急成長の行政書士事務所は、業界に革命を起こすか?:行政書士法人LILAC 佐々木麻理子氏

急成長の行政書士事務所は、業界に革命を起こすか?:行政書士法人LILAC 佐々木麻理子氏

事務所名:

行政書士法人LILAC

代表者:

佐々木麻理子(行政書士)

事務所エリア:

東京都新宿区

開業年:

2019年12月

従業員数:

2名

Q.現在の活動を教えてください

「私は元々10年ほど都内のキャバクラに勤務していたのですが、25〜26歳の頃にちょっとした切欠がありまして、このままの状態で歳を重ねることに危機感を感じて一念発起して宅建を取得しました。ですが、不動産会社の社長になれる訳でもなければ、キャバ嬢を続けていたこともあって日中の仕事は就職が難しい。だったら勉強が習慣づいたことでもあるし、せっかくなので上位互換の資格を何か取ってみようか、と独立系の資格について調べ始めたことから現在の活動につながっています。

当時は士業というものがどういった職業なのかすらを全く解っていない状態だったのですが、ふと司法書士という資格を見つけて、法律も学べるし、不動産関連の勉強は宅建で経験がある、しかも独立系の資格だということで、これを受けたらいいんじゃないかなと思いました。夜の世界という仕事柄、騙されてしまう子を見てきたこともあり、法律は弱い者の味方ではなく知っている者の味方なんだということは感じていて、自分の中で漠然と法律は学んだほうが得だと思ってもいましたので、元々少し法律には興味があったんです。司法書士の試験内容を調べてみたところ、自分が学んで来た不動産関係で、しかも独立ができる、これしかないと思いました。28歳頃のことです。

30歳手前の売れないキャバ嬢というまるで先がない状態でしたので、司法書士資格で人生一発逆転を狙おうと思い立った3日後くらいにはもうお店を辞めて、ブランド物を全て売り、バーキンを買う予定だった貯金を予備校に投資して、完全に退路を断ちました。学生の頃からきちんと勉強するという習慣がなかったので、特に方法論はなくとにかく勉強に集中し、最後のほうは1日18時間は勉強していましたね。

合格しなければ後がない、もはや生死に関わるという状態だったので、もう必死でした。それこそベルトで椅子に体を縛りつけ、3年半で6,300時間勉強したのですが、3回目の試験で不合格を確信したときはもう全てが終わったと思いました。

そのとき、試験勉強中に並行して知人から行政書士試験を勧められてはいました。でも行政書士の勉強に割く時間を惜しんで断っていたんです、その時間を司法書士試験の勉強にあてれば合格すると考えていて。

ただ、また司法書士試験に落ちたら何も残らないよという助言もあり、2回目の司法書士試験の後に行政書士試験を受けてみたんです。学習内容が重複していたことも幸いして、1か月ほど行政法を、最後の1週間でパンシキ(一般知識)を覚えて、今合格しなくてもいいのかなという気持ちで受けたところ、180点と少しくらいだったかな、ギリギリで受かったんです。

当時はあくまで司法書士を目標にしていたので、行政書士試験の合格通知を見てもそんなに感動はありませんでしたが、結局3回目の司法書士試験で不合格が確定した時に心が折れて、しばらくは何も動けないでいたところ、せっかく行政書士の資格を持っているし、と思い直しました。むしろお金も職歴も学歴もない自分には、もうそれしか残されていなかったんです。

とはいえ、行政書士が何をしているのか全く分からないので、最初は補助者として雇ってもらえる事務所を探して回りました。今にして思えば当然なのですが、そもそも個人事務所が多いので雇う必要もないですし、有資格者よりも事務員さんのほうを雇いたいんですよね。どうしようかと悩みながら数か月が過ぎた頃、雇ってもらえないなら自分でやるしかないなと決意し、開業したのが2019年の12月のことです。その時は行政書士の仕事はおろか住民票の取り方すら知らなかったので、手続きは本当に大変でした。

