社労士業界に革命をもたらす労務相談ロボットの実力とは:株式会社ROBON 荻原紀男氏

社労士業界に革命をもたらす労務相談ロボットの実力とは:株式会社ROBON 荻原紀男氏

事務所名:

株式会社ROBON

代表者:

荒木岳夫(代表取締役)荻原紀男(代表取締役)

事務所エリア:

東京都新宿区

開業年:

2019年4月

従業員数:

約20名

Q.社労士事務所を取り巻くDX、生成AIの状況などについての所感は?

「何か労務関連の難しい質問を受けた時には、皆さん調べものをなさるかと思います。例えばWebでキーワード検索をすると結果は並列に出ているので、1個1個引っ張って回答を出していかなければいけませんし、その結果を見て自分でまとめて、これでいけるだろうという解釈を作らないといけませんので、時間が掛かる上に作業量も多くて大変です。

しかし、我々の『労務相談ロボット』は回答の根拠となる法律や判例などの出典を示してくれるので、企業の人事担当者や社労士にも安心してご利用いただけます。参照した情報を見に行って確認もできるようになっていますので、やはりAIは定型業務に対して有用であると言えますね。」

Q.「労務相談ロボット」開発の背景や理由は?

「企業秘密なんですが(笑)実は『税務相談ロボット』と『労務相談ロボット』は作り方が全く同じなんです。むしろ労務相談のほうが幅広い利用者に使っていただけるのではないかと考えました。

しかし、労務相談や労働法の関係上、雇う側と雇われる側両方の立場がありますので、単にAかBかと判断できる税務とは異なり、どちらが正しいかを判定できない難しさがあります。過去の判例や事例を参考に結果を導き出すのが労務相談ですので、労使が対立した場合に判例などを持ち出すことで、揉めた場合はこういう結果になりますよ、ということが分かるものなら良いですが、結果がどうなるかは分からない難しい問題の場合には、社労士に直接相談してもらうほうが良いでしょうね。

今後の展開としては、決算や申告が自動化できる世界を作っていきたいと考えています。」

Q.「労務相談ロボット」とはどんなサービスか?

チャット形式で労務に関する疑問を気軽に相談できるツールで、もちろん社労士法に触れるかどうかという点につきましては、あくまで検索エンジンとしての位置づけなので問題ないということです。法令だけではなく判例や厚労省のデータも参照して適切な回答を出し、出典も明示してくれますので、労務相談の負担が軽減できますし、複数のユーザーで質問を共有できるので、組織でも使いやすいと思います。

また、例えば単に”残業代請求”と入力した場合、会社側なのか従業員側の立場なのかで求める回答が異なりますよね。そうした立場の違いにも対応できるよう設計されていますので、利用者が自分は雇われる側の立場であることを明示すれば、それに合わせた回答が返ってくるようになっています。

すでにユーザーからは多くの声をいただいておりますのでいくつかご紹介しますと、社労士の方が『労務相談ロボット』を使って良かった点としては、社員教育の負担が減ったということですね。職員にとっては自分で調べることで勉強になりますし、上長にとっては採用時や社員の入れ替わりによって何度も同じ質問を受け、それに答えなければならない手間を防げるのは助かる、ということでした。当初の目的外の効用です。

また、人事担当の方からは、非常に早くて分かりやすいとの評価をいただいています。更に、会計・財務EXPOにも出展したのですが、色々な相談の窓口になる総務部門の方は、人事案件は判断が難しい時があるので、まずこのロボットで事前に相談したいと仰っていました。顧問社労士に聞くより早いです。いきなり人事部へは行かずに、まず総務部へ行くということは割と多いようですね。

ベテランの社労士から、最終判断には過去の実例が重要だとの声も聞かれますが、普通の質問であればもうAIが回答できますし、こうして実務の現場でも既に使用されていますので、今後は実力のない社労士が生き残ることは難しくなってくるようにも思えます。」

Q.ChatGPT等、ほかの生成AIと何が違う?

