- 事務所名:
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さきがけ税理士法人
- 代表者:
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黒川明(税理士)
- 事務所エリア:
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東京都多摩市
- 開業年:
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2008年1月
- 従業員数:
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約100名
- URL:
目次
Q.税理士業界の現状をどう認識しているか?
「何年経営しても業界を理解することは簡単ではないと思います。私が独立した2008年では、景気も悪く「税理士では食べていけない」と言われましたが、やるべきことをきちんとやれば、十分食べていける世界ですし、それはいまも変わらないと思います。
ただし、すべきことをきちんとする。これは重要で、例えば何もしなければクライアントは増えることはなく、むしろ昨今の状況ではクライアントは減少してしまいます。人口減少に加え、物価の高騰など、中小企業が苦しい状況は続いていますし、クライアント先の倒産によるクライアント減少も良く聞く話です。
その中で、弊社は着実に成長させて頂いており、顧客の支持が得られている結果なのではないかと思います。」
Q.現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?
「最初に採用した2名の職員がいるのですが、現在その一人がナンバー2、もう一人はリームリーダーというポジションにいます。この2名が辞めずに事務所拡大に貢献してくれたからこそ、いまがあると考えています。最終的には経営戦略や営業も重要ですが、人材に尽きると。それを感じた15年間でもありました。」
Q.貴事務所経営のマーケティング・経営戦略の考え方と指針、税理士業界のマーケティングに関する所見は?
「マーケティングに関しては、とにかく良いと思ったものは全て実践してきた感じです。弊社も最初は拡大志向で経営を行っていましたので、様々なマーケティング施策に貪欲でした。そういう『拡大』という意味では、他社の話になってしまいますが、やはりベンチャーサポート税理士法人(ベンチャーサポートグループ)は、いまでも注目して見ています。
同法人はもうグループ1000名を超えたと聞きますし、売上もそれにともなって伸ばしている。やはり急拡大という点において、素晴らしい仕組みを持っていると思いますね。
弊社の場合、いまは拡大というよりも顧客の信頼である「紹介」数を増やすことに重点を置いています。」
Q.貴事務所経営のDX化と税理士業界のDX化についての所見は?
「業界的には関心の高いところでしょう。いまの税理士業界でいえば、インボイスと電子帳簿保存法が話題ですが、まずは自社でDX化がどこまでできるかチャレンジしているところです。
業界のDX化についてですが、正直なところ少し残酷な面があると私は考えています。税理士業界では、70歳を超える高齢のベテラン先生もいるわけで、こうした層はDX化に対応するのはなかなか厳しいところでしょう。
これはDX化だけの話ではなく、例えば1989年に消費税が導入されましたが、それ以前から税理士をやっていた人にとっては、未知である消費税に対応するのは困難だったそうです。DX化もそうですが、新しいことに対応できる能力は、税理士にとって必要なのでしょう。
また、RPAも導入が始まっていますが、使い勝手の良さやコストパフォーマンスを考えると、税理士全体に浸透するまでは、まだ少し時間がかかると考えています。」
Q.貴事務所経営の採用と教育に関しての考え方と指針は?
「これは永遠のテーマですね。どんなに採用プロセスをブラッシュアップしても、100点満点の採用を継続し続けることは本当に難しいと感じています。これまで数百名を超える採用を行ってきましたが、中には残念ながら弊社では続けない方が良い方も出てきてしまうわけです。
特に急成長を志に掲げていた頃は、採用にはいつも困っていました。ただ、いまは成長率よりも紹介数に重きを置いているというのはお伝えしたとおりで、顧客が増えた結果、社員が増えていくという流れで良いのかなと考えています。
Q.今後、税理士事務所の採用、組織についてはどうなっていくか?
「税理士事務所への就職は、常に大企業の経理部への就職と比較されてきました。実際、仕事の中身はまったく違います。しかし、『同じ経理経験を積むなら、大企業の方が良い』という判断をする求職者も多く、この点の認識が変わっていくことは必要だと考えています。
仕事の内容が違うのに、待遇や条件が比較されてしまい、人材が大企業の経理部に流れてしまう。これは憂慮すべきことだと思います。もちろん、比較してしまえば、全体でみると税理士事務所の給与水準が大企業に及ばないことも一因ですが、やはり経理部と税理士事務所は違う仕事です。そのあたりは認識を業界全体で変えていくべきだと思うわけです。
税理士業界の採用ということでいえば、以前厳しい状況であるといえます。10年以上前から、有資格者の採用は難しくなったと言われ、現在は受験生の減少によってより厳しくなっています。業界全体としては、新卒の採用に手を付け、弊社も実施してきました。いまでも新卒採用は、採用と人材確保の重要な手段だと言えると思いますね。
昔と違うのは、税理士事務所への就職希望者が、必ずしも税理士志望ではないということです。コンサルタントになりたいという社員もいれば、人事や営業を担当したいという社員もいる。MBAを取りたいと言っていた社員もいました。そういう意味で、税理士事務所への就職動機も多様化してきたのだと感じます。」
Q.貴事務所が得意とする業務についての現状と未来予測は?
「税務全般に強みを持っていますが、中でも紹介を生み主力となっているのは税務調査の対応業務です。税務調査に関しては、税理士の中でも強い抵抗感を持つ税理士も多く、レッドオーシャンと言われながらもまだまま可能性のある分野です。過去に比べて競合は増えてきたと感じますが、それでもまだ飽和しているとは言えないでしょう。」
Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?
「ありきたりに聞こえるかもしれませんが、やはり『顧客の満足』を追求していくことだと思います。開業する前、中小企業に貢献したいと考えて税理士を取りました。しかし、開業してからは黙っていても収入は増えないので、稼ぐことを念頭に活動せざるを得ず、営業やマーケティングに重点を置いた経営を行っていました。
結果、短期間で社員10名、20名、30名と急成長することができました。各所からの評価も高く、メディアからの取材も増え、『急成長』をお褒め頂くことも多くなりました。ところが、急成長のひずみが出たのでしょう。社内でも私の意見に賛成する社員とそうでない社員が出てしまい、組織を維持することが徐々に難しくなってきます。そこで次は、「良い会社にしよう」と考え、これが目標となりました。
福利厚生を充実させ、業務効率を高める。『良い会社』が取り入れていることは何でも取り入れようと、さらなる充実を図りました。時には『Great Place to Work』という働きがいのある会社のアワードにエントリーして受賞したり、世間的にも社内的にも良い会社と呼ばれるようになりたい。そう考えて経営していたのです。
しかし、あるとき社内から猛反発がありました。「社員のためにすることが多すぎて、お客様に貢献する仕事ができない」と。確かにこれはそのとおりでした。会社の売上は当然お客様から頂くものです。もちろん社員を大事にすることも重要ですが、その結果お客様へのサービスの質が落ちてしまえば、本末転倒です。そこで、最終的に数字や急拡大だけではなく『紹介数』を重視し、規模だけを追う経営をやめたということなんです。
今後、人口減少時代に入り、新規のお客様を獲得することも重要ですが、過去つながりのあったお客様といかに長いお付き合いをするかもさらに重要になります。そういった意味で、いまは『顧客満足度』という原点に立ち戻ったという感じですね。」
さきがけ税理士法人、さきがけ社会保険労務士法人などを中心とする経営支援グループ。税務調査対応、融資・創業支援などに定評がある。2021年12月、2022年12月GPTW社「働きがいのある会社」認定。従業員数約100名。税理士業界”トップ0.1%”に入る成長実績。代表:黒川明(税理士)