営業方法も全く分からず、行政書士になったからといって何が出来るんだという感じで、数か月は鳴かず飛ばず、その上翌年2月頃には新型コロナウイルスが流行し外出禁止令まで出てしまい、何が起こっているのかさっぱり分からない状況でしたね。そうこうしているうちにふとしたきっかけで連絡を取るようになった先輩行政書士から、かつて流行った持続化給付金の下請けのお仕事をいただいたんです。教わりつつ手引を見つつでしたが、お仕事が入ってきたということが単純に凄く嬉しかったことを覚えています。

そうして数をこなしていくうちに、私やっと行政書士の仕事が覚えられたんだと思い浮足立っていたのですが、ふとした瞬間にその先輩の元請け価格を知ってしまったんですね。その頃は社会の構造を知らなかったので非常に驚きを感じましたが、「むしろ自分が元請けになれば良いのでは」と考え、そこからぽつぽつと自分で営業をはじめました。

経営者をターゲットに一生懸命営業回りをしていたところ、一般の方はそうした緊急時の給付金といわゆる補助金の違いを知りませんから、補助金はできないの?と声をかけていただくようになったんです。そこから補助金の申請代行を元請けで取れるようになり、最初は営業も実務も一人でやっていましたが、やがて力を貸していただける方が増え、現在はパートナーや提携先などと協力し補助金業務をメインとしつつ許認可業務やVISAなどの幅広い業務を提供しているという感じです。」

Q.短期間で業績を大幅に伸ばした要因は?

「早いうちに自分が元請けになって業務を適切に振り分けるというスタイルにしたことだと思います。下請けで持続化給付金の申請代行をやっていた当初は月に10万円稼げたらいいかな、という感じでしたが、開業して半年あたりから色々と人の繋がりが出来てきて、その後押しもあり、より売上の拡大と効率化を求めた結果、自分で商品を作り案件を獲得し適切な人材と共にプロジェクトを遂行していくといういわゆる営業兼オーガナイザーやPM(プロジェクトマネージャー)などの立ち回りに注力するようになりました。

結局、そうやって元請けになると売上自体は上がる訳です。弊所は外注をする際、相場より多めに報酬をお渡ししている案件も多いのですが、固定費が少ないビジネスモデルのため、他業種と比較すると利益率もそれほど悪くはないですし、やはりみんなに分け与えることができるのはすごく嬉しく、誇りに思っています。

私の場合は開業してすぐにコロナが発生したこともあって、営業環境としては基本的にリモートは当たり前でしたね。zoomでの営業が紹介に発展するときにもやはりzoomで繋がるという感じで、一度もリアル対面したことのないクライアントもいます。

ただわたしの場合、電話が苦手な上に駆け出しの頃は広告やネット営業にかけるお金もなかったので、自然と交流会などで地道に営業しzoomでミーティング、クロージングという営業方法になりました。

楽しいお酒を飲むこと自体は嫌いではなかったので色々な交流会へ顔を出し、するとまた別の交流会に誘われを繰り返し去年は年間で300件以上の交流会を経験しました。おかげさまで経営者界隈ではとても可愛がっていただくことができました。

繋がりを作る工夫としては、ありきたりですがGiveが大事ではないでしょうか。何かしら相手の手助けになるような、お困りごとの解決、協業や人の紹介にしてもそうでしょうし、メリットになるようなことを提供することだと思います。また、自分が何者であるかを明確にするということも大切だと思っていて、何でもできるけど何ができるのか分からないということですと、お仕事は集まり難いでしょうね。個性のない経営者はみなすぐに消えていきます。

あとはオープンマインドが凄くあると思います。また、相手に対して先入観を持たない、穿った見方をしない、マイナスのことは言わない、相手の時間を奪わない、相手とのミーティングの目的を明確にする、これは本当に当たり前だけどめちゃくちゃ重要だと思っていて、世界で平等なのは時間と死ぬことだけなので、なるべく相手の時間を奪わずに相手のためになるということを、経営者になってから考えるようになりました。

