生産性5倍時代到来!税理士の相談調査時間を激減させる「税務相談ロボット」:株式会社ROBON 荻原紀男氏

生産性5倍時代到来!税理士の相談調査時間を激減させる「税務相談ロボット」:株式会社ROBON 荻原紀男氏

事務所名:

株式会社ROBON

代表者:

荒木岳夫(代表取締役)荻原紀男(代表取締役)

事務所エリア:

東京都新宿区

開業年:

2019年4月

従業員数:

約20名

Q.税理士事務所を取り巻くDX、生成AIの状況などについての所感は?

「これからの時代、本当に勝ち組になりたいのであれば、自分が過去にやってきたことを1回否定してみるべきだと思うんですね。蓄積で申し上げますと私は昨年、会計士になって40年、税理士になって30年が経ちましたが、最初に『決算ロボット』の開発に取り組んだのも、こうしたスタンスからです。

今後はいかに自分の時間を作るために省力化していくのか、ということが重要ですし、ましてAIやDXを否定してしまったら、もう税理士事務所として終わってしまうのではないかとさえ思います。つまり、自分の片腕としてAIが働いてくれることで、より多くの会社数を担当できるようになり、そうすることで収益が上がる、自分の給料も上がる、そういう世界を作っていくことができる環境がある一方で、それができない事務所は従前のように高いお金を請求しなければいけなくなり、結果的にどんどんお客様を逃がすことになる、ということでもありますよね。

ですから、これからは”with AI”が1つの発想になるのかなと思っておりまして、考え方を変えましょうと、AIは税理士の敵ではなく、最高の道具として共に働きましょうという、これが私の考え方です。

弊社の『税務相談ロボット』に対しては、やはり税理士の皆様も驚いていらっしゃいましたし、非常に関心が高いと感じています。実のところ『決算ロボット』をリリースした当時はAPIを開放していない会計ソフトも多く、そうしたソフトをご利用されている場合は繋げることができませんので、なかなか世界が広がっていかないということがありました。しかし、『税務相談ロボット』は誰でも使えるものになっています。

これは私の推測ですが、恐らく各会計ソフト会社さんも、APIを開放していかなければ立ち行かなくなっているのではないでしょうか。申告書のソフトを持っていない会社さんは割とありまして、APIを開放している会計ソフトであれば、弊社の『決算ロボット』を介して、こうした会社さんとも繋がることができると思うのですが、他のソフトと繋ぐことができないと、段々と売れなくなり、遅れたソフトになっていきますからね。」

Q.「税務相談ロボット」とはどんなサービスか?

「チャット形式で相談を投げかけていただくことで回答が得られるというサービスでして、法人税、所得税、相続税、消費税、地方税等、税に関するものは殆どカバーできます。因みに、ふわっとした質問よりも、例えば”給与所得は何円で不動産所得は何円で事業所得は何円ですが通算できますか?青色申告控除はできますか?”といった、具体的な質問をしていただくと、非常に良い回答がでてきます

法令、通達、判例、あるいは税務大学校の教科書まで、世の中に出回っている税の法令関係データは全て入っておりますので、必ず答えが出てきますし、質問して回答が得られるまでの時間は僅か10秒なんです。更に、回答の根拠となった通達や判例についても全て明示されますので、元になる情報や正しさがすぐに分かり、税理士さんはもちろん、企業の経理担当者さんがお使いになるのもよろしいかと思います。」

Q.「税務相談ロボット」開発の背景や理由は?

「弊社は”全ての業務にロボットをオン(実装)する”というコンセプトを社名の由来とし、4年前に創業いたしました。クラウド時代になりAPIが開放できるようになったことで、データとデータを結ぶことができる、そうであれば、会計データと税務データをつなぐことで申告書がほぼ完成するようにしたいよね、と考えたのが最初の取り組みで、これが先にお伝えした『決算ロボット』ですね。

ところが、やはり会計データだけでは取り込めない情報も沢山ありますので、当初はあまり高い評価を得られる仕様ではありませんでした。生成系AIは存在しない時代でしたから、近年になって台頭をはじめたのを見て”来たな”と思いましたね。そこで、改めて上手くこの流れに乗せていくためにはどうしたら良いのかと考えまして、最も簡単に手っ取り早く進めることができるのは、税務相談をロボット化することではないかなと思ったんです。

