- 事務所名:
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Linolaパートナーズ法律事務所
- 代表者:
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弁護士 片岡邦弘
- 事務所エリア:
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東京都新宿区
- 開業年:
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2020年10月
- 従業員数:
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3名
目次
Q.士業、弁護士の業界の現状をどう認識しているか?
「凄く二極化が進んでいるなと思っています。例えば四大事務所のような、規模としてのブランディングが出来上がっている所はあまり変わっていないと思うので置いておいて、一般的にネットで勝ち組と言われている事務所って幾つかあるじゃないですか。ネット集客で顧問を取って、イソ弁を多く雇って拡大していく傾向の事務所と、そうではない個人の事務所に分かれているのかなと、見ていて思いますね。
昔ながらの10人規模の事務所は、今後減っていくかもしれません。上の世代の先生が高齢化していっているのに下の子が入っていなかったりとかすることもあるので。最近はどちらかというと若い弁護士はネット集客を得意とするいわゆる新興系と呼ばれる事務所をプラスに捉えている子が多いと感じています。新しいことに取り組んでいるということと、”福利厚生が非常に良いですよ”などやはり見せ方がとても上手くて若者のニーズを捉えており、その結果人の確保ができているなと採用などを見ていて思いますね。」
Q.現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?
「わかりやすさと、お客様を大切にしているという基本的なところじゃないですかね。この前、ある弁護士と話をしていたのですが、顧問料を払ってくれて相談が無いのが良いと言うんですよ。私はそういう発想が無い人で、逆に1か月相談がなかったら”元気ですか?”って電話しちゃう人なんです、どうしてるかなって。やはりこちらから近況を聞いていくと、色々な話が出たりするんです。
私は独立開業してから今3年目ですが、弁護士登録からは15年、任期付き公務員をしていて登録を外していた時期を除いても13年になりますし、独立してから色々と動き回っていて弁護士以外の人脈も結構あるので、例えばその人の悩みに役立つものを紹介できたり、必ずしも法的なところだけじゃなく、色々なメリットを提供できる場面は凄く増えているなと思っています。そういうアナログな部分も含めて評価していただいた上で、結構長いお付き合いをしてくださる方が多いかなと思うんですよね。
正直、ドライな関係が苦手なんです。ですから逆にお客様に対しても言いたいことを結構言うので、そういうところが気に入ってくれた人は私との関係が続いているんじゃないですかね。」
Q.外国人労務にはどんな特色があるか?
「いわゆる企業の労働問題、例えば労働基準法、解雇や残業代、訴訟、労働審判などは割とやっている先生が多いと思うんですけど、特に在留資格が問題になるような話、あとは技能実習生など、そういった外国人の方たちが関わってくるような労働問題、労務トラブルなどに関する仕事について、外国人労務という言い方をしています。
具体的には相談業務はもちろん、日常的に協定書や契約書関係のチェック、あとはやはり1番聞かれるのはリーガルの部分に関して行政がどう見るか、というところですね。どうしても入管や外国人技能実習機構という相手を常に意識しなければいけないのがこの分野のかなり特徴的なところでしてこれらの機関については労働基準監督署以上に情報が少ないんです、非常に少ない。ですから、そうした機関の動きを皆さん非常に気にされていますし、やはり許認可の権限を持っている機関なので対応をしっかりとしてあげる必要があります。例えば万が一行政からの指導が来た場合には、どう対応しましょうかというところまで詰めてお話をするというのが、私の主な仕事ですね。
私のように弁護士が外国人労務に専門特化しているケースは、まぁ珍しいです。この分野で独立すると伝えた時に、先輩から“他の分野が出来ないと思われるからやめたほうが良いよ”という風に言われたこともあります。しかし、今は外国人の入国も非常に増えていますし、新規のお客様からお問い合わせをいただく機会はかなり増えてきていますし、ニーズはありますよ。」
Q.外国人労務に専門特化した背景とその効果は?
