- 事務所名:
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行政書士TLA観光法務オフィス
- 代表者:
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谷内田真也
- 事務所エリア:
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東京都中央区
- 開業年:
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2014年7月
- 従業員数:
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1名
目次
Q.士業、行政書士の業界の現状をどう認識しているか?
「私が知っている事や思っている事は本当に狭い世界だとは思いますが、やはり1番話題になっているというか、皆さんがお考えの事といえば手続きのオンライン化や、情報をデータベース化して裏で連携してやっていきましょう、といった所謂DXについてなのかな、と思っています。今後5年〜10年、あるいはもっと短い範囲で、もしかしたら色々と変わってくるのかなと感じていますね。
ただその中で、個人的にはチャンスしかないとも思っていて、何故かと言いますとDXやオンライン化については一旦横に置いておくとしても、やはり今は世の中が全体的に色々と不確定になっていて、情報が溢れているんだけれども正解がない状況にあると感じているんですよね。もの凄い勢いで社会が変わっている一方、法律というものが全然追いついていないという現状からすると、やはり法律の専門家としてお客さんに関わる余地が色々とあるのではないか、という意味でチャンスしかないと思っています。
行政書士の業界に限定すると、DX等に関しては今ごろそんな事を言っているのか、と思ったりもしますが、業務面で申し上げますとやはり許認可が多いので、お客さんが考えているビジネスモデルと現行の業法にズレがあるという実情がありますよね。そうした、法律ができた当時考えていた事が今の時代に全然追いついていないですとか、法律とお客さんが考えている事の隙間を埋めてあげる作業が出来るのが行政書士なのかな、と思っています。」
Q.現状、貴事務所が永続できている要因はどこにあると考えているか?
「もうすぐ10年目に入るとはいえ、まだまだ永続していると言えないかもしれませんが、 ご質問をいただいて振り返ってみると、要因としては大きく4つあると思いました。
1番大きいのは諦めない事が大事だなと。どんな苦境に陥っても、取り敢えず諦めずに事業を継続する事を考える、そういったところが1番のポイントだったように思いますね。コロナで大変だったという事もあるのですが、やはり開業当初はなかなか仕事が取れなくて、それこそ売上ゼロという時もありましたので、そういう時にも心折れずに細々と続けていくという姿勢は、技術などよりも大きな要因かなと。特に個人事業ですので、これは余計に大事だと思います。
次に、お客さんはもちろん色々な相手に対してなのですが、自分に非があると思ったら素直に謝るのも大事かなと思っていて。例えば何らかの理由でお客さんをお待たせしてしまった場合、様々な理由をつける事は可能だと思うのですが、そこはやはりまずお待たせしてしまったという事実がありますので、その事に対しては申し訳なかったです、と素直に謝るという事が出来ていない人は意外に多いように見受けられ、重要なように思えます。何かしらの理由を付けるのは簡単で、素直に頭を下げる事の出来る人は少ないな、と感じていますね。
そして、特にこれは行政書士に多いのかもしれませんが、結構できない理由を探してしまう事が多いように思います。それは法律がこのようになっているので出来ません、お客さんの事情がそうであっても実際はこういう事ですから出来ません、と言うのは簡単なのですが、そうではなくて、こうすれば出来るかもしれない、確かに法律はそうなっていますが、他にこういう方法がありますよ、など、可能な方法を提案してあげる事って大事なんじゃないでしょうか。
最後の4つ目は、結構ないがしろにしている方もいらっしゃるのかなと思うのですが、法律専門職の一翼を担っているので、法律や条例などの条文に忠実というか、大事にしながら仕事をするという事ですね。この4点が、ここまで仕事を続けることが出来た要因なのかな、と思っています。」
Q.観光業界にはどんな特色があるか?
