- 事務所名:
-
有限会社小堺コンサルティング事務所
- 代表者:
-
小堺桂悦郎(資金調達コンサルタント)
- 事務所エリア:
-
–
- 開業年:
-
–
- 従業員数:
-
–
目次
Q.2023年の金融情勢を振り返って思うことは?
「終わらないんじゃないか、とすら思った2020年からのコロナ禍も終わったと言って良い状況だと思いますが、3年半は長かったですね。そのコロナ不況対策のコロナ融資は元々借換えなしという前提でしたから、出しっぱなしで返済がどうなることかと思いましたが、2023年にはなんとなくコロナ融資借換えができるようになりました。
コロナ融資が終了した時は、まだコロナの感染自体が劇的には終息していないタイミングでした。そのコロナ融資の返済据置も1年のケースがあれば3年のケースもあるといった状況でしたから、これは返済が続かなくなってヤバいぞと思ったのを覚えています。金融情勢的にも政府の舵取りが難しいだろうなと思っていましたが、なんとかコロナ融資借換えが始まって、しかし大々的に始まっている訳ではないという中、着実に対応できたという会社さん、なんだかよくわからないけれども乗り切ったという会社さん、ずるずると何もしていない会社さんの三つに分かれたという感じですね。」
Q.2023年に起きた金融情勢の傾向と特徴は?
「金融機関としては、コロナ融資の借り換えにどう対応したら良いのか?という、ぬるっとした姿勢にならざるを得なかったとは思います。この融資先はちゃんと返済できるのかな?と思ったとしても、”大変でしょう?おたくの会社はコロナ融資の借換えをしたほうが良いんじゃないですか?”などと言う訳にもいきませんから。とはいえ銀行は貸すのが仕事なので、その対応は難しいところだったでしょうね。業績の良い企業は借りに来ませんし、コロナで業績悪化してて融資を欲しがっている企業にはこれ以上は貸せない。
某経済新聞なんかはコロナ融資の返済が本格化して倒産が増えると煽っていましたよね、政府や金融機関は何をやっているのか、中小企業に冷ややかだという論調でした。しかしコロナ融資の借換えの話には全く言及しない、新聞記事って本当にそういうところがあるんだよな、と言いたいですが、とにかく金融機関としては、積極的にどういう対応をしていけば良いのか、悩ましいところではあったと思います。
来年以降につながる傾向としては、前提として先程お話したように、きちんと対応した会社さん、状況を把握した上で返済余力があるからコロナ融資の借換えはしないと決めた会社さん、今まで通りの感覚で有事には何か手立てがあるだろうと何もしない会社さんに分かれました。この判断の違いにより、来年以降は淘汰されていく会社が出てくるでしょうね。
自然淘汰という言い方には良し悪しがあるのかもしれませんが、これまでは金融機関としても、やはり倒産されると不良債権になってしまいますから、困っていた訳です。しかし、あくまでも倒産はアクシデント的だったものが、コロナ不況が長引いたお陰で受け皿になる制度が増えました。コロナ融資やその借換え、中小企業活性化協議会というリスケ計画を支援する制度まであります。しかもこれらの制度に必要な準備は、Excelを使える人にとってはそれほど難易度が高い訳ではありません。
こうした環境で20世紀の感覚のまま、金融機関を相手に計画だの何だのは面倒だという経営者は、もう事業を続けることが難しくなるように思います。そう言われても、金融機関としては制度があるからにはどうしようもないのですが、多くの人は見たい情報しか見ませんし、未だにYouTubeで財務系の専門家が、会社に利益を残さないほうが良い、役員報酬を取れるだけ取ったほうが良い、こうした会社でも銀行の評価は高い、といった内容で配信をしているんですよ。
役員報酬が600万円の社長と2,000万円の社長では後者のほうが評価が高い、純利益が100万円でも銀行は経営者と会社を一体として見るので役員報酬は2,000万円でも3,000万円でも良いんだと、20世紀の融資審査の話を声高らかにしているのを見かけます。だからYouTuber税理士やYouTuberコンサルタントの情報でしかないものが多く出回っているということで、これはヤバいんですよ。
