士業の老後資産2000万円問題を考える:株式会社マネミル 亀山 陽平氏

士業の老後資産2000万円問題を考える:株式会社マネミル 亀山 陽平氏

事務所名:

株式会社マネミル

代表者:

亀山 陽平(総合資産戦略パートナー)

事務所エリア:

東京都渋谷区

開業年:

2021年5月

従業員数:

1名

Q.士業のお金のリテラシーについて、現状をどう認識しているか?

「これは士業の方に限らずなんですけれども、格差はかなり大きいな、と思いますね。知っている人と知らない人、また知っている人の中でも実践している人と実践していない人という意味での格差は、士業に関わらずかなり広がってきていると感じています。リテラシーが高いな、と思う人の割合は1〜2割ほどでしょうか。

また、士業については単純に情報を”知らない”という方が一般の方よりも多いような気がしますね。まだ投資について怪しまれている風なのですが、対照的に一部は非常に勉強されていて、平均的なFPよりも詳しい士業の方もいらっしゃいます。」

Q.お金のリテラシーを高めないと起こる悲劇とは?

「今はもう皆さんご承知の通り物価高騰という背景がありますし、それによって資産運用を考えなければ、という人がようやく増えてきているという印象です。先ほど、まだリテラシーの高い方はそこまで多くないというお話をしましたが、士業の方からもどういう風な資産運用が良いのかというご相談が増えていますね。

横須賀さんにお招きいただいた先日のセミナーでもお話した通り、お金のリテラシーを高めなければならないというのは、かなり資産格差が広がっている状況にあるということですよね。いわゆる純金融資産、資産から負債を引いて更に不動産も引いたものですが、これが1億円以上であれば富裕層、5億円以上は超富裕層であると野村総研は定義付けしているところ、同社のデータによればコロナ前後でこれらの層が増えているんですよね。逆に言うと貧しくなっている人も増えている

いわゆる士業の方で言うと、もちろん組織で運営されている方もいらっしゃると思いますが、労働集約型の収入のほうが多いでしょうから、仕組みをしっかり作っておく必要があるのではないでしょうか。ご自身が動かなければ収入が入らないという形がベースになっているのであれば、労働集約以外の収入の柱というものを元気なうちから早めに作っておくということが非常に重要になってくるかなと思います。

また、健康という視点からも同様ですね。士業の方や経営者とお話をしていて、やはり50歳近くになってくると今までと同じようには働けないよね、という方が多くて、それまでは本当に元気でバリバリ働けるからご自身が働いて、労働収入で稼ぐというモデルでも良いと思うんですけれども、50歳以降を見据えて早い段階から収入の柱をいくつか持っておくことは、リスクマネジメント的な観点からも必要かなと思います。

先日のセミナーで横須賀さんも仰っていたように、生涯現役というのもご自身で能動的に選んだ現役なのか、それとも資金の不足により働かざるを得ない奴隷的な現役なのかでは、意味合いが全く変わってきますので。」

Q.士業が悲惨な老後を迎える前に、いまからできることは?

「まさしくそれが先日のセミナーでお話した”お金のリテラシーを高める”ということなのですが、そのために何が必要かということですと、世の中的には今YouTubeなどでも”投資をしていきましょう”というメッセージが発信されていますが、その前にやることがあると思っています。それがまず、現状のご自身の資産診断なんですよね。身体であれば、まずは健康診断をするじゃないですか。それと同様に、お金の健康診断も大切ですよと。

セミナーでも個人のBSとPLを作っている方はいらっしゃいますか?とお尋ねしましたが、まだまだ少なかったですよね、全体の1割ほどでしょうか。ですからまずは個人のBSを作って、ご自身の資産と負債がどういう状態になっているのか、そしてPLを作って収入の流れと支出の流れがどうなっているのかをしっかり把握する、ということが第一歩かなと思います。いきなり投資や資産運用に着手しても、上手くいかない可能性が高い。

事業を始めると複数の口座を開設することになると思うのですが、意外と合算してみると残高が少なかった、という話はよくお聞きします。もっとあると思っていたのに、そうでもなかったと。貯蓄型保険についても実は全然貯まっていなかったりしますので、ご自身の今の資産の状況を把握すること、現状を直視することがまずは第一歩ですね。」

Q.お金のリテラシーを高めるためには、何が必要か?

「大きく資産の種類を分けた時に、いわゆる金融資産と実物資産とがあると思っていまして、金融資産は株や債券や投資信託、実物資産は代表的なものとして不動産、金やダイヤモンドなどもこれにあたります。どちらへ投資するのが良いのかとよく聞かれますが、私自身はどちらもやっていますね。

これは本当に人によって様々で、それこそ私はBS・PLをお作りした後にその方のライフプランというものを作成しておりまして、どういう人生を生きたいのか、そのためにいくらお金が必要なのか、あるいはどれくらいリスクを取れるのか、といった状況などを聞かせていただくんです。好みや、どの程度のリスクが許容できるのかといった、その答えによっても最適な解は違ってくるかなと。

例えば不動産の場合はどうしても借り入れが必要になってくることが多いので、メリットもデメリットもありますよね。ですから明確な正解はないんですけれども、あらゆる選択肢の中からチョイスする、ということが重要かなと思います。そのためには、まずは広く浅く勉強してみて、そこからご自身に合うものをチョイスしていくのが良いでしょうね。やはり最初から絞ると、それしか見えなくなってしまいますので。