「最初にお世話になった先生の事務所が非常に大きな企業さんを顧客にしていて、本当に超が付くような大企業から個人まで非常に幅広く事件を取り扱っていたんですよ。その中で、自分の特性がどこにあるかを見極めた時に、個人の案件よりも企業のほうが向いていそうだと当時の所長からかなり言われまして。じゃあちょっとそっちのほうに特化していこうということで、一度企業に入ってみたりしました。企業のアドバイスをする弁護士が、企業の中のことを何も知らないのはダメなんじゃないか、長い目で見たら影響があるんじゃないかなと思っていたので、企業内弁護士になって法務部員として一般の社員の方と机を並べて仕事をしていましたね。
ただ、私の場合は元々5年間も事務所で仕事をしていたことで、基本的にはお客さんと1対1でやるということに慣れていたんですよ。ですから上司の了解を取りながらではあるもののバンバン物事を進めてしまうので、他の社内弁護士からは”1人だけ企業の中で普通に弁護士業務をやっているよね”って言われたことがあります。そのうち、企業の中でもやはり労働に特化したいと考え始めていたところ、所属している委員会で東京都の労働委員会事務局の公募があることを知りました。当時は丁度どこかへ移籍しようかとも思っていた時期でしたので、ちょっと面白そうだなと面接を凄く気楽に受けに行きましたね。
労働委員会事務局の任期は2年で、都の採用条件でしたのでこの間は弁護士登録を外していました。労働委員会というのは、労働組合からの不当労働行為の救済申し立てを扱う専門の行政委員会なんですけど、その分野をやっている弁護士ってすごく少ないんですよ。私自身も、もちろん知ってはいたものの、当時ほとんどやったことがなくて。尚且つ委員の方々の中には有名な学者さんが何人もいらっしゃいますし、長い目でそういった人脈を作っておくことは、将来的にも役に立つんじゃないかなと思ったのが応募した理由ですね。
その後、やはり弁護士業務のほうが自分には合っているなと感じて弁護士事務所へ移籍し、そこで外国人労務に触れたことが特化していくことになった直接のきっかけになります。そこから外国人労務に特化した弁護士として開業するに至りました。この仕事の魅力は、先例がほとんどないことです、自分で考えてやる。ですからそれこそ原理原則、行政が出しているもの、それらに関して自分がどう対応し、行政へどう説明するのかという筋道を、全て自分で考えないといけないので。
巷に出ている外国人労務に関する情報は、行政の出しているものの焼き直しが多いという印象を受けます。実際のところについてはあまり書いていなくて、行政の本を綺麗にまとめていただいているものや多少プラスαしたものが多く、実務の情報がほぼ無いんです。ですから自分でやり始めた時に使える情報がほとんどないことにびっくりしまして、どうすれば皆さんのお役に立てるのかということを考えているうちに、この分野って凄く面白いなと思いました。また、一緒にやっている方々も非常に魅力的で、徐々にこの方向性でやっていきたいという気持ちが強くなっていっていき、最終的にこの分野に特化して独立したという感じです。
特化したことの効果としては、それこそ横須賀さんにもTwitterで見つけていただきましたし、色々な方から声を掛けてもらっています。やはりセミナーをやらせていただく機会も非常に多いですし、私は一度セミナーをやると大体他の方からもお声掛けいただいて、別の所でもセミナー講師をすることが多いんですよ。やはりそれは私の喋り云々もそうですけど、このキャラクターというか、このポジショニングが非常に面白いなと思っていただけていることもあるんじゃないかなと思います。」
Q.外国人労務を取り巻く士業の業務は、はどのようになっていくと考えているか?
「取り組みたいと考えている士業の方は非常に多いと思うんですよ。ただ、私がある社労士さんに言われたのは、やはりリスクが高すぎるというようなことでしたね。非常に成功されている方なんですけど、外国人労務に関する知見がない状態で入っていくことに関しては、既存顧客への影響を考えた時にちょっとリスクが高いという風ないい方をされていました。
また、何よりもお客様に出会うのが多分難しいと思います。今でこそ私も色々な所で活動しているので、お客様からお客様をご紹介いただいたり、一緒に業務をやっている方からご紹介いただいたりということが増えましたが、最初はやはり凄く大変だったので。ですが確実にニーズはある、それこそTwitterからいきなり指名で相談が来たこともありますし、リスクがある一方でリターンもちゃんとあるということだと思います。また取り扱う弁護士が少ないので、業界の方々が他の弁護士とお話をしても制度のことを解ってもらうのは難しいということもあるでしょうね。
それでも外国人労務の市場は広がっていきます、間違いなく。今まさに法改正の話が進んでいるところですが、裾野が広がることは間違いないと思います。やはり日本も超高齢化社会に入っているので、外国人の方々にいかに来ていただくかということは非常に大きな問題だと思うんですよ。その中で人権のリスクといったところはどんどん強調されてきていて、そうした部分に対応できる弁護士は非常に必要とされていくんじゃないかなという風に思っています。」
Q.外国人労務、士業、弁護士の未来予測は?