でも都合の良い情報のほうが飛びつきやすいですから、みんなそうだそうだと、役員報酬を取って良いんだと。それを信じて困ったとしても、配信しているYouTuberとしては”銀行融資に躓いたらご相談ください”という話ですから、こういうのをマッチポンプと言うんですよね、自分で火をつけて自分で消す……。
私は最近、10分くらいの短い動画を毎朝配信するという挑戦をしているのですが、残念なことに先のような発信者のほうが支持者(視聴者)は多いですから、多数決で言えば私は負けなんです。横須賀さんも同じでしょう、本質的なことばかり発信していますので。
こうして話をしていて気がつきましたが、20年前には借金バンザイだ、粉飾バンザイだと波紋を呼ぶセンセーショナルなことを言っていましたが、私は今まともなことを言っているんですよ(笑)。まあ最初は目を引く必要がありますし、神田昌典さんが注目された『あなたの会社が90日で儲かる!』だって、”5年で儲かる”だと微妙でしょう(笑)。
話を戻すと、コロナで暇な時間が多くてYouTubeを観るようになった人も、見たい情報だけを見て自分に都合よく解釈しちゃうから、21世紀に入って23年も経つのに20世紀の考え方で会社経営していくのかよと言いたくなる情報が出てきている、これが2023年から2024年にかけての傾向だと思いますね。」
Q.どのような企業が資金繰りに成功した?
「なんとなくコロナ融資借換えが出来るようになった曖昧な環境ですから、やはり色々な情報に触れていた層、特に私のYouTubeやKindle本に目を通してくださって、きちんと対応しよう、準備しようと動いた方々は良い結果が出ていますよ。具体的には、そうした融資には当然ですが先ず該当要件がある訳です。簡単なものではありますが計画書などを提出しなければいけない。これをいざという時にすぐ出せるように準備していた会社さんは危なげがなかったでしょう。
そうした書類の準備に加え、複数の金融機関と取引があれば、それを順番にやっていく必要があります。一斉にという訳にはいきませんし、そもそも全ての銀行にアプローチするのか、という判断も必要です。対応する金融機関としても経験のないことですし、国が積極的に求めているという程でもありませんでしたから、いわばぬるっと始まったということも大きいでしょう。もっと言えばコロナ融資そのものが当初ぬるっとしていたものが、急に政府が”それ出せやれ出せ”という空気を出してきましたから、当然その借換えに関しても金融機関も保証協会も経験がない訳です。
こう申し上げてはなんですが、日本は天災が多く災害対応なら前例があるものの、感染症については100年前のスペイン風邪にまで遡らなければ前例らしい前例がありませんでした。ですから、支援制度が始まり周知もされているはずなのに、銀行からコロナ融資の借り換えは出来ないと言われたと私に相談が来たりもしましたからね。こうした状況でしたので余計に、銀行側もコロナ融資の借り換えにはどう対応したらいいのか分からないだろうと予見して対応したクライアントさんはバッチリ成果が出たということでもあります。
中にはコロナ融資の借り換えに半年を要した会社もあったのですが、これは複雑なケースです。元々リスケをしていて借入は厳しい感じでしたが、リスケから復活してきた頃にコロナ禍が来てしまった、つまり保証協会付きの融資に加えプロパー融資もあるところへコロナ融資を受けたという状況だったんですね。先にプロパー融資を借換えてからコロナを借換えましょうという風になりましたが、これは結果的にコロナ融資によってプロパー融資を減らす形になってしまう訳です。
プロパー融資は従来どおり、そのまま着々と返済していくのですが、コロナ融資が据置で出たお陰でプロパー融資の肩代わりをしたことになってしまう、これは大げさに言えば資金使途相違になりかねませんから、本来まずいんです。ですからプロパー融資を先に借換えてリセットしましょう、それからコロナ融資も借換えましょうということで、元に戻すまで半年くらいの時間がかかりました。
このように、初めて尽くしな上に状況によってはかなり面倒な訳ですから、そこを辛抱強く準備したり交渉したりといった対応ができた会社さんはちゃんと結果を出した一方で、そうではなく行き当たりばったり、なんだか分からないけれども借換えしてくださいといった感じですと、やはりそれなりの結果に終わっていましたね。」
Q.2024年の金融情勢はどうなる?
