- 事務所名:
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株式会社Beso
- 代表者:
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白木淳郎
- 事務所エリア:
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大阪市
- 開業年:
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2019年9月
- 従業員数:
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10名(役員除く)
目次
Q.士業の業界のDX化についてどう感じているか?
「非常に二極化しているな、という印象ではあります。特に税理士のお話になりますが、大手・中堅の中には進んでいる事務所があるものの、完全に1人や数人で経営している事務所は進んでいないというところで、それぞれの色が強いなと感じていますね。全体のDX化としては、9割9分くらい進んでいないのではないでしょうか。
もともとITリテラシーが決して高いとは言えない世界ですし、平均年齢が高いということもあって皆さんなかなか大変ですよね。ただ、中小企業も同様ですが採用が進まない中で賃金は上がっていっているという状況をどう補っていくかというと、もう効率化という選択肢しかないと思っていて。ですからDXは必然じゃないのかな、と私はやはり感じています。
RPAについては悪くはないのかな、と思うものの、自身がそれほど使っている訳ではないですし、目覚ましく効率化できるのかといえば、どうなんだろうと。少なくとも小規模の事務所が単体で導入するのはあまりお勧めしないなと思っています。結局はメンテナンス等で属人化しますし、人を配置しなければならない、非常に時間が取られる、ということになると、効率化されているのかされてないのかよくわからない状態になってしまいますよね。」
Q.「ZoooU」とは何か?
「簡単にご説明しますと、誰でも迷わずに業務が最短ルートで期日内に完了できるというプロダクトです。決算日を登録するだけで、税務会計の定型的なタスクがすべて自動で生成されて可視化されます。具体的には年末調整や予定納税などですね。また、通常ですと複数のツールに分散しがちな税務会計業務と顧客管理情報を一元化することができます。スケジュール管理、タスク管理、業務管理を効率化できる、サイトへログインして使うタイプのサービスです。
小規模事務所では特に代表がExcelで管理してメンテナンスして、ということも少なくないようですし、このようなプロダクトは今までなかったということもあるのでしょうか、2022年の11月14日にリリースして以来、順調にユーザー数を伸ばしています。お問い合わせをいただく際にも非常に興味や期待感を感じるケースが多いですし、自ら申し上げるのもなんですが業界としての関心も高いという印象です。現在はどちらかといえば10人未満の事務所に対応した機能が強く、もう少し大きな規模でも使い易いようであれば導入したいというお声を非常に多くいただいておりますので、順次アップデートに勤しんでいます。
逆に小さい事務所さんがご利用くださるケースですと、スモールビジネスの代表と言えばトッププレイヤーですから、その時間を奪って導入業務をしていただくのは勿体無いという気持ちもありますね。そこは完全にSaaSにお任せするほうが良いということもありますので。」
Q.「ZoooU」開発の背景や効果は?
「結局は自分たちが既存のツールで実現しようとしてカバーできなかったものをプロダクトとして作っているという感じです。我々の母体は税理士事務所ですので、成長の過程でどうしても属人化が起こってしまい、なかなか上手くいかない部分がありました。そこで取り急ぎ既存のツールを導入して社内の標準化を図ろうとしたのですが、やはりメンテナンスに多くの時間を割きつつも、結局自分たちで売上を作りながらですのでお客さんも増えていく中にあっては、対応がなかなか厳しいなと。
もともとはスタッフ数や売上が増加し始めていた割と早期の段階で課題が顕在化し始めていたために、このまま肥大化する前に何かシステムを入れようという話になったもので、既存ツールについても色々と検討しました。士業向けのプロダクトでないものは自分たちで何かしら設計する必要があり投下時間が馬鹿になりませんし、とはいえ業界特化のサービスも設計当時と現在では士業の働く環境が変化しているためにマッチしない部分も多い、そうであればもう自前で作るしかないのでは、という発想になりますよね。