「かつては労働市場として魅力的な国だった日本が、経済の停滞によってアジアからの労働者が減っていくんじゃないかという意見がありますが、実際その通りになっていますよね。例えばある程度日本で経験を積んだ子がオーストラリアへ行っちゃうなんてことは全然珍しくないです。逆に日本人が海外へ行って、今よりも高い給料を貰っているケースも全然ありますし、もう今の分野をただやっていればというよりは、世の中の動きに合わせてどんどんカスタマイズしていかなければいけないと思います。
将来的には海外へ進出する人のサポートが出来る体制は整えていきたいなと思っていますが、とはいえ日本も人材不足で外国人に頼らざるを得ない部分も当然あるでしょうし、今後もその辺りは切っても切り離せない問題ですかね。特に今アジアから来ていただいている方々は、どちらかというと自分の国でチャンスが無いから日本に来ているというケースが多いと思います。どちらかと言うと弱者を搾取しているようなイメージを持たれている方が多いので、これは世間的な話とは真逆だと思うのですが、実際はそういう方々が日本で技術を身に付けて、帰国して億万長者になっているなんて話は全然珍しくないんですよ。」
Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?
「待たないことじゃないですかね。私は若手向けのセミナーもやらせていただいているのですが、例えば“何をやったら良いのか分からないです”とか、“社長と何を喋ったら良いのか分からないから顧問の取り方を教えてください”という質問をする人がいるんですよ。
例えば私自身も最初に入った事務所では凄く大きな企業の社長さんと喋っていた訳です。ただ、それはあくまで私の後ろにボスがいるからなんですね。私は1人の担当として喋っているので、そうではなくて等身大の社長さんとどう付き合えば良いのかは、多分誰にも分からないと思うんですよ。特に若い方は社会人経験もなく、弁護士事務所に入れば先生と呼ばれるけれども、まぁ社長からすると赤子みたいなもんな訳です。ですから、自分にそういうところが全然足りていないんだということを、ちゃんと自覚できるかが1番大事だと思っていて。
そのためには本を読んでいてもダメなんですよね。ですから私はよく、もう社長と趣味友になれという風に言います、やはり共通点があると入りやすいじゃないですか。相手を社長さんだと思っていないで、○○が好きな○○さんという風な感じでお互いに共通の趣味があれば、その話くらいはできる訳ですよ。そういう、難しいことを考えないでまず人として付き合ってもらえるようになるっていうことがスタートだよ、ということはよく若い方に言っていますね。そういう意味で、弁護士だから待っていても仕事が来るなんて時代でないことは間違いないので、どんどん広げてやっていけるかということが大きいのかなと思います。
また、自分の得意分野とそうじゃないところをはっきりと定義して、他の方々と協業するということも大事でしょうね。極端な話ですが、弁護士が全部の仕事を取る必要はないし、やるべきじゃないと思っているんですよ。特に私は自分の得意分野をもう自分の中で定義してしまっていて、それ以外の業務は他の弁護士に紹介するということもよくやっちゃうんですね。ですから逆に、自分が自信のある分野に関してはノウハウも溜まるし、レスポンスも早くなる。そうなるとストレスも抱えずに済むし、非常にメリットがあると思っています。
自分の取り扱わない分野を紹介することで、私に対して何かあった時には返したいなと思ってくださる方も一定数いて、そうした方からのご紹介案件も凄く増えてきています。極端な話、そういう形で特に自分が営業しなくても他の士業の方が僕のことも営業してくださっている訳ですから、その中で私のストライクゾーンがどのようなものかを理解してもらい、そのニーズがあったときに、私のことを思い出して紹介してもらえるという関係を作れたら、それってどんどん広がっていく話だと思うんですよね。
どうしてもネットマーケット全盛と言われていて、例えばSEOがどうのという話はここ数年でも聞き飽きるくらいに聞きましたが、そんなことをやらなくても人が動き回っている以上やはり人から仕事が来るので、私はこういう人物で、こういうことが得意で、こういう対応をしますよということを理解してくれた上で、僕のことを信頼してくれている人が世の中に増えれば、必要な方がいれば紹介案件は自然と流れてきますよね。色々なやり方があると思いますけど、わたしは、人に信頼をしてもらうことを通じて自分の仕事を広げていきたいですし、それが一番自分にあったやり方ではないかと思ってます。」
Linolaパートナーズ法律事務所代表弁護士(第一東京弁護士会所属)。経営法曹会議会員、日本労働法学会会員、入管法届出済弁護士。
外国人を受け入れる企業や監理団体が直面する、外国人特有の労務問題の解決を得意とする。労働法に強い弁護士として、外部弁護士や依頼者側の立場に立った経験もあり、東京都労働委員会などの職も歴任。多様な経験を活かして、日々情熱をもって外国人材の支援に取り組む監理団体・登録支援機関等のパートナーとして「超高齢社会に突入している日本とさらに多くの外国とが共存共栄する未来を実現する。」ことを目指し、日々奮闘中。