「次の決め手がないんですよ、この2024年は。コロナ感染はほぼ終わりましたし、不動産融資は相変わらず好調ながら定期的に崩壊があり上下動も激しいので、これだというものがない状況です。」
Q.これから求められる金融情勢に関わる士業の役割や必要なこととは?
「これから必要な情報としては、”いまさら知っておきたい”経営承継円滑化法ですかね。成立自体は平成20年の5月なのですが、なぜ今なのかを一言で表現するならば経営者の高齢化という現実があるからです。
予測できる未来として、経営者層がどんどん高齢化をしていく訳ですよ。ボリュームゾーンは経営者においても団塊世代でしたから、政府もそこに照準を合わせて10年以上前からこの法律を整備していました。なぜ”いまさら”なのかと言いますと、私としては75歳以上のクライアントがいなかったので、本気で検討することを保留にしていたんですね。士業の皆さんも同様に、どういう年齢層をクライアントにしているかによって、これからやるべきことや、クライアントの悩みが変わってくる、それに合わせてやっていく必要がありますよね。
経営者にとっては自分に万が一のことがあったらどうするのかという話で、なかには生命保険で全て片付くようにしているから大丈夫だよと強がっている社長もいますが、果たしてそれはきちんと相続や会計を理解して計算した上で対応できているのか、ということもある訳です。もちろん会社が儲かっていなければ大変ですが、儲かっていても後に残していくのが大変で、こうしたことがリアルになってきたと。ご存知の方も多いと思いますが、同法には4つの支援措置があり、1つ目は税制支援で、簡単に言えば三代に亘り相続税が納税猶予・納税免除できるというものです。
実は、このうち完全免除がラストスパートという局面にあります。令和6年度の税制改正大綱で提出期限が2026年の3月末まで延長される見込みですが、何もしていない場合はそれほど余裕のある準備期間という訳でもないでしょう。全部子どもに譲ります、あるいは後継者に株を全て譲りますといったことを決めて計画などを提出するのですが、いわば現代の家督相続ですね。まだ若い、60歳前後のこれから事業承継を考えるという人に向けた8割免除の制度もあります。
2つ目の措置は遺留分に関する民法の特例で、通常は自社株を全て後継者1人に譲るとなると遺留分が侵害される訳ですが、これを特例で回避しようというものです。3つ目は所在不明株主に関する会社法の特例で、かつては株式会社の設立時に最低7名の株主が必要でしたから、主に20世紀からの会社で名義株があるケースに対応した措置になります。何十年も前の話だと連絡が取れないということがある訳ですね。会社の設立は色々な条件の変遷があり大きく変わってきたのですが、若い方はあまりご存知ないかもしれません。
整備が一番遅れていたのが4つ目の金融支援で、なぜかというと株を買い取る資金の必要が出てくるからです。株を買い取るには資金を用意しなければいけませんので、株価が高ければ数千万円、下手をすれば億単位の銀行融資を受けることになりますが、中小企業の株を買い取る資金を経営者または後継者個人に貸すとなると、やはり民間の金融機関としては二の足を踏んでいたんですよね。そこで政府が後押しをして、融資をしなさいと、保証協会も保証しなさいということになり動きはじめました。とはいえ、儲かっている会社であっても会社で株主から買い取ると自己株式になるという別の問題が出てきますけれどもね。
以上、色々と制限はあるものの、勉強してみるとこれがなかなか良い支援制度でして、普通に会社をやっていて、自分の代でも2代目3代目までも、きちんと事業を繋いでいくよという場合であれば、大体は取り消しにならないんですよ。それにも関わらず、なぜこれがあまり知れ渡っていないのかというと、専門家のビジネスにならないんですね。この納税猶予制度を使うと、特に節税コンサルタントの出る幕がなくなるんです。
例えば税理士事務所がこれらの手続をすれば幾許かの報酬が入りますが、その後定期的に届出をする必要があって、それも10年20年とスパンが長い上に、提出を忘れてしまうと一発取り消しになってしまうため非常にリスクが高い訳ですね。これは二の足を踏むでしょうから、サポートする士業は少ないんだろうなと。保険会社もしかりです。