やはり設計思想は大切で、今は士業も時間に縛られず自由に働く傾向がありますから、従来のようなトップダウンで管理するためのマネジメント色が強いツールよりも、現場の効率化やプレイヤーがお客様へより良いサービスを提供できるようにサポートできるプロダクトが必要だと思ったんです。やはりSaaSは機能よりもどういう思いで作ったのかということが大事で、業界や社会的な流れにマッチしていないと、いくら良いプロダクトでも導入は厳しいと思うんですよね。
こうして、自分たちの母体である税理士事務所が成長するための1つのソリューションとしてこうあるべきなのではという観点と、それを業界全体に置き換えた時の必要性としても同じことだよね、というところが一致したので、SaaSとしてプロダクトを作ろう、ということになったのが原点です。このような発想が先にあり、2021年の夏くらいにシステム会社に開発をお願いして半年くらい続けましたが、最初は上手くいきませんでした。
その後、内製化に切り替えて上手くいきだしたのは2022年の春頃です。税理士業務の深い部分まで掘り下げが必要なSaaSですので、やはり外注ではドメインの知識や日中どういう業務フローで仕事を進めているのかという部分までは伝わり辛いということがあったんでしょうね。どうもこちらの意図とは違うものが出来上がってしまい、そうなるとパッケージのツールと同じことが起こるなと思いましたので、社内でエンジニアを採用してインハウスで作り始めたんです。夏頃には形になるというか、仕組み化し始めた感じですね。
もともと我々はスモールビジネスでやっていて、利益が出せていましたしキャッシュ的にも余裕がありましたが、スタートアップ領域のプロダクトを作り始めて一気に環境がガラっと変わりましたから、そういう意味でインハウス化は思い切ったことをしましたよね。業界はどちらかと言えば保守的ですから、周囲でも聞いたことがないようなことをしているんだと思います。
プロダクトのリリースによって、従来は難しかったことに寄与できているなと感じるのは、全員の業務が簡単にワンクリックですぐに可視化できるという点と、無資格者や未経験者に対する業務サポートの部分ですね。現在は多くの事務所で新卒や未経験者を採用せざるを得なくなってきていますので、トッププレイヤーの方であっても質問に答える時間や教えてあげる時間、指示を出す時間にタスクを切り分けて与える時間なども加味すると、やはり昔に比べてフォローのための時間を膨大に割かれている感じがするんですよ。
そういったところが効率化できれば、未経験者の方にとっても降ってくるタスクをこなしていれば、ある程度定型化された業務に関しては自動で完了していくということができますので、マネジメントレベルでも現場レベルでも、お互いが非常にメリットを感じるプロダクトになるにも関わらず、これが今まではなかったんですよね。教育に関しては税理士業界に限らず士業全般の課題だと思いますが、属人化しやすいといえばしやすいということもあるのかもしれません。
ベース業務の効率化が進めば、例えば確定申告シーズンになると必ず忙しいというような、業界の風習として当たり前に根付いてしまっていることに対し、改めて事前に準備対応する余地が生まれるかもしれません。また、残業が当然という空気や、高度複雑化する企業の悩みへの対応、インボイスや電子帳簿保存法に代表される環境の根本的な変化など、日々の業務に追われているとなかなか手が付けられない内容にも取り組むことができるようになると思うんです。
税理士の業務はスポットよりも年間で決まっているものが多く、製造業に例えると少量多品目でロットが小さく工程もバラバラという訳ではありませんから、それほど管理は難しくないと思うんですよね。しかし、予定通りに毎年到来する業務に追われているという現実をずっと疑問視していましたので、それこそ作業ベースに乗るところは工程やラインをできるだけ効率化するというか、同じルートできれいにできあがっていくような仕組みを作ってしまうのが一番良いと思っています。今までそうではなかったことが、自分でも不思議だなって。
あとは、自分たちが事務所を立ち上げるまでにプレイヤーとして望んでいた現場レベルでの効率化や、もっと余剰時間を生み出したいというような、既存のプロダクトでは実現できなかったことを、今プレイヤーとして働いている人たちに対して、できるだけ業務に寄り添った優しいものにしていこう、ということが、自分たちにとっても今のプロダクトとしてあるべき姿というか、核として考えているところでもあります。
やはり私が仕事をしている上で楽しみを覚えたのは、お客さんと話すことであったり、今自分が持っている能力や資格をフロントとして、どういったものを業務や他のサービスに展開していくのか、ということが大きいんですよね。これは税務だけではなく他の全ての士業にも言えることだと思いますが、そういう士業としての楽しみの部分に時間を使いたいと考えています。」
Q.士業のDX化は、今後どうなっていくか?