開業当初は何も分からずにいたので、自分が話すよりも人の話を聞くことのほうが多かったのですが、関心を持ってじっくり聞いていたことでビジネスモデルやニーズを頭に入れることができて、その情報で人を繋ぐことなどができたと思いますので、結果的には人の話をたくさん聞いたことも良かったなと思います。最初は、何の知識もなかったので経営者の方々が話している内容でわからないところがあると、話題に出たトピックをすぐに調べたり聞いた単語の関連書籍を2〜3冊読んで大枠を掴む、ネットで調べる、それを会話に乗せる、ということを繰り返して、実践を交えて少しずつ勉強してきた感じです。

ビジネスもそうですが、この世界って「価値の大交換会」なんです。それをするためにまずは知り、理解し、実践し、会得し、分かち合う。そして分かち合ったその時初めてお金が生まれるんです。わたしはただ分け合っていただいたものを吸収し、それを実践しパッケージングして提供しているだけなんです。売上を上げる秘訣って、意外とシンプルなものなんですよ。」

Q.現在の行政書士、業界に関して思うところは?

「硬すぎるというのか、言われたことをやっているだけのいわゆる代書屋で、思考停止しているところもあるように思います。経営とは何だろうか、クライアントは本当は何を求めているのか、なぜその書類が必要なのかということを考えずに、ただ降ってきた仕事をやっているだけという士業もちらほら見かけます。単に言われたことをやっているだけの士業はやがてAIに取って代わられるのではないでしょうか

経営課題を解決するために、許認可や設備投資や補助金に関する書類が必要なんだ、というところから落とし込んでいく、あるいは専門特化しているのであれば、自分にしか見出せないような新しい結果を経営者にもたらすことができるという視点から見て欲しいな、ということを士業の業界には凄く感じています。試験に合格して知識があるということに、胡座をかいている人が多すぎるなと、なぜ経営者がそのように考えたのかということが大事で、書類だけ作って終わりじゃないんだよというのは伝えたいです。

士業の仕事の本質は書類作成だけではなく、クライアントの想いややりたいことを実現するためのサポートだとわたしは思っています

なのでわたしはこれからも常識や枠組みに囚われず、俯瞰的な視点で経営者に適切なアドバイスをして仕事を生んでいきたいと思います。」

Q.今後の時代の中での行政書士の可能性は?

「私のコンサル生に伝えているのは、行政書士って業際問題をきちんとクリアしていれば、仕事全部お金にできるんだよ、という話です。どんな可能性でもたくさんある、ただそこに必要なのは自分の商品をパッケージングして適切な人や場所へ営業する力だと思っていて、世の中のなんでもないことでも、困っている人はたくさんいますので、自分はこういうことができますよというパッケージングをして、需要がある所へ供給する、それだけでお金になるんですよね、本当に。

例えばChatGPTの使い方みたいな感じでも良い訳です、1時間いくらという風にサービスを提供できますから。お困りごとを解決するという経営者目線の発想力を身につけて欲しいと凄く思いますし、逆にそうして考えれば世の中の全てのものが商品になりますよね。成果物はデータやサービスでも良い訳ですから、目に見える何かしらの提供できるモノ、コトを自分で考えることができれば無双できると思っています。」

Q.これから生き残っていける士業の条件は?

