ファミトラは家族信託を変えるのか?:株式会社ファミトラ 山崎 純氏

ファミトラは家族信託を変えるのか?:株式会社ファミトラ 山崎 純氏

事務所名:

株式会社ファミトラ

代表者:

代表取締役CEO 三橋 克仁

事務所エリア:

東京都港区

開業年:

2019年11月

従業員数:

約50名

Q.「ファミトラ」とはどんなサービスなのか?

「まず、司法書士さんや弁護士さんが提供しているこれまでの家族信託サービスについて少しお話いたしますと、全国で年間3,000件程度の組成数しかないというのが現状でして、増えてきているとはいえ全体としてそれほど多くないという状況です。それが何故なのかと申しますと、そもそも認知度がないということがいえますが、もうひとつの理由として、家族信託は契約の中身に関して自由度が非常に高いということがあります。つまり手間がかかってしまい、結果イニシャルコストが高くついてしまうという現実があるからなんですね。

基本的な情報だけでも、家族構成、資産額、資産構成、ご家族関係などを1つ1つ確認していくという作業が発生します。基本的な情報をもとにおこなう士業さんの提供する家族信託サービスのコンサルティング部分は、ご家族と打ち合わせを重ねて意向を確認していく、家族会議に参加するなど非常に手間が掛かるそのため、士業さん自身もあまりお勧めしていないというところもあるようです。

弊社はその手間の部分について独自のアルゴリズムでシステムを開発し、費用を圧縮することを可能にしました。具体的には、いわゆる従来の家族信託の締結サービスで1番コストの掛かっていた、論点整理と信託契約書の作成部分をシステムによって効率化することで、費用の圧縮を可能にしました。更に、システムを活用して契約の内容をまとめていきます(契約書は別途弁護士が作成)ので、抜け漏れなく必要な情報をヒアリングでき、ご家族毎にオーダーメイドの家族信託を作成することが出来る点が、大きな特徴の1つとなっています。

また、既存の家族信託の組成サービスはイニシャルで100万円程度の費用が掛かってしまいますので、どうしても1億円を超える資産を持つ方だけがターゲットになってしまっていたものを、3,000万円から5,000万円の資産を有するアッパーマス層から取り組めるものにした、というのが弊社サービスの特徴であるという風にも考えております。」

Q.「ファミトラ」リリースの背景とは?

「基本的には認知症による諸問題を懸念したということが1番大きいです。人生100年時代と言われていますが、超高齢社会進行とともに認知症の方の数も今後増え続けるという予測がありますよね。2012年の時点では462万人だったものが、2020年には600万人を超え、2025年には675万人、2050年には800万人を超えて、高齢者のうち2割が認知症になるという予測があります。

認知症によって起こる問題として1番大きいのは資産凍結でして、まず銀行口座からお金を引き出したりすることが出来なくなります。また、判断能力がないとみなされてしまいますので、契約行為が無効になる例えば介護施設に入るのでご自宅を売却したいという話になった場合、ご自宅が認知症になった方の名義であれば売却出来ないことになりますね。残念ながら、認知症になった方が相続や財産管理が出来るまでに回復されたという話は、ほとんど聞かないというのが現実です。

因みに認知症は病名ではなく症状で、お医者さんは診断をしますが、それと資産凍結とは全く別の判断になります。ですから認知症と診断されたので必ず資産を凍結される、家族信託は絶対に出来ない、といった論理にはなりませんが、いずれにせよ早めに検討していただくことがポイントではありますね。

こうしたことからサービスの必要性を感じたのが、弊社創業の背景としては1番大きいのですが、もう1点、認知症対策で最も一般的である成年後見制度色々な課題を抱えているということが挙げられます。例えば法定後見の場合、現状は縁もゆかりもない第三者、多くの場合家庭裁判所から指名された弁護士や司法書士ですが、この方が後見人に指名され、財産管理と身上保護をすることになりますよね。

基本的に財産管理は資産を減らさないように意識をしながら、かつ身上保護のほうは色々な手続きを代行していきます。ただし、毎月の費用が2万円から6万円掛かってしまいますし、報告義務もあり、さらにご本人やご家族とのコミュニケーションがうまくいかないといったことが起こったりしても、1度指定された後見人はなかなか変えることができないといった課題があります。こうした、成年後見制度がご本人とご家族にとって非常に使い辛い制度になってしまっているという点も、弊社創業の背景の1つですね。

士業さんの中には、後見人は費用に見合わないと考えておられる方もいます。2万円から6万円の収入があるということは言えますが、少しちぐはぐなんですよね。後見人の報酬は財産額に応じて費用が設定されているので、財産が減ると自分の実入りも減ってしまいますから、たとえご本人やご家族のためであっても財産を出来るだけ使わないようにするというような、考え方をする方と、被後見人の尊厳を意識して面倒を見たいと思っていらっしゃる方の意識の差は、どうしても出てきてしまうのかなと。精神的な負担も大きいですから、なかなか業務として普及しない理由にもなっていると思います。」

Q.なぜ、「家族信託」なのか?