「一口に観光業界と言っても定義次第というところがありますので、私が考える観光業界をお伝えしておきますと、お客さんが自社を観光業だと思っていたら、それは観光業なのだと捉えています。色々なジャンルの業界が関わっていますからね、お客さんの目線で観光業界だと思っておられるのであれば、それはもう私のお客さんですよ、という感じで、医療分野でも飲食でも、システム屋さんでも観光業だと思っていらっしゃるのならば、そのためのお手伝いしています。とはいえ、やはり分かりやすい宿泊と旅行の2業界が中心ではあるでしょうね。
医療については分かり辛いかもしれませんが、医療ツーリズムという言葉がありまして、たとえば外国人が日本で医療を受ける目的で来日する事を指すのですが、そうすると病院さんや医療機器メーカーさん、医薬品メーカーさんに製薬会社さんなどが業界として参入している訳です。このように色々な業界が関わっているという実態がありますので、逆に捉えると観光という同じ枠に入れたとしても、横のつながりというのは非常に弱いのかなと思っています。旅行会社さんは旅行会社さん、宿泊業界は宿泊業界、飲食は飲食という形で縦割りになっているところがありますね。
また、凄くアナログな世界だなと思っています。業務のやり方もそうなのですが、やはり観光は生身の人間が移動するという事ですから、そうした意味では極めて人間臭いというか、アナログな分野なのかなと感じていて。関連して、世界情勢に左右される業界でもあるでしょうね。やはり平和でなければなかなか移動しようとか、余暇を利用して観光に行こうという気持ちにはなりませんので、戦争などの大きな出来事に弱いということも特色かもしれません。他の業界であれば、定期的に外務省の海外安全ホームページで各国の危険レベルをチェックするという必要は、それほどないでしょうからね。有事の際に旅行会社が下した判断については、割と責任問題として問われたりもするようですよ。」
Q.観光業界に専門特化した背景とその効果は?
「行政書士として1番最初に取り扱ったのは入管業務でしたが、開業前年の2013年に訪日外国人旅行者数が初めて1千万人を超えたんですよね。東京オリンピックの開催が決まったこともあって、世の中的にどんどん日本に観光客を受け入れてきましょうというインバウンドの気運が高まってきていて、個人的にも人口が減っていく中で数少ない成長産業なのかなという判断がありました。
最初は観光業界にどうやって関わっていけば良いのか分からなかったのですが、外国人から日本で会社を作ってインバウンドをやりたいという話が出てくる中で、そういった関わり方が出来るんだなという事が見えてきたので、徐々に観光へ軸足を置いていったという形です。また、自分自身も旅行に行って自由になれる瞬間が好きで、仕事として成り立ちそうでもあったので、そういう意味でマッチしたということもありますね。
効果については、インバウンドもそうですが、成長産業は意外と法律など色々な部分で歪みが生まれてきますので、例えば最初のご質問でお答えした社会の変化に法制度が追いついていない事例ですと、民泊が分かりやすいでしょうか。元々グレーかブラックと言われていたところ、2018年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された事によって、これまで許認可を取得していなかった事業者さんが対応に迫られ、ある意味でバブルのような状態が起きたという事がありました。
また、観光に絞って展開している行政書士は殆ど存在しない状態ですので、例えば旅行会社を作りたいというニーズに対して少し情報を発信するだけでもお問い合わせがいただけたりします。こうした意味では特化した強みや効果が出ているのかなと思いますね。
ただし、ここ最近ではコロナでお客さんがそもそも仕事を出来ないという状態になってしまった上、こちらとしても打ち手が少ないという逆の影響も大きかったという事はありますよ。それでも止めようとは思いませんでしたけどね。確かに大打撃で、撤退する事は簡単でしたが、そうは言ってもこれっていつか終わるよね、そして終わったら絶対にまた戻ってくるよね、という確信があったんです。むしろ絶対に止めずに、この辛いタイミングでも支え続けることによって箔がつくのかなという思いで、情報発信などをしていました。」
Q.観光業界を取り巻く士業の業務は、どのようになっていくと考えているか?