営業力と思考力です。ビジネスは人だということを理解できることは大前提。お金しか見ていない人はダメですね、その時は派手でもすぐに消えちゃう。なぜそのお金が発生するのかということをきちんと考えて、相手に対しての想像力と思考力をいかに深めるかというところが肝だと思っています。

この商品買ってよと言うばかりの押しつけがましい人からは誰も商品を買わない訳で、なぜその商品を売るのか、誰に売るのか、それで相手の未来をどう変えられるのかというところまで考えて、自分の商品を作れるかどうか。そうすると結局は商品って勝手に売れていきますので、相手が何を求めていて、自分が何を提供できるのか、そこの思考を深く深く掘り下げることで営業力は上がっていきます。営業は売りつけるものではなくて、未来を良い方向へ変えるものを的確な相手へ提供する、そう営業は提供なんですよね。それで喜んでくれて、その対価としてお金をいただける、この流れを理解するということがとても大事だなと凄く思います。お金を払うのも人なんです。

思考力も営業力に通じますが、”なぜ”を考えることが必要だと思っていて、目の前のものには全て意味があるんですよね。意味を考えずに底の浅い所にいると、ずっとうだつが上がらない。挑戦や目の前の試練、困難などは、自分を成長させてくれる大きなチャンスと考えて、なぜだろうと思って試行錯誤を繰り返しながら正しい方向へぶつかっていくと必ず新しい景色が見える。仕事が入って来ない、営業しようと思ってもどこに行けばいいかわからない、わからないわからないで考えることをやめちゃって、ダメになって廃業する人が多いように思います。

まず考えること、目の前で起こることはなぜなのか、それを理解し、解決方法を考え続けているうちにどんどん思考が深まって、そうすると勝手にお金が入ってくる。お金は水なので、懐が深い所へ流れていき溜まっていくので、常に懐を深くすることを心がけ、その流れを作っていくことが重要なんじゃないかと思います。ビジネスって、自分の器を広く深くする学びなんですよ。

行政書士ってめちゃくちゃ楽しいですよ、本当に。行政書士は稼げない、大した資格じゃないと言われたりもしますが、ただ一部人間が足を引っ張りあってだけの話なので、個人的には何ら気にすることはないと思います。私はあくまでブランディングとして売上については時々言及していますが、本当に稼いでいる人は自分は稼いでいる、成功しているなんていうことは自ら言いません。事実私も自分が成功者だなんて微塵も思ったことはないし、もっと大きな結果を出している先生をたくさん知っていますのでそういった方には頭が上がりません。行政書士で成功者なんて知らないという声もありそうですが、そもそも行政書士で成功している人はただ単に表に出てくるメリットやそれを吹聴する理由がないので目に留まらないだけです。

毎日個性的な経営者とおしゃべりできて、寝る時間も起きる時間も自由で、業務内容によりますが世界のどこにいても仕事ができて、社会的信用も地位もあって、行政書士という資格は私の人生をまるっと変えてくれましたし、これほど面白い仕事はないと思っています。受験生の子は自分の未来を変えるんだという気持ちで受験して欲しいし、開業する子は自分が世界に、世の中に必要とされる人間になる第一歩が行政書士になるということだと思って、提供できる人間になれるということを忘れずにいて欲しいです。

本当に新しい景色が見えますよ!私は行政書士になっていなかったら、どこでどんな生活をしていたかわかりません(笑)。人と出会えること、自分の人生の可能性が、行政書士になったら無限になるので、みんなぜひいい商品を提供できる行政書士になって、どんどん上がって新しい景色を見ていっていただければなと思います。」

佐々木麻理子 プロフィール

高校卒業後10年間キャバクラ嬢、ホステスなどを経て2019年12月行政書士事務所を開業。コロナ禍で新しくリリースされた給付金や補助金などの業務をこなし売上を上げ、1年10ヶ月で行政書士法人化、法人1期目で年商5800万円を達成し2期目も年商5000万円着地。

また株式会社を3社設立し2社買取、1社売却。

現在は補助金申請を主軸に、各種許認可申請、資金調達やVISA申請、会社設立、M&A仲介など幅広い業務に従事している。

行政書士業務の主軸である補助金申請は経済産業省からリリースされている「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」がメインとなっており、それが派生し自身の保有するシステム開発会社で補助金を使ったDX、業務効率化などのシステム開発も手掛けており「補助金でDX」というパッケージ商品も保有している。

趣味は会社のショッピングと海外放浪。