弁護士事務所向け業務管理システム「loioz」が目指す未来:株式会社ロイオズ 増田祐太氏

弁護士事務所向け業務管理システム「loioz」が目指す未来:株式会社ロイオズ 増田祐太氏

事務所名:

株式会社ロイオズ

代表者:

増田祐太

事務所エリア:

東京都渋谷区

開業年:

2014年7月

従業員数:

7人(ビジネスパートナー含む)

Q.弁護士・士業業界のDX化について全体的な所感や意見は?

「本格的に事業をはじめてからまだ3期目ではありますが、400〜500名ほど弁護士の先生とお話をする機会から得られた所感としては、やはり便利なツールが流通していることもあって、弁護士業界全体としてITが浸透しているという印象です。多くの企業が取り組みを進めていますので、その流れの一環ということもあるかもしれません。

ただ、やはり日本全国として見るとまだまだ膨大な書類が紙ベースであったり、FAXでのやり取りであったりと、裁判所との絡みで変えられない部分がありますので、アナログ的な文化も根深く残っているように思います。一般企業と比較すれば、法律業界はまだまだ全く何も進んでいないと言っても良いかもしれません。

弁護士会から発信された情報が地方に入って来ないという事情もあるようで、地域格差も大きいですね。地方が意識を高めていくにしても、小規模事務所が多く、人材も予算も不足していて難しいと思います。一方で、地域属性があるにしろ、裁判手続きのオンライン化の取り組みが始まってからは必然的にWEB面談ツールや関連サービスを導入している傾向はあるようです。

とはいえ、対裁判所など特定の目的を達成するための利用ですので、そこからITの利活用やDX化といった方向へ意識が向いているかというと、やはりそこは経営形態や事務所の規模によって非常にバラつきがあるように思います。地域性の他に、年齢層が高いという理由もあるでしょうね。長い時間をかけて築いてきたやり方を変えたくない、今までのやり方でも案件は獲得できる、事務局のスタッフがいるから大丈夫など、体質の古さが感じられることもあり、法律事務所に向けた事業展開の難しさを感じています。ITリテラシーが高いのは、30代や40代の比較的若い層という印象です。」

Q.loiozとは何か?

「端的に申し上げると法律事務所の業務をシンプルにするサービスです。事務所内に存在する依頼者や案件に関するあらゆる情報を1つにまとめることができるというコンセプトで、業務管理システムとして作っているクラウド型のソリューションになります。経理処理や事件の進行管理も含めた色々な機能が豊富に搭載されているのが特徴で、ワンプラットフォームで日々の業務スピードが向上するだけでなく、事務所全体の把握など質の向上にも寄与するものとして開発しました。

多くの事務所における従来の運用は、依頼者の情報が紙やExcelにまとめられていて、案件の詳細は事件ファイルや案件ごとの台帳を作成しているといったようなもので、極端に言えば管理運用の方法が業務や領域によってバラバラになってしまっている状況です。事務所の経営形態や弁護士の先生ごとにルールも違っているようですので、それを1つのシステム上で情報を管理して、所員が全員で使用すれば事務所の運用フォーマットも固定化できるようになり、全体的に生産性と効率化の向上に寄与できると思います。」

Q.loioz開発の背景や効果は?

「私は元々12年ほど法律事務所に勤めていました。そこで実際に目の当たりにした問題や課題を解決したいなという思いと、身近にいた弁護士の先生や事務局を、その問題や課題から救うことができないかと考えたことがバックグラウンドにあって、現在の事業につながっています。

更に以前は、いわゆるサーバーエンジニアとしてSI(システムインテグレーション)案件、企業のインフラ基盤の構築などの設計業務を行なっていて、たまたま縁があって事務所に入ったものの、この業界には興味関心がありませんでした。ただ、色々な雑務でもの凄く時間が取られているという印象でしたし、日々のやり取りや行動がメモ書きだけであったり、弁護士の先生の頭の中にしか情報がなかったりという状況にあるように感じてはいましたね。

