年商1億円の事務所を実現する税理士事務所のマーケティング:蔵田経営会計事務所 藏田陽一氏

年商1億円の事務所を実現する税理士事務所のマーケティング:蔵田経営会計事務所 藏田陽一氏

事務所名:

蔵田経営会計事務所

代表者:

藏田陽一(税理士)

事務所エリア:

東京都渋谷区

開業年:

2008年5月

従業員数:

8人

第1章 プロ士業の履歴書

Q.現在のお仕事内容について、教えてください。

渋谷で「蔵田経営会計事務所」という社員9名の税理士事務所を経営しています。基本的には新設法人が対象で、税務顧問はもちろん、得意とするマーケティングや経営戦略を活かした経営コンサルティングサービスを提供しているといった感じですね。小規模ではありますが効率を重視していて、ここ数年は年間売上1億円以上を維持しています。

他にも税理士さん向けのコンサルティング会社「一般社団法人中小企業税務経営研究協会」を運営しておりまして、こちらは私と元税理士の方を理事に迎えて二人で共同経営をしています。会員制で、セミナーなどを通じてマーケティングのノウハウなどをお伝えしているのですが、特にホームページからの顧問獲得プランについては開業直後の税理士さんを中心に大変お喜びいただいています。

どちらの業務がメインということはなく、会計事務所も社団法人も同じくらいの利益ですね。共通点としては経営者に徹して担当を持たないというところでしょうか、あまり忙しいのが好きではないので。また、大きな組織を1つ抱えるよりも、10名未満の規模で幾つか回していくほうが良いという考えです。他士業ではありますが、コロナ禍で売上が低迷した事務所の中でも大勢のスタッフを雇っている所は地獄を見たようですし、最近はこうした考えの方も多いのではないでしょうか。

Q.資格取得以前は、どのようなキャリアをお持ちだったのでしょうか。

新卒で結構規模の大きな外資系のコンサルティング会社に就職して戦略系の仕事をやっていたのですが、あまり大企業には向かないなと感じて割と早い段階で退職し、友人の経営するIT企業でアルバイトを始めました。2年ほど続けた後に、会計事務所をそれぞれ1〜2年ずつ3社渡り歩いて修行し、独立開業して今に至るという感じです。

あまり腰を長く落ち着けなかった理由としては税理士試験を優先したことが1つ、もう1つは異なる規模の事務所を経験してマネージメントを学びたかったからですね。こうした理由から給料には拘らず、規模で事務所を選んだという感じです。スタッフ4名の事務所から15名の事務所へ移り、最後は50名の事務所と幅広く経験したことで、確かにそれぞれマネジメントの形が違うことを実感できて非常に勉強になりました。私自身は1人で開業しましたが、人数とクオリティとの関係も肌感覚で理解できていますし、そういう意味ではコンサルティングの幅が広がり、自社の経営にも活きていると思います

人数に応じたマネジメントを学ぶことが目的ではありましたが、今にして思うとそれぞれの会計事務所で規模に応じた実務も習得できる環境だったと思います。顧問先の規模にしても年商が数百万円から30億円まで経験しましたし、取り扱った業種も実に様々で、幅広く学ぶことができましたね、振り返って初めて気がつきましたが(笑)。

当時はあまり残業という概念が無いような事務所も多く、遅くまで仕事をしていても叱られませんでしたから、夜にこっそり先輩が担当している会社の決算書を見て勉強したりもしていました。結局、コンサル会社を辞めてから通算で4〜5年、31歳くらいまで会計事務所に勤めていましたね。それぞれを短期間で辞めてしまっているので申し訳ないとは思いつつ、今につながる良い経験をさせていただきました。

Q.どのように税理士の資格を知ったのですか?

