでしょうか。

横須賀 何が一番大変でしたか?

宮城 先輩行政書士のお客様へDMを送ってしまう可能性がありますので、もやもやしたということはありました。

横須賀 なるほど、田舎だと怒られますね。ただそれは私へ報告していただければ全て記事にしますので仰ってください。石下さんは如何ですか?昔は行政書士の平均収入は300万円以下だ、みたいな話もありましたよね。

石下 「何をしたらいいですか」ということについては、やったほうが良いことは一通り全部やれば結果はついてくると思っています。そういう意味では正しい努力をすれば1千万円はもう全然普通に行くと思いますし、15年前も今もそれほど変わっていないのではないでしょうか。空中線と地上戦、もっと言えばWEBマーケティングに力を入れるのか紹介営業に力を入れるのか、ノウハウが溜まってくればお客様向けのセミナー営業も嵌る業務であれば嵌りますので、まずは自分がやりやすそうな方法や自分の業種に合うものはどれなのか、難しいかもしれませんがよく検討されることだと思います。正しい努力とは言うものの、その正しさを知るためにはちゃんとした知識がないと、変な人にWEBマーケを頼んでしまったり、全く効果のない相手へDMを送ってしまったりということになりかねませんので(笑)。

横須賀 あとはまあ、今日のトピックの一つですので後でお話に出るかもしれませんが、行政書士にはビジネスモデルという発想があまりないように思います。高単価であるとか継続収入が入ってくる、リピートするなどの性質を持っているのが良いビジネスモデルの特徴なんですけれども、例えば内容証明業務は仕事自体に価値がない訳ではありませんが、ビジネスモデル的に破綻しているんですよね。単価が安く時間も掛かる、証拠が残るのでリスクが高く、基本的にリピートしない、という感じですので。こうした性質を知らずに「何の業務を選べば良いですか」ということになると、発想がちょっとおかしくなってしまうんですよね。

石下 貴大 プロフィール

平成26年10月、行政書士法人GOALを設立。
環境系行政書士としての業務に留まらず、会社設立や一般社団設立支援、それに伴うコンサルティングにも定評がある。

行政書士向け実務講習の場である「行政書士の学校」の校長を務めるほか、補助金助成金の検索&マッチングサイト「みんなの助成金」の運営や電子契約書事業に取り組むなど幅広く活動している。

開業以来10年間、1日も欠かさず続けているブログは、アメブロ読者数・士業部門においてNO.1を誇る。
ブログがきっかけで多数の著書を出版し、メディア出演多数。
インターネット・マーケティングにおけるセミナーも人気が高い。

宮城彩奈 プロフィール

高校卒業後、新卒で就職するも挫折。フリーター時代を数年送るが「行政書士」という独立向き国家資格を知り、法律初学者で受験を決意。4度の受験を経て平成27年度行政書士試験に合格。平成28年に横浜市にて即独立開業。

開業以降、建設業・宅建業・酒類販売免許など企業の許認可取得をサポートする業務をメインとした事務所経営を行い、現在は大手企業などを顧客先とした許可取得後の会社運営についてのアドバイスなども担当する。

また、YouTubeチャンネルを開設し、独立開業・事務所経営・取り扱い許認可の解説動画などを投稿。これから開業する予定の資格者や、許認可に関係する企業からの定評がある。

以降の未公開記事は、Kindleですべてお読み頂くことが可能です。Kindleでは下記インタビューをご覧頂けます。なお、本KindleはKindle Unlimitedであれば無料でお読み頂けます。

行政書士 神話崩壊-行政書士開業と経営、実務の新常識-

著者

横須賀輝尚, 石下貴大, 宮城彩奈

650人が視聴した驚異の配信「行政書士 神話崩壊」がKindleになりました。あの熱をもう一度Kindleでも感じることが可能です。