「士業の業務という観点で申し上げますと、繰り返しになりますが生身の人間が必ず関わってくる分野なので必ず何かしらのトラブルや課題というものが存在する筈で、そこには行政書士に限らず弁護士さんや社労士さんなども当然関わってくるのかなと思っています。具体的にはやはり、観光業界といえば働き手が不足していると言われ続けている業界ですので、今後ますます日本に外国人観光客を受け入れるという事になった時、働き手が足りない事についてはどうするんですか、という問題が出てきますよね。そういった意味では人材確保の方法であったり、人数が少ない中でまず生産性を上げるにはどうすれば良いのかといったところが、割と注目されてくるんじゃないのかな、という気はしています。」
Q.観光業界、士業、行政書士の未来予測は?
「まず観光業界の前提条件としてお伝えしたいのは、世界的に見ればまだまだ人口増加のフェーズにあるという点です。これまで世の中の富が、いわゆる先進国である西側諸国と言われているエリアへ集中していたところ、インドを中心とした東西冷戦下では西側でも東側でもなかった、グローバルサウスと定義される国々が今どんどん経済成長して豊かになってきていますよね。アフリカ諸国などは特に顕著ですが、そうすると世界的に観光する人は絶対増えてくるんですよ、お金が増えると余暇に使いたくなるのが世の常ですので。
そうした意味で申し上げますと、観光業界のパイが世界的に大きくなっていく一方で、その増えていくパイをどうやって取り合っていくのかという話にもなる訳ですが、極東に位置する日本は各国からのアクセスが非常に不利な立地にありますから、どのようにお客さんを呼んで来ましょうかという点が非常に重要になってくると思っています。勿論、国が率先して広告を打つといった事はあると思いますが、事業者さんもどうすれば外国人から観光地として選んで貰えるのかという意味で、自身のコンテンツ作りなどが重要になってくるのではないでしょうか。
ですから士業としても、単純に業務をやりますよというよりは、どうすればお客さんを勝たせてあげられるのかというところに軸足を置いて一緒に戦略を考えてあげたり、特にこういう国の人々はこういうことが好きなので、こういうコンテンツを作っていくとバズるかもしれません、といったアドバイスが出来るような方が求められていくのではないかという気がしています。」
Q.これから生き残っていける士業事務所の条件とは?
「そうですね…本当に知りませんという感じですが(笑)、私自身が個人事務所の個人事業主であるという事と、行政書士であるという観点からお伝えしたいと思います。
まずは、やはり色々な事に好奇心を持てるかどうか、これは大きいように思いますね。世の中の変化が激しいという事に加え、特に許認可業務はお客さんがどんどん新しいことを考えていくので、これまでになかったビジネスモデルや、こちらが想定していなかった事を投げかけられるという意味で、それはちょっと…と引いてしまうよりは、凄く面白そうですね、もう少しお話を聞かせてください、と前のめりで行ける方のほうが、お客さんとしては嬉しいのではないでしょうか。お客さんから喜んで貰えれば当然仕事にも繋がってくる筈ですので、そうした側面からも好奇心を持つというのは大事かなと思っています。
あとは、本当に泥臭く目の前のお客さんと向き合えるかどうか、というところではないでしょうか。特に個人事業主の場合は、どうしても自分の時間を削って仕事をしていくことになるという方が多いと思いますので、効率良くですとか、生産性という話になりがちですが、再現性があるものや効率良くできるものって、結局今後AIや機械で良いのではという方向へ進んで行きますよね。ですから、そういったところよりは、やはり私にしか出来ませんよね、あなたにしかお願い出来ませんよね、という事を増やしていく、そういう意味で泥臭く目の前のお客さんと向き合って、真摯に仕事をしていくという事が、生き残る上で、特に個人事業主が生き残るにあたって大事なんじゃないのかな、という気はしていますね。」
2011年3月、大学卒業直前に発生した東日本大震災の被害を目の当たりにして、大学時代に学んだことを使って社会に貢献したいと考え、行政書士を志す。
同年11月の行政書士試験に合格し、コンサルティング会社勤務を経て2014年7月に開業。
旅行業・旅館業に特化した許認可手続やビジネスモデルの構築に関するコンサルティングのほか、旅行会社向けの顧問サービスを展開している。
個人事業主から大企業まで、様々な規模のクライアントを抱えており、業界に特化する数少ない専門家として、クライアントだけでなく同業、他士業からも引き合いが多い。