20歳くらいの時、自分も大学生なのに大学生を相手に家庭教師をしていたのですが、当時の教え子が何故か会計事務所で働いていまして、その事務所の一角を借りて勉強を教えるという謎の環境でした(笑)。その縁というのか流れというのか、ちょうど旅行でお金が心許なかったので私も会計事務所でバイトさせてくださいとお願いして2か月くらい働かせてもらったんです。

もちろん税理士という資格自体は知っていましたが、所長さんが借入の相談を受けていたりするのを実際に見て、単に帳簿をつけたりするだけの仕事じゃないんだなと、軽くですが実務の実態を知るきっかけになったという感じです。理由は分からないのですが所長さんに気に入っていただけて、バイトながら申告書の清書を任せられたりして、今考えるとなかなか凄いですよね(笑)。

私はサラリーマン家庭に生まれたのですが、10歳くらいからでしょうか、自分は会社員じゃなくて経営者的な、自営業や何かしらの事業をするほうが向いているのではないかと思っていました。ですからずっと経営に興味を持ち続けていたという感じで、実は20歳くらいから起業っぽいことをちょこちょこやっていたんです。この時は借金を抱えるといった大きな失敗がない代わりにそれほど成功もしなかったのですが、割と得るものがあって1つは何の肩書きもない状態での営業はもの凄く大変だという現実を知ったことでした。

その後、自覚していた気質通りに会社員は向かなかったので辞めて、冒頭でお話した友人が経営するIT企業でバイトを始める訳ですが、実はこの会社の隣が公認会計士事務所だったんですね。失礼ながら先の経験から公認会計士という肩書きのある営業って楽そうだし、毎月顧問料が入るというのも良いなと思って見ていたということはあります。こうして振り返ると、色々なことが税理士での開業ということに繋がっていたのかもしれませんね。

資格の取得と税理士業界で働くことを考え始めたのが26歳頃で、公認会計士は学生の時からやっていないときついと思いましたので税理士をターゲットにしたという感じです。

Q.資格試験について、取り組んだことを教えてください。

これは少し反感を買ってしまうかもしれませんが、暗記が苦手なので最初から税法免除の大学院ありきで作戦を立てたことが1番重要なポイントだったと考えています。正直なところ、5科目では無理だったと思いますね。バイトをしつつ大学院に通いながら、専門学校の講座も受講していましたので、戦略は非常に重要でした。

社会との接点を無くして受験一本にはしたくなかったので、少しでも働きつつという道を選んで、受験のせいで人生がストップしなかったと言えば聞こえが良いのですが、そういう意味では取り組みが少し中途半端な感じではあったのかもしれません。少々試験を舐めていたということもありますが(笑)。

Q.合格するために、どのような戦略を立てたのでしょうか?また、短期間で試験に合格するコツがあれば教えてください。

短期間で合格するコツだったら私が知りたいですね(笑)、一般的には社会人であれば1年に1科目ずつが良いと言われていると思います。私の戦略としては大学院の2科目免除制度ありきだったのは先の通りで、簿財と1番簡単で全く役に立たない酒税法を選び、徹底して合格できれば何でも良いという考えで挑みました。

それでも意外と3〜4年は掛かりましたね。私は割と作戦を立てるのが好きなのですが、そればかりを考えて勉強量が不足するということになりがちでしたので、途中で戦略を切り替えるというよりは気合い・努力・根性で勉強量を増やしました。私の子どものやり方を見ていてもそれが正解だったと感じたのですが、戦略的な部分にはそれほど頭を使わずにひたすら頑張っていたので最初は大丈夫かなと心配していたところ、結果的に私よりも全然レベルが上の私立中学に合格しましたからね。

結論としては、めっちゃ気合いを入れて沢山勉強したら受かったという感じで、戦略はむしろ要らない、考えるのは無駄だから信じて頑張るというのが、試験に関しては良いような気がします。レベルの高い専門学校の先生を選ぶなどの方法もあるんでしょうけれども、手段と目的の話というのか、例えば実務で入力をしている時などにどうやったらもっと早くなるのかなと考える、これは経営者であれば良いのですが、職員としては余計なことを考えずにやったほうが早いというようなことはありますよね。

ただ、これは後付けですが、あまり若くして開業すると軽く見られるという現実もありますから、結果として32歳で開業することになったのは良かったと思っています。28歳の時だったら舐められてきつかったでしょうね。実際に20代で開業して一度辞めて、年数が経ってから戻って来られた方も知っていますので、あまり早く合格することに拘らなくても良いかもしれませんよ。信用商売で軽く見られると辛いでしょうから。

Q.開業までに、どのような勉強をしましたか?

