クリニック専門の社会保険労務士が月額15万円の顧問報酬を実現させるまでの軌跡:クレド社会保険労務士・行政書士事務所 大杉宏美氏

クリニック専門の社会保険労務士が月額15万円の顧問報酬を実現させるまでの軌跡:クレド社会保険労務士・行政書士事務所 大杉宏美氏

第1章 プロ士業の履歴書

Q.現在のお仕事内容について、教えてください。

医科歯科クリニック専門の社会保険労務士として、医療法人や個人医院の労務コンサルティングを行っています。すでに顧問の社労士さんがいらっしゃるお客様からのご相談が多いため、給与計算や手続き業務を求められることはあまりありません。なので、3号業務と呼ばれるコンサルティング業務がメインになっています。

社労士として仕事を始めた当初からこのようなスタイルでした。お客様はセカンドオピニオンのような形でご相談に来られるので、お話を聞いていく中で必要なサービスを組み立てていったらこのような形になった、という感じです。

Q.社労士の資格取得以前は、どのようなキャリアをお持ちだったのでしょうか。

大学では法学部に通っていましたが、私が通っていた大学では、法学部生は1/3が司法試験受験、1/3が国家一種、残りの1/3が就職するような感じでした。

私も2回生のときにLECの司法試験講座を受講していましたが、リクルートスーツを着て就活している同級生の姿がすごくかっこよく見えて、「楽しそうだからちょっとだけやってみよう」と思って就活を始めてみたんです。

すると、エントリーシートを書いたり面接で自分の事を話したりするのがすごく楽しい。それに、早く社会に出たいという思いがあったので、卒業後は就職することに決めました。

就活ではコンサルティング会社や商社などいろいろな業種を受け、最終的には、内定をいただいたビールメーカーに入社しました。人事部の方から内定の連絡をいただいたとき、「これで仲間になったな!」という言葉をかけて下さったんです。それがすごく嬉しくて。「この会社に決めて良かった」と思ったことを覚えています。今でも大好きな会社です。

入社後は営業部に配属され、酒販店を担当することになりました。

お酒の業界というのは結構古い世界で、当時は女性というだけで拒絶されるような世界でした。男性の先輩と連れ立って、ある酒屋さんに引き継ぎの挨拶に伺ったときのことです。社長さんに名刺を渡したら、こちらも見ずに男性の先輩とだけ話しながら私の名刺を破られたりして。

そういうことが、幾度かあって。社内で「こんなことがあって」という話を先輩たちにしたら、女性の先輩は皆さん同じ経験をされていて。そのときに社会の厳しさを知りました。

その後、結婚・出産を機に退職し、子どもが生まれて2年くらいしたときに少し時間の余裕ができたので、フルコミッションの営業職に就きました。このときに販売していたのは英会話の教材で、元々自分の子どもに使っていた教材でした。

このお仕事は1年くらい続けました。営業のフルコミって、戦場のような感じなんですよね。2人目の子どもを妊娠して、つわりがひどいときに「もうこの仕事はできないな」と思い、一旦お休みをすることにしました。

その後、つわりが終わって体調が楽にはなったのですが、そこで復帰しても、結局出産でまたお休みをすることになります。お客さま相手の仕事は、途中で辞めたり抜けたりすることがやっぱりしにくい。結局、その仕事は辞めることになりました。

ただ、そうすると時間が余るので、「資格試験ならお客さまと直接関わるわけじゃないし臨月でもできるな」と思って、FPの資格を取ることにしました。

それから2人目の子どもを出産しましたが、その子がよく寝る子で手がかからなかったんですね。そこでまた自分の時間ができたので、「こういうときは資格を取ろう」ということで、さらにもう一つ資格を取ることに。大学のときに民法が好きだったのもあって、行政書士の資格を取ることにしました。

行政書士資格を取った後、いったんは個人事務所を開いたのですが、たまたま知り合った先生からお誘いいただいて、行政書士法人に参画することになりました。

また、それと同時期に、ビールメーカー時代の同期から新しく立ち上げる経営コンサルティング会社のお手伝いを打診され、その仕事にも関わるようになりました。そこでは新規事業を担っていたので、気合を入れて退路を断つべく、一般社員ではなく役員の形で参画しました。

そんな経緯もあって次第に行政書士の仕事からは遠ざかるようになってしまったので、迷惑をかけないようにと行政書士法人からは抜けて、行政書士はまた個人事務所に戻しました。

Q.そこから社労士につながるのですね。どのように社労士の資格を知ったのですか?

経営コンサルティング会社のクライアントには医療法人や個人開業医の方が多くて、次第に労務のご相談が増えてきたんです。相談できる社労士が必要となったので、外部社労士事務所との連携や有資格者の雇用を検討しました。ところが良いご縁がなく、「それなら自分で資格を取った方が早いな」と。

社内会議で翌年の年間計画を話し合っていたときに、勢いで「そんなに労務の相談が多いなら、私が社労士を受けようか?」とみんなに言ってしまい、社労士試験を受けることになってしまいました。

Q.社労士の資格試験について、取り組んだことを教えてください。

TACの通信講座を申し込みました。通信にした理由は、自分のペースでやりたかったからです。ちなみに、FPも行政書士も社労士もすべて通信で受講しています。

当初はもう少し前から勉強を始めるつもりでしたが、忙しくて予定通りにいかなくて。教材を開封したのは4月になってからでした。社労士試験が8月なので、学習期間は4ヶ月とかなり短めでしたが、なんとか1回で合格することができました。