税務相談については、皆さん分からないことがあると国税や税務署へ電話することが多いと思うのですが、まあ繋がりませんよね。結果的に自分たちで本を調べる、判例を調べる等々に凄く時間がかかります。一方で生成系AIの良いところとしては、法令や判例の本当に必要な部分だけを縦覧することができることだと分かりましたので、失敗するかもしれないけれども、とりあえず『税務相談ロボット』を作ってみようではないかとスタートしました。

ここは企業秘密になってしまうので詳しくはお話できませんが、単にChatGPTにデータを読ませればできる、という訳ではないんですね。やはりデータの食べさせ方が非常に大変で、読ませ方にテクニックがありますので、例えば他社さんが真似をしようと思っても、あまり上手くいかないと私は思っています。

また、実は税理士法人も経営しておりますところ、最近一番苦労しているのが採用です。お客様数はどんどん増えるのですが、税理士さんを雇えないんですよ。そうすると、税理士さんの業務時間を極力短くしてあげなければいけない、つまり、1顧客に対する投入時間を短くしなければいけません。そうであれば、お客様から質問がきたら、まずこれを見てくださいと参考になるものを提示して、ご自身で考えて答えを出していただければ、時間を節約できますよね。

また、税務相談において不明な点があるにも関わらず、国税や税務署に電話をかけても繋がらない、回答が返ってこないという、税理士事務所の恒常的な課題がある中で、やはりお若い方、まだ経験の浅い税理士さんを中心に、非常にお困りだというお話を聞いておりました。そうした方々へ、本を買って勉強をする、コンメンタールを読み込むという方法以外に、ピンポイントで答えを出してあげることができれば、時間を削減できるなと考えたんですね。

あるいは、私どもが作っております『決算ロボット』を利用して時間を減らしていただくこともできる、つまり、税理士さん1人あたりの担当会社数を従来の1.5倍から2倍にできないか、その方法を考えてみようというアプローチなんです。このような、税理士さんに寄り添う形でAIを発展させていきたいなと思っています。

中には、それでは勉強にならないという方もいらっしゃいますが、あくまでも自分の余暇でしていただくものであって、会社に来て勉強してもらっては困るというのが本来だと思います。調べものは作業であって自己投資とは異なりますし、非常に手間の掛かることでもありますから、勉強に関しては自分で時間を作っていただいて、実務では『決算ロボット』や『税務相談ロボット』をお使いいただくというのが、一番良いのかなと。もちろん勉強の際にも役立てていただけますし、失敗しても良いからやってみようと思ってはじめたものの、想像以上に良いものができたなと思っております。」

Q.ChatGPT等、ほかの生成AIと何が違う?

「Microsoft社のAzure Open AIを使っておりまして、開発のプロセスで同社のエバンジェリストから様々なサジェスチョンをいただきました。どういうデータの読み込ませ方をすると開発が早く進むのか、あるいは適切な出力ができるのか、そうしたことを全て教わり、技術的なレベルの相当な向上を基に作られたものであることが、大きな違いだと思っております。

恐らく皆さん、じゃあ我々も作ろうと、これを真似してみようと考えますよね。大量のデータをバーンと読み込ませればいいじゃん、という方もいらっしゃるかもしれませんが、それではなかなか、上手く良い回答を引き出せないと思います。もちろん他にもあるのですが、これ以上は企業秘密です(笑)。

また、ChatGPTで作成された相談ツールでは、お客様の質問した情報がAIの学習モデルとしてトレーニングに使用されてしまい、それこそ企業秘密にあたる内容を質問したところ、情報が流出してしまったという事例が起こっています。しかしAzure Open AIですと、そうした情報は一切モデルトレーニングに使用しないという規定がありますから、セキュリティ面で非常に安心安全であるということがありますね。Microsoft社では90種類以上のコンプライアンス認証を保有しています。

データを読み込ませる作業はかなり大変で、テスト期間を入れて半年ほど要しましたが、その甲斐もあり、かなり専門性の高い質問に対してもきちんと回答できる仕上がりになりました。また、一般論を返した上で詳細は専門家に、という形になることが多いChatGPTは、ある意味で逃げ場を作っていたと言えるようにも思います。一方、我々は公になっているデータからヒットするものを選んでいますので、要するに税務相談をしている訳ではなく、質問に沿った回答がここにありますよということを教えているという点が異なっておりますし、税理士法には違反しないという見解をいただいているものでもあります。」

Q.「税務相談ロボット」は税務・会計シーンにどんな影響を与える?