「弊社代表の三橋は元々エンジニアで、ファミトラは2社目の創業になるのですが、新しく事業を作るにあたって今後のシニアマーケットは非常に大きくなると、そのマーケットに対してどうやってエンジニアとして関わっていくのかという観点で考えたときに、やはり高齢者が幸せに過ごしていける社会を作ることが一番重要であるという風に思ったということなんです。

そこで色々調べていくと、成年後見制度の闇のような部分と、家族信託という使い勝手の良い自由度の高い制度があるのに、なぜ普及していないんだろうという疑問を持った、そこが全てのスタートでした。よくよく調べていくと先ほどお話したような、非常に自由度が高いが故に結果として論点整理等に時間が掛かってしまう、依頼する費用が高くなってしまうなど、普及の弊害に行き当たります。

また、家族信託自体の根拠法は信託法ですが、自由度の高い家族信託をまとめあげるためには広範な知識や知見が必要で、全国にいる弁護士さんや司法書士さんが専門外のこと取り組まなければならないというハードルがあることも、普及を妨げているんだろうという見方をしたんですね。そこをITで解決すれば、よりこの家族信託という素晴らしい制度が普及していくという風に考えたのが、直接の背景というところです。

加えて、実は弊社法務担当者の菊川が、大手法律事務所の出身で信託法を専門に勉強してきた弁護士でして、更に奇跡的なことに三橋と小中学校の同級生であったことから、事業化にあたっては内部で専門的に進めることができる体制でもありましたので、ここは絶対に攻めるべきだろうという流れになったということもありますね。

普及を妨げている原因が先ほどお話した2点にあるというところから、弁護士さんや司法書士さんの脳味噌自体をITによって全て代替することができれば、アナログだった業界により広く良い制度が普及していく足がかりが作れるんじゃないか、という風に考えたということになりますね。」

Q.「ファミトラ」ユーザーの声は?

「1番大きいのは、組成した後は安心した、ほっとしたという安堵感が凄くあるようです。これは結局、最初の入り口としていわゆる受託者、つまりお子様世代からお問い合わせをいただくことが多いのですが、その世代は親の老後のことを心配していらっしゃいます。認知症の問題はもちろん、漠然とした不安を抱えたままどうして良いのか分からない、なかなか具体的に話を進めることが出来ないということがあり、それを我々の提供する家族信託サービスが一掃してくれたという安心感、これが1番大きいという感想をいただいておりますね。

家族信託は、一生に1度あるかというような契約ですので、早いか安いかといった比較難しく、そういった価値はなかなか客観的に感じ辛いところではあると思いますが、多くの方に安心を提供できると考えております。」

Q.「家族信託」マーケットの将来性は?

「行政等が出している数値で現状のマーケットを見ますと、高齢者が有する資産は約1,600兆円、うち家族信託されている資産の合計は4,500億円ほどです。また、よく比較される成年後見制度は約11.5兆円、信託銀行さんが提供している遺言信託が7.5兆円となっています。ここまでお話をしてきたように、家族信託はまだ普及が進んでいる段階ですから、成年後見制度を使っていた方や遺言の信託で解決されていた方の中にも、選択肢としては家族信託のほうが良かったんじゃないかという方もいらっしゃると思います。

また、認知症の患者が有する資産は200兆円と推計されており、高齢者が有する資産1,600兆円に対しても相当はインパクトがあります。既存サービスのマーケット規模であってもまだまだ担いきれていない現実からすると、家族信託が選ばれていくという可能性は、間違いなくあると感じているところです。つまり兆円規模の拡大が出来るんじゃないかというのが、我々の見通しですね。

加えてこのジャンルで競合する銀行さんについては、少々抽象的な言い方になってしまいますが、基本的に銀行さんが提供しているのは商事信託であり、”事業”として存在するものだと思っています。つまり預け先が銀行さんということで、ビジネスとして捉えている、一方で我々の提供している家族信託は民事信託の分野にあたりますので、契約の形態としてはご家族間で結ぶ契約ということになりますよね。先ほどお客様の声として安心感が出ましたが、まさに家族関係が良く、それなりの資産をお持ちで、自分たちの判断で選択して生きていきたいとお考えの方々にとっては、家族信託が最も良い選択肢であると思っておりますので、逆にカニバらないかなという感じでしょうかね。

現在の『ファミトラ』への導線としては、広告に力を入れているほか、弊社主催の、あるいは提携先との共同セミナーを受講されてからご利用に至るというパターンが非常に多いです。具体的には老後のセミナーや家族信託セミナーなどですね。また、弊社は終活周辺に関係する事業をされている大手の会社さんとも多く提携しておりまして、これらの企業さんから流入してくるケースも多いです。

セミナーを受講されたり、直接お問い合わせをくださる方は、事前に色々と調べておられることが多いですね。家族信託そのものというよりも、親御さんが病気で入院なさったり、お盆や年末年始で実家に帰省された時に親御さんの老化を実感されたというようなことがきっかけになるようです。実際、士業さんもご家族が集まる機会が増える時期には相続対策の業務が増えるということがあるようですしね。

弊社の将来的な展望といたしましては、社として”人生100年時代のコンシェルジュ”を掲げておりますので、家族信託だけではなく終活周り全般のお手伝いをしたいという考えです。介護や相続、ご自宅をどうするかといった不動産の課題から老後のライフスタイルの維持まで、老後のお金についてのコンシェルジュ的な立ち位置を確立したいという風に考えております。開発の面からも、契約していただいている方向けのサービスの充実やアプリの開発を進めているところです。

また、先日リリースした「終活相談AI」のように、広く老後の心配や不安に伴走する機能を担うプロダクトの開発を今後もしていきたいと思っております。そうすることで老後の幸せな生活を家族みんなで考えていくという文脈を、サービスに昇華していきたいと考えております。」

山崎 純  プロフィール

マーケティング本部 広報部長
新聞やテレビなどの老舗メディアから、ニュースサイトなどのWEBメディアまで、年間数百名のメディア担当者とコンタクトするPRパーソン。
ファミトラのビジョンと事業に共感してジョイン。 「家族信託を、あたりまえに」を世の中に浸透させることを使命とする。