まず、休日にまで弁護士の先生が事務所へ出社して仕事をしているというその多忙さや、休み時間中もお客様からの電話が鳴ったりしている現実は、自分が想像していた弁護士の業務量とのギャップが凄かったです。また、パソコンの使い方やセキュリティーなどITリテラシーが全く通じなくて、もの凄く時間をかけて起案をしていたりする状況の中で、自分は何をしようかともがいていた時期がありました。

やはり弁護士の対応している案件はネガティブであったり重たいものがメインで、トラブルもありますし、その中でのストレスや過重労働からモチベーションが低下したり鬱になってしまう先生が結構いらっしゃいましたので、そうした問題や課題について何かできることはないかな、とは思いましたね。アナログでやっているものを少しでも効率化して、負担を軽減できないかと。

日々はヘルプデスクの業務も行っていましたので、弁護士の先生との”こういう風にできないか”といったディスカッションの機会もあり、手をつけるべき課題が明確ではありましたから、それを実現するために自分が所属する事務所に対して案件管理を中心とするサービスを作ったということが、開発の背景ではあります。

導入した弁護士事務所から聞かれる効果の声としては、単純なもので恐縮ですが、例えばメンバーなど他の誰かに聞かなくても必要な情報へ自分でアクセスできるようになったというものが挙げられます。また、従来的な業務として起案なども含めて定型的なものに情報を置き換えていくという作業があると思いますが、これもシステムを使えばボタン操作1つで関連情報を引き出すことが可能になりますので、時間効率がもの凄く上がった、弁護士しかできない法務的な時間の獲得ができるようになった、というお声もいただけていますね。

とりわけ非常に反響が大きかったのが、依頼者の対応記録や裁判所とのやり取り、事件の進行をシステム上で管理する仕組みです。基本的には担当の弁護士先生が1人で案件を進めていくものですから、やはり関連業務として事務所への入電を事務局がオペレーションしなければならなかったり、次はどのように進めていくのかという進行状況を把握しながら先生をサポートしなければならない訳ですよね。そうした時に必要な情報をシステムで一元的に集約していけば、担当者以外でも状況が判るという運用体制が作れますので、事務所全体のパフォーマンスが上がったという効果を、フィードバックとしていただいています。

また、予想外の反応としては、導入によってシステム活用の旨みを知っていただいたことで、機能拡張や改修の要望をもの凄くいただいたことですね。単純にDX化だ、ということではなく、日々こういうことに時間を取られているからシステム化できないかという活用のディスカッションが事務所の中で活発になったんだと思います。それほど積極的でなかった方でも、使っていただくことでメリットを実感していただけているようです。

導入するまでは抵抗感を持つ方も少なくありませんが、所内に既存の運用にどう適合させるかを考えることのできる人材がいれば、上手く成立すると思っています。特に小規模事務所の代表弁護士は、現場でプレイヤーとして案件を遂行しながら、目の前のシステムを見て片手間で評価して、既存の運用をこうしよう、オペレーションをこういう風に変えていこう、というようなアンテナを立てることは難しいですよね。

例えば私の例ですと、小さな事務所にIT担当者として迎え入れられて、主業務として対応したことが上手くハマったということはあるのではないでしょうか。また、実際に弁護士秘書のような立ち位置で、依頼者の対応や事件処理に付き添った経験がありましたので、自分でワイヤーフレーム(画面設計書)を作ってプログラミングすることができたということで、『loioz』が上手く形になったようにも思います。」

Q.弁護士・士業業界のDX化は今後どのようになっていくか?

「進んでいくように思いますね。IT化やDX化は上位概念になってくると思っていて、そういう指標を持つ先生はそれほど多くないのではないかということは少々感じますが、今はトレンドの移行が早いじゃないですか。色々と最新技術が出て、それと共に各種の便利ツールが流通していく中で、弁護士事務所が使っていなくても企業などお客さんの側で利活用が広がっていきますので、柔軟に対応していかなければいけない状況になるのかなと。

ですから、弁護士側の動機というよりは、必然的に市場や世の中に合わせてやっていかなければならないという状態、流れが確実に来ると思っています。」

Q.今後、弁護士・士業が生き残るためにDXやAIの活用についてはどのような考え方が必要か?