「様々な相談ロボットが出てきていますが、出典が明示されていないものが多いですよね。本当は正確な回答が保証されないのであれば販売してはいけないはずですので、指摘を受ける可能性があると思います。その点『労務相談ロボット』は根拠が明確であることはお話してきた通りですし、更に最新のChatGPT技術をいかにうまく活用できているかという技術的な点において弊社はダントツのナンバーワンであり、実は他社が出してきたツールを気にもしていません。

また、『労務相談ロボット』はプロに限らずどなたでもご使用いただけますし、利用者自身の具体的な事例を入力していただくと、その状況に応じた大人の回答が得られるんですよ。例えば、若い女子社員が取締役から食事に誘われて困っているという場合、普通であれば労基署へ行けという回答が出そうですが、まずは社内で確認をしてから社長へ相談してはどうかという回答が出てくるんですね。しかし、誘ってくる相手が社長であれば労基署へという回答を出すので、非常に現実的なんです。

これはやはり判例や過去の事例から導いているものですから、実務上の使い勝手が良いというのも大きな違いだと思います。もちろんAIですから、個別具体的な内容も夜中でもすぐに回答が得られるので、もう従業員が会社で悩む必要がなくなるのではないでしょうか。」

Q.「労務相談ロボット」は労務管理シーンにどんな影響を与える?

「これは『税務相談ロボット』でも触れましたが、結局AIの進化は止められないんですよ。我々のようなベンダーでも無理なんです。そうするとやはりWith AIとして考えて、要するにAIでカバーできちゃう部分はカバーさせちゃおうという考え方が絶対に必要なんじゃないかと思いますね。私は自分のキャッチフレーズを決めていて”AIのヒモになる”です(笑)、もうAIに食べさせてもらうくらいになるのではないかと。

先日、3日間のセミナー講師を務めたのですが、失われた30年がなぜ起こったのかを考えるときに、確かに政治も悪かったですし、経済界も悪かったのですが教育も悪かったんですよね。我々が受けてきた教育というのは、第二次産業革命の時に必要だった、時間が来たらラインに並びなさいという重工業中心型の教育だったわけです。今の政治家や大企業の経営陣はほとんどがその頭で物を考えていますから、転換ができません。

ですから私はそのミナーで、転換できない人は辞めるか死ぬかの二択だよと言ったんです。もうそういう状況になってるから、AIが自分たちを脅かす云々と言ってる人は、その前に死んじゃいますから大丈夫ですよと。だから反対する人や利用しようとしない人には、本当に辞めてもらった方がいいですよね。」

Q.今後、生き残っていける社労士・士業に求められるものとは?

「士業にはルーティン業務が沢山あると思うんですよね。相談や申告、申請も含めて、やることが決まっているものは全部AIに任せるということではないでしょうか。その上で、もう少し本当にお客様にとって必要なことや重要なこと、あるいはAIを利用した上で人間が判断してより深く相談に乗れることや伝えられることで、寄り添う時間を作るべきだと思いますね。

そうすると、その人の価値は絶対に減らないんですよ。下手をすると、AIでスピードが上がってレスポンスが速くなった分もっと評価されるかもしれない、悪いことは何にもないと思うんですよ。それに気づかずに今までのやり方をしていたり、更に笑ってしまうのがAIを使っていると考えなくなるという指摘ですね。考える力というのは子どもの時から養われるはずのものですから、今考えていない人が今更賢くなるわけがありませんよ(笑)。結局は、使ってみて考えるしかないと思います。」

荻原紀男 プロフィール

公認会計士・税理士
株式会社豆蔵K2TOPホールディングス創立者であり、税理士法人プログレスの創業者。 DX革新期の中心的牽引者として、税務、人材育成、IoT分野で活躍。
2019年に株式会社ROBONを設立。一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)の会長を長年務め、2022年に名誉会長に就任。
情報サービスと産業機械事業を含む連結子会社9社で構成される企業グループを率いる。
ROBONは全業務にロボットを実装し、「IT技術で全てのお客様の生産性を飛躍的に向上させる」ことを推進している。