しかし、こうした措置の対面に、融資のあり方では社長の連帯保証を外そうという水面下の動きが始まっているということでもありますから、各分野における関連法や税制などの全てが、中高年の経営者がどのように次へ繋いでいくのかという方向へ向かっているんですね。そうすると、ソフトランディングできないケースも含めて、税制に関しては税理士の出番になるでしょうが、民法や会社法が関連するサポートについては必ずしも弁護士さんでなくても良い。自分のクライアントさんの予測できる未来に関わっていくということですから、ご自身でアドバイスできる人はもちろん、例えば私と提携しても良いと思いますので、この4つはそれぞれの士業が果たす重要な役割として活用していただきたいですね。
少子化が叫ばれて久しく、2025年をピークにした大幅な人口減少はもう目に見えている、この状況下でいかに対応していくのかという政府の答えの1つが、経営者保証ナシの本格化であったりする訳ですね。私のクライアント守備範囲は大体48歳から72歳までという年齢層ですが、もちろん例外的に若い方もいて、その方々に何を言っているのかというと、気力体力があるのは48歳くらいまでだよと(笑)。もちろんまだまだその先も可能性はあるけれども、48歳を過ぎるとやはり衰えを感じる訳です。
まだはっきりとは決めていませんが、私のKindleに『今55歳の経営者のための相続とM&A対策入門: 経営者保証ナシ融資時代の到来!』という全然売れていない本がありまして(笑)、この続編を出そうかなと。
純資産20億円社長のための自社株対策Kindleも執筆しましたが、純資産20億だと私の読者層ではないでしょうから、5億円くらいに合わせていこうかなと思っています。情報を見ない人はどうしようもありませんが、色々な情報を見ている人に対しては、例えば経営者保証ガイドラインも変わってきていますよ等、”こういうのもありますよ”という感じで教えてあげていただきたいですよね。
最後に、先程お話したコロナ融資の借換えにしても面倒だなというタイプで、かつ業績が良くない会社さんについては、これから悪い誘惑に引っかかる可能性があるかなと思っています。と言ってもそれほど大袈裟なものではありませんが、例に出した役員報酬の話のような、自分に都合の良い情報しか耳に入れなくなると、悪意あるコンサルタントの囁きに、足元を掬われてしまうこともあるかもしれません。特に会社が2つある場合は注意が必要で、迂回融資や一方に損失を出して粉飾するといったことを勧めている人もいますので、気をつけていただきたいですね。」
企業に“借りる技術・返す技術”を指南する資金繰りコンサルタントとしてのキャリアは20年以上。相談に応じた企業数は2100社を超し、銀行から引っ張った融資総額は100億円以上。
概ね債務超過の、資金繰りに悩む企業をクライアントに持っているにもかかわらず、これまで倒産した企業はわずかに1社のみ。
バブル景気といわれた1980年代を通して金融機関の融資係を務め、1989年、日経平均株価が史上最高値をつけた日を最後に税理士事務所に転職。
税理士事務所では、バブル崩壊後となる1990年代の大半を資金繰りコンサルティング業務に専任。
特に銀行対策を得意とし、年商1000万円から40億円までの幅広い企業のコンサルティングをはじめ、M&Aなども担当。
2001年末にコンサルタントとして独立。‘借りる技術・返す技術’指南の専門家として、主に中小企業経営者の立場に立った実践的なコンサルティングが好評。
2002年12月『借りる技術・返す技術』(フォレスト出版)で著作活動を開始。
2006年発売の『なぜ社長のベンツは4ドアなのか?』はシリ-ズ70万部を突破する大ベストセラーに。
「お金」の専門家として、まるでドキュメンタリーのような実例をもとにした生々しく親しみやすい内容と文体には、税理士や銀行員といったお金のプロから、経営者、経理担当者、一般のビジネスマンから主婦まで、幅広い読者をもつ。