「やはり国内の弁護士事務所は約96%が3名以下の小さな事務所で構成されているということがあり、繰り返しになりますが弁護士の先生の多くが経営者でありながら案件の進行も自らやらなければならないプレイヤーですので、その中でDXやAIに意識を持って活動することは難しいと思うんですよね。

経費の問題もありますし、どのツールを使えばよいのかも判らないと思いますので、これから色々と発展していくとは思うのですが、まだまだ弁護士の標準業務として定着している訳ではないという印象を持っています。ですから、少し時間はかかると思いますがまずは意識に置いて、色々と触ってみよう、試してみようという柔軟なスタンスでやっていかなければ、時代に取り残されてしまうのではないかと思いますね。

例えば、まだChatGPTに触ったことがないという方も多いようですが、ある程度の年数を重ねた弁護士の先生が、分からないなりに自ら実行して動くというようなことも必要なのではないでしょうか。やはり柔軟性が大事で、今のやり方で通用するだろうということではいずれ破綻するでしょうし、ボス弁が引退して世代交代する、受け継ぎ先の先生にとってはタイミングが良いのかもしれません。

興味関心がない、情報を知らないという先生も多くいらっしゃると思うんですけれども、私の感覚ですとやはり小規模事務所が多い、自力で解決できる領域ではないということが、これから法律業界にITやDXが普及するにあたって1つの問題になるのかなと感じています。やはり誰かが外堀から支援していかなければ、事務所のITやDXにおける成長には限界値があるように思いますね。

また、ピラミッド構造のような体質でもありますし、共同経営の場合もそうですが、やはり資金が必要で、誰が出すのかという問題については、ボス弁にそもそもの発想がなければ所員が代表弁護士に提言することは難しいというのが現実です。弊社のサービスも約38%が事務所を開業したタイミングで導入してくださっていますので、DX化等が進まないケースは古い体質を持っていたり、年齢の高い弁護士の先生による影響もあるのかなと感じています。」

Q.貴社の今後の展望について

「サービス開発3年目で、まだまだ完璧とは言えないのが正直なところでして、既存のお客様からも”こういうことをやって欲しい”というお声をいただいておりますので、まずは弊社プラットフォーム『loioz』の機能拡張を継続するということが当面のミッションになります。とりわけ、メインターゲットであるIT活用の自己解決が難しい小規模事務所、お1人で経営されている先生方に効率化や生産性の向上を感じていただき、プロダクトの成長や経営に貢献したいですね。

弊社のパーパスと申しますか、目的としてはやはり特に個人のクライアントの方ですと、弁護士の先生に相談してよい内容なのか分からない、そもそも接点がない、弁護士がどこにいるのか分からないということがありますから、そこを繋げていきたいと思っています。

1人で悩む必要のない世界を作る、ということを弊社のパーパスとしているように、まず弊社は法律事務所の生産性や効率化に貢献して、1人で弁護士をされている方でも多くの方にサービスが提供できる世界を作り、二段階目として悩みを持つ方と法律事務所の接点を作る新しいサービスを波及的に広げていきたいな、と考えているところです。」

増田祐太 プロフィール

1983年生まれ
東京都出身
大学卒業後、サーバ・ NW 系のシステム会社にて、大手企業 (丸紅など)の社内システムの設計、構築業務をプロジェクトマネージャーとして従事。
20代後半より都内法律事務所に IT 担当者として入所。所内システムの企画、設計、導入業務を行う中で、法律業界のデジタル化に強い関心を持つ。現在は、ロイオズの代表として、法律事務所が抱える課題をリーガルテックにより解決することに日々邁進。