「インターネットが普及する前後とほぼ一緒ではないでしょうか。かつては本を調べて勉強して、時間をかけてやっていたものが、一瞬にしてネットで調べられるようになりました。更に現在では、法令は法令、判例は判例という形で、横から縦に情報を見なければいけなかったところが、横を見なくても良い、縦だけを見ることができるようになったということで、やはり相当な時間の削減になると思います。

特に、調べものや勉強に充てる時間の削減幅は、相当大きいですよね。税理士や会計士にとっては、お客様に対して早く回答を出せるというメリットがあるでしょう。要は、調べて折り返しますとなると、相手の仕事はそこで止まってしまっている訳ですが、一瞬にして答えてあげることができれば、日を跨がなくても納得を提供できるということです。そういう意味では、自分たち士業がどうこうというよりも、『税務相談ロボット』を活用することでお客様からの信頼感が相当高まるのではないかと思います。

これは今後の話にもつながるものですが、やはり士業は本来、中小企業の伴走者でなければならないと思っているんですよ。ところが、税理士であれば申告書を作ってあげることが最終目標になってしまっていて、それがサービスなんだと言わんばかりですが、それは違うでしょうと。国内企業の97%を占める中小企業が大きくなっていけばGDPも上がる訳ですから、そのサポートを担っていかなければいけない税理士が、申告書を作れるということで先生先生と言われて状況に甘んじているのは、絶対におかしいですよ。

ですから、私はむしろ申告書を作る作業や税務相談が省力化されることで、中小企業のお客様に対してコンサルなどのもっと違うサービスができるのではないか、あるいはDX化の支援ができるのではないか、そういう風に考えているんです。そうすると税理士の仕事はもっともっと増えるはずなので、そちらへ時間を充てませんか、というのが、私の投げかけでもあります。税理士は事例を持っている訳ですから、作業者ではなくコンサルタントになっていくのが良いと思いますよ。」

Q.今後、生き残っていける税理士・士業に求められるものとは?

「中小企業に貢献できるようになるためには、やはり会社の中をよく理解することだと思います。具体的には、内部統制やシステムを把握して、事故が起こらないようにするためにどうすれば良いのか、どれだけ自動化できるのか、といったことですよね。

特に自動化については、これまでは一人が辞めてもすぐに代わりの人が来てくれたところ、もう来ないという時代なのですから、基本的には自動化していくしかない訳です。ですから、突然辞められても大丈夫なくらいの体制を整えておく、これが少子化における中小企業経営のポイントになると思います。

実は私自身、お客様から”先生はいいですよね、上から目線で言っていればいいんですから”と言われたことにブチ切れて、2000年にIT企業を立ち上げたんです(笑)。2004年にはグロース市場で上場させ、2013年には東証一部まで持っていくということをしたのですが、これは税理士だって中小企業を成長させて上場まで持っていけるんだということを証明したくてやりました。やってやれないことはないんだと、お伝えしたいですね。

また、今後求められるスキルや知識として、プログラミングはできなくても良いと思っています。それよりも、やはりシステム周辺の知識やネットワークの知識などを最低限は身につけていただいて、お客様の相談に乗れる形を作るべきだなと思いますね。お客様の抱える問題は、大したことではないケースも多いので、それを修正してあげることができれば更に信頼が深まりますし、お客様を成長させることもできると思うんです。

『決算ロボット』をお使いいただくことで、先生方は工数をかけずに簡単にできちゃいました、お客様の数も増えて利益も上がるしウハウハです、という風になるはずですから、私どもとしては、そのサポートをしていきたいなと思っています。”なかなか変われない”という方もいらっしゃるようですが、本当に変われないというよりは意識の問題であって、そこに目を向けるか向けないかということだと思うんですよね。」

荻原紀男 プロフィール

公認会計士・税理士
株式会社豆蔵K2TOPホールディングス創立者であり、税理士法人プログレスの創業者。 DX革新期の中心的牽引者として、税務、人材育成、IoT分野で活躍。
2019年に株式会社ROBONを設立。一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)の会長を長年務め、2022年に名誉会長に就任。
情報サービスと産業機械事業を含む連結子会社9社で構成される企業グループを率いる。
ROBONは全業務にロボットを実装し、「IT技術で全てのお客様の生産性を飛躍的に向上させる」ことを推進している。