・マーケティングの勉強について

開業時には既に神田昌典先生の著書などで勉強をして、セールスレターが書けるようになっていましたので、最初からホームページやダイレクトメールで反応が取れるようなものを作れたということが1番大きいですかね。そういう意味では当初から戦略的なマーケティングが出来ていたのかもしれません。

元々数字が得意ですし経営にも興味を持っていましたが、営業については先ほどお話した20歳頃に小さな事業をしていた経験が活きている側面もあります。やはり肩書きがないときついという現実を知っていましたからね。逆に肩書きがあると便利ですし、顧問契約となると1回営業がうまくいけばずっと売上が上がるので、開業前にどういう要素がないと営業というものが辛くなるのか理解していた点は良かったのかなと思っています。

・実務の勉強について

これも先ほどお話した点にはなりますが、複数の会計事務所を通じて色々な実務を経験することができたということがありますし、意外と専門書による独学で困らないものですよ。多少の実務経験があったとしても、やはり細かい部分は勉強が必要ですが、個人的にあまり得意ではない税法も、分厚い実務事例集や税務調査に関する本など10冊くらいを真剣に読み込むことで、普段の業務については問題ないくらいにはなります

法改正や新しいトピックが出てきた時なども書籍を読むことが多いですが、最近は月額3万円程度で実務の相談ができるようなサービスを提供している所も幾つかありますので、本に書いてあることだけでは確信が持てないような時に相談してみるのも良いのではないかなと思っています。

第2章 プロ士業の営業術・実務力

Q.開業のときに考えていた事業計画やプランはどういったものでしたか?

特に細かい計画は立てていませんでした。売上ありきで、大まかに年商を2千万円〜3千万円くらいに想定してはいましたが、伸ばせる限り伸ばそうという感じでしたね。また、開業初期は最後に勤めていた会計事務所と派遣契約という形で兼業をしていて、個人事業としての稼働は週に1日でしたから、計画がそれほど必要なかったということもあります。

ただ、マーケティングプランという意味であれば、テストマーケティングにはかなり力を入れていましたオンライン・オフライン問わずターゲット毎にあらゆるパターンをテストしましたので、出費もかなり多かったですね。大変でしたがこれが功を奏したのか、初年度の売上は1千万円を超えました

開業時には借入をしませんでしたが、半年ほど過ぎた頃に正社員を雇おうかなと考えてやっと実行するという感じでしたし、こうして振り返ると本当に売上先行の経営でしたね(笑)。ただ、顧問数はそれなりだったものの、売上的には月額を積み上げる構成なのでまだまだ貧弱、ここでブーストしなければその後が伸びないと考えての雇用と借入でしたから、そういう意味での中期的な目線は持っていたんでしょうね。

売上ありきとはいえ、注力すべきものを明確にしているという点で完全に無計画という訳ではありませんし、実際に今でも顧問先の指導に反映されているように思います。「税理士は年イチ対応でも良いのでとにかく売上を上げてください」とよく言っていますからね。最初の借入は勧めますが、その後はもう売上を上げて黒字にしてくれていれば何とかなりますからと(笑)。

最後に今だから暴露しますが、実は横須賀さんのご紹介で拙著『行列のできる税理士事務所の作り方』を執筆した当時、表紙に「年収3000万円の壁を超える」と銘打っているのに自身の売り上げは2千万円ほどでした(笑)。もちろんノウハウに自信はありましたし、結果として嘘ではないんですけどね、達成できなかったらどうするつもりなんだと(笑)。

藏田陽一 プロフィール

一般社団法人中小企業税務経営研究協会 代表理事
蔵田経営会計事務所 代表税理士

「行列のできる税理士事務所の作り方」(ぱる出版)を執筆しAmazonランキング経営戦略部門1位。
「小さな会社・個人事業者のための「通帳1冊」経理術」(日本事業出版社)を執筆し紀伊国屋書店新宿南店の経営書部門1位。

2008年5月税理士開業、超ホワイト・紹介お断りで所員8名・年商1億円の会計事務所を経営している。
並行して、会員数400名超の一般社団法人中小企業税務経営研究協会から、税理士さんに向けてのサービスを提供している。

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プロ士業 成功事例ファイル―年商1億円の事務所を実現する税理士事務所のマーケティング―

著者

横須賀輝尚・藏田陽一

LEGALBACKS(旧経営天才塾)草創期の大成功事例である蔵田税理士へのインタビュー。
1年で40社を超える顧問契約を獲得したマーケティングとその頭脳を徹底分解した1冊。