FPも行政書士も同じくらいの期間で合格しているんですが、法学部出身ということで法律の知識が多少なりともあったのが幸いしたと思います。

Q.社労士試験を4ヶ月という超短期間で試験に合格するために、どのような戦略を立てたのでしょうか?また、短期間で試験に合格するコツがあれば教えてください。

まずは、メリハリを付けることが大事だと思います。いくら試験範囲が広くても、全てが同じ割合で出題されるわけではありません。絶対に外せないところがあるので、必ずそこから勉強をするようにしていました。

例えば行政書士試験なら、行政法や民法は出題数も多く絶対に外してはいけないところです。そこを頭にたたき込んでおけば、他の部分も頭に入りやすいと思います。

それから、自分の優位感覚を意識して勉強に活かしていました。

人によってどの感覚が優れているかが違っていて、視覚優位の人もいれば聴覚優位の人もいます。例えば英単語を覚えるときでも、視覚優位の人は見て覚える方が覚えやすいし、聴覚優位なら耳で聞いた方が覚えやすい。皆さんも一度、自分がどの感覚が優位なのかを確認しておくといいと思います。

私の場合は視覚優位だったので、講義で聞いたことや他の参考書や問題集で知ったことなど、試験に必要となる全ての情報を、とにかくテキストに書き込むようにしていました。そうやってテキストに情報を一元化して、写真を見るように記憶していました。

テキストを2、3周して流れを掴んだら、まだ20%くらいしか頭に入っていない状態で過去問に移ります。過去問も、時間がないので解くことはせずに、問題の下に赤字で解答を全て書いていました。

特に選択肢で×になっているところは、その理由やポイントを書いておく。これは、問題と解答を同時に視界に入れて記憶するためです。そして、赤字の部分を赤シートで隠して何度も解きました。7周はしたと思います。

直前模試の日でもまだ全範囲の学習が終わっていなくて、模試の判定はD判定だったんですよ。それくらい時間がない中で必死に取り組んでいました。

Q.開業までに、どのような勉強をしましたか?

・マーケティングの勉強について

マーケティングは元々興味がある分野だったこともあって、初めて開業した頃からマーケティング関連の本をたくさん読んでいました。

最初の頃はジェイ・エイブラハムや神田昌典さんの本を読んだりして、行政書士になった2008年頃は横須賀さんの本も手に取っています。コトラーなどの古典も広く読みました。

特に、ジェイ・エイブラハムの「卓越の戦略」という考え方は今もずっと心に刻み込まれていて、あらゆる場面で役立っています。

よくある「行政書士で1千万円の売上を上げる」というような本も当時は読んだ記憶はありますが、あまり自分の中に残ってはいません。結局血肉になって残っているのは、本質部分について書かれた本だったりします。

ただ、そういう本は実務をしていない状態で読んでも抽象的すぎるので、読んだときはあまり理解ができていなかったと思いますが、開業して実務経験を積んでいくと、結局それらの本に戻っていきました。

・実務の勉強について

私は実務経験がない状態で開業したので、実務講座を受講しました。ただ、仕事を取って実務をしてみないと分からないことも多いので、振り返ってみると不要だったかもしれません。

ちなみに、これから社労士として開業されるのであれば、民法は絶対に勉強しておいてほしいなと思います。

なぜ社労士の試験科目に民法がないのかが不思議なくらい、社労士にとって民法は必須だと思います。民法を知らずに労務のコンサルティングはできません。それに、民法は他の士業、特に弁護士さんとの共通言語になるんです。こちらに民法の知識がないと、弁護士の先生方との意思疎通が難しいと思います。

社労士で対応できない紛争案件などは弁護士さんにお願いすることになると思いますが、民法の知識がないと、事案や争点をうまく伝えることができません。権利義務関係はどの法律でも大切ですし、民法を知らずに法律系のコンサルティングを行うのは危険だと思います。

第2章 プロ士業の営業術・実務力

Q.開業のときに考えていた事業計画やプランはどういったものでしたか?

ビールメーカーでの勤務経験があったので、行政書士開業時には飲食に関わる許認可やコンサルティングの仕事をしたいなと思っていました。とはいうものの、いろんな人とのご縁などがあって、実際には国際業務がメイン業務になっていました。

社労士の開業時は、初年度から年間計画と10年長期計画を立てていました。その後も毎年、年間計画表を作っています。当初すでに医療法人や個人開業医の先生方から労務に関するお悩みの声をたくさん聞いていましたし、「必要とされているものに全力で応えたい」という信念がありましたから、初年度から本腰を入れて事業計画を立てていたのだと思います。

社労士はコロナ禍での開業だったので、オンラインマーケティングを中心に計画していました。具体的には、ホームページの作成、オンラインセミナーの開催、LINE公式アカウントの作成や定期マガジンの発行などを計画していて、実際にすべて行いました。

大杉 宏美(おおすぎ ひろみ) プロフィール

1978年生まれ。大阪府出身、東京都在住。大阪大学法学部卒業。サントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)を経て、2011年、株式会社クレドメディカル取締役に就任。以来、医科クリニックの経営サポートに携わる。医科歯科クリニック専門の社会保険労務士事務所「クレド社会保険労務士事務所」代表。特定社会保険労務士、行政書士、医療労務コンサルタント、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。
社会保険労務士事務所HP:https://credo-hr.jp

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プロ士業成功事例ファイル
クリニック専門の社会保険労務士が月額15万円の顧問報酬を実現させるまでの軌跡

著者

横須賀輝尚・大杉宏美

現在はクリニック専門の労務管理やコンサルティングを専門とすつ社会保険労務士の大杉宏美さんの開業ヒストリーから高額案件を取れるようになるまでの奇跡をインタビューした1冊。