「『ZoooU』は今どちらかというと効率化がメインなのですが、やはり業界として生産性を上げていくにあたっては売上も上げていかなければならない、ということが大きな課題だと思っています。それこそ顧問業が食われてしまうということは多分ここ数年で訪れると思いますが、そういった時に備えて効率化しよう、とはいえ”もう人は必要ないから切る”ということはできない、そうなるとDXが進まないよね、ということが他のレガシー産業においてもDX全般で予測できる現象ですよね。
こうしたことも踏まえてやはり売上も上げられるようなプロダクトにしていかないといけないよね、という展開を今後はしていくつもりで、税理士が今まで顧問業務以外で成立させられなかった領域もサポートしていくというか、実現していくことによって、士業の可能性や税理士の可能性をもっと広げたいというのが、自分たちがやるべきプロダクトの最終的な構想ですね。
『ZoooU』をオープンにしようと考えたのは、そもそもプロダクトを作った経緯でもあるのですが、この先自分たちがいくらDXを進めて素晴らしいサービスを提供したとしても、やはり企業に対する影響範囲が限られると思うんですよ。たとえトップシェアを誇る事務所であっても主要シェアの大体0.X%程度ですから、やはり1つの事務所単体ではとても全国の中小企業を助けることはできないと考えました。全ての税理士事務所が一緒に協力して中小企業を支援できるものにしたいと思っています。」
Q.今後、士業が生き残っていくためにDX化やAIの活用については、どのような考え方が必要か?
「税理士事務所のお話になってしまいますが、多分DX化やAIについては対応しないと生き残れないだろうなと思っています。活用というよりも必須項目ではないかと。しかし冒頭でもお話した通り平均年齢の高いこの業界では厳しい話でしょうから、やはり大きく二極化していくだろうなと思いますね。おそらく他の業界でも同じことで、ついていけない所は廃業やM&Aで吸収されていくことになるのではないでしょうか。
やはり、そうした事務所は顧客から求められなくなっていくので淘汰される気がしています。逃げ切れると仰る先生も非常に多いのですが、恐らくは食い潰せるくらいの若手の事務所がどんどん出てくるのが現実で、AIの活用は非常に大きい、多分これからの業界においては必須なんじゃないかなと思っています。」
Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?
「先ほどもお話したように、せっかく集まっているメンバーと一緒にどういうことを実現したいのか、といったことが以前よりも重要になってくるのかなと思っています。そうした中で各士業の今やっている業務が、どういう位置付けなのかということを明確に掴んだ上で、更にこの先に提供できるサービスを増やしていくということが、DXが加速した後にできることなんじゃないかなと思いますので、今の顧問業務が果たしてどういう位置付けなのかは、改めて士業全般において考えたほうが良いのではないでしょうか。
また、根本的な話として多分”属人”の意味付けを間違っている気がしていまして、単に手がいるという意味での属人的なのか、この人が必要だという意味においての属人的なのかで、全然意味合いが違うじゃないですか。今はどちらかというと前者寄りで、手作業が必要というかExcelが凄く綺麗に作れますというような、そこじゃないと思いますね。」
大阪生まれ。大阪の南森町で育ち、3歳から野球を始める。その後、野球を26歳まで続け、プロ選手として活動。
引退後、公認会計士の勉強を開始。「コンサルティング業務やクライアントのサポートがしたい」という想いから、税理士を目指します。2014年から2019年まで、大手・中堅・小規模の3つの会計事務所に勤務。古くからの税理士業界の慣習に疑問を持ち始め、同時に「税理士業界を良くしたい」という想いが強くなってきました。
2019年9月、税理士業界にイノベーションを起こすべくBesoを創業。「クラウド会計のフル活用」「月次決算」「経営のリアルタイム化」による、企業の成長に尽力します。そして開業から1年で、freee5つ★認定アドバイザー資格を取得(freee史上最短催促記録樹立)。2年で300社のfreee導入、freee内製化支援により、企業をサポート。
それでも、税理士業界は構造から変える必要性があることを実感し、2021年からは税理士の価値を最大化するため「税務SaaS」の開発に着手します。2022年6月には、税理士事務所と顧問先様のためのプロダクト「ZoooU」のオープンβ版をリリース。