ご参考までに、超がつく初心者が最初に勉強するのであれば、やはり投資信託の長期分散積み立て投資からスタートするのが良いと考えます。何故かと申しますと、やはり資産運用や投資は実際に自分のお金を出して、身銭を切らないと本当の意味で身につかないということがあり、そして失敗しながら学んでいくという側面があるんですよね。ただ、投資でもビジネスでも重要なのはリカバリーできない失敗をしないことで、そう考えた時に不動産は金額が大きいですから、試しにやってみて失敗してしまうとリカバリーできなくなってしまう可能性があります。

ですから、投資に慣れるという意味で申し上げますと、一括投資ではなく分散、尚且つやはり投資信託はファンドマネージャーと言われるプロがチョイスしているので、そういった意味では超初心者でも始めやすいかなと。」

Q.これから資産形成はどのようなっていくのか?

「制度的には2024年から新NISA制度拡充などが始まって、国としてはどちらかというと後押しですよね。この、国からの私が考える裏のメッセージとしてはですね、要は自分のお金は自分で面倒を見ろというものです(笑)。そんなことは間違っても言わないでしょうけど、やはりそういう裏のメッセージを掴みつつ自分の資産を自分で築いていかないといけない。以前から言われていたことではありますが、もう国や社会は守ってくれないということが、益々これから顕在化してくると思うんです。

ただそうなった時に、じゃあ新NISAが始まる前からNISAっていう制度がありましたと。確かにNISAが始まって口座開設数は増えたんですけれども、先日お話した証券会社の方によれば、実際に投資をする人はそこまで増えていないと仰るんですよ。ずっと貯金をしてきた訳ですよね、日本人は。やはりそこのマインドが変わるというのは結構難しいのかなということがあって、制度を整えたところで投資が浸透していくかというと、それほど単純ではないと考えてはいます。」

Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?

「私は士業の方とはサラリーマン時代から13年くらい一緒にお仕事をしておりまして、何と申しますか本当に素晴らしい志というのか、お客さん思いで真面目な方が多いと感じています。だからこそ、これは横須賀さんの専門分野だと思いますが、ご自身の職業を再定義されると良いかなと思っていて。私は税理士さんとお仕事をさせていただくことが多いのですが、税理士だから税務申告だけしかやらない、ということではなく、もう少し上位概念でご自身の仕事を定義していただくと、強みになると思うんですよ。

これは中小企業庁のデータなのですが、社長が誰に経営相談をするのかという時に、68%の人が税理士さんと答えたそうです。やはり税務会計だけではなくて、社長の関心事である売上げを伸ばしたいですとか、お金を残したい・増やしたいといったニーズは誰もがお持ちなので、最近は税理士さんにも資産形成のアドバイスを求めることが増えてるんですよね。

というのも、やはり銀行が今では金利収益で経営が成り立たないので金融商品をめちゃくちゃ勧めていますと、具体的にこういう金融商品を勧められたんだけど、先生どう思います?というご相談があった際に、やはりご自身がしっかりと実践されていると、その経験で得たことを伝えられるじゃないですか。それは1つの強みになるかなと思っていて。

いわゆるクライアントさんの心臓部を掴むというか肝っ玉を掴むという意味で、これから生き残っていけるということで申しますと、ご自身の仕事を再定義して本当にクライアントのために何が価値になるのかということを考えられる方かな、というところですね。また、士業自身のお金のリテラシーが高まれば事務所の安定につながりますし、余裕を持った経営ができれば更なるレベルアップにも繋がるのではないでしょうか。」

亀山 陽平 プロフィール

株式会社マネミル 代表取締役 総合資産戦略パートナー

青山学院大学経済学部卒業。大学卒業後、入社した一部上場保険会社にて法人・経営者対象のライフプランニング事業に9年間従事。
2015年度に新契約高で全国No.1の実績を挙げる。

法人と社長個人にお金を残す資産戦略構築の専門家。これまでに1,200名以上の社長の資産戦略をサポート。製造業、建設業、小売業、飲食業、美容業、IT業、不動産業などクライアントの業界は多岐に渡る。
クライアントの資産規模は、個人事業主の資産形成層から資産10億円の富裕層まで幅広い。

保険会社の資産運用部門において、国内・海外の株・債券・プライベート・エクイティの投資にも従事。年間100名以上のファンドマネージャーとの面談経験により、豊富な選択肢から、お客様のニーズに最も合致した商品提案を得意とする。

税理士事務所、不動産会社、歯科医院などで資産形成・運用などの講演、セミナー、研修を実施。

【資格】
・国家資格FP
・TOEIC 915点

【出版・メディア掲載】
・書籍:『金持ち社長 貧乏社長』/セルバ出版
・電子書籍:『うまくいく税理士 アウトな税理士 生き残るのはアクティブ税理士だけ!』
・書籍:『「伝えたつもり」をなくす本』/中山マコト著
・書籍:月刊プロパートナー2021年10月号
・対談記事:マイナビニュース「資産運用のプロが解く“ゴールベースアプローチ”の重要性」
・記事:ZUU online