紹介だけで仕事を増やし続ける司法書士のストレスフリー営業術:手塚司法書士事務所 司法書士 手塚宏樹氏

紹介だけで仕事を増やし続ける司法書士のストレスフリー営業術:手塚司法書士事務所 司法書士 手塚宏樹氏

第1章 プロ士業の履歴書

Q.現在のお仕事内容について、教えてください。

登記業務が9割以上ですね。会社の登記もやっていますが、相続に絡む登記手続きがほとんどですので、個人のお客様の方が多いです。相続案件として受注したところ亡くなった方が会社を所有していて、結果的に事業承継まわりのお仕事に派生するといったケースもあります。また、数年前から「終活」という概念が一般的なものになっていますので、生前に対策したいという方も以前に比べると徐々に増えてきているという印象です。

受注のルートとして一番多いのは紹介ですね。税理士など、他士業の先生方から登記案件をご紹介いただくことがほとんどで、時折ウェブサイト経由で直接ご相談やご依頼をいただいているような感じです。

Q.司法書士の資格取得以前は、どのようなキャリアをお持ちだったのでしょうか。

最初は証券会社に入りました。その後、食品を扱っている会社へ転職し、2度サラリーマンを経験しています。司法書士とは全く関係のない仕事をしていましたので、最初は事務所を運営するということについて、分からないことだらけでしたね。業務内容もそうですし、今から思い返すと最初は一つ一つ手探りだったように思います。サラリーマンの時のような仕事はもうやりたくないなと思っていました。

とはいえ、最初に入社した証券会社は大きな会社でしたので研修も行き届いていて、社会人としてのマナーなんかも教えてもらえましたので、ありがたかったですね。司法書士も接客業ですから、前の職場での経験も何かしら活きているのではないかな、と思います。

Q.どのように司法書士の資格を知ったのですか?

5年ほど会社勤めを経験したのですが、もうサラリーマン自体が無理だと思いましたので、会社勤めを辞めようという動機から色々と調べ始めました。しかし何ができるのかもよく分かりませんでしたので、資格を取ったらなんとかなるだろう、司法書士は独立するまでのスパンが短いなぁ、というアバウトな経緯で辿り着きましたね。取得に凄く時間が掛かりそうだった税理士や、試験に通っただけでは仕事ができなさそうな弁護士などと比較して、試験が1度で済む司法書士を選びました。具体的にどういう仕事をしているのかなど特にリサーチもせず、なんとなく登記をやるんだな、くらいの感じでしたね。

法律は大学で国際法を学んだくらいのもので、特に司法書士と関連するような下地はありませんでしたので、勉強に集中するために仕事を辞めてアルバイトを始めました。引き続き職場に勤めながら資格の勉強をするという方もいらっしゃいますが、私の場合は本格的に仕事をしながらでは無理だったと思います。

Q.資格試験について、取り組んだことを教えてください。

資格試験の予備校に行きましたので、カリキュラムに従ったという感じですね。とにかく覚えておくということが重要なんだなと思いましたので、忘れないように忘れないように、反復するなど工夫してやっていました。追い込みの時期になると1日に10時間〜12時間くらいは時間を使っていたと思います。直前期はもうバイトもしていませんでしたね、最後はとにかく集中してやりました。

Q.合格するために、どのような戦略を立てたのでしょうか?また、短期間で試験に合格するコツがあれば教えてください。

通っていた予備校のコースが20ヶ月で、期間としては1年半くらいありますので、勉強を始めてから自分自身が受験するまでに試験を1回挟むんですよね。スタートして半年くらい経った頃に試験の時期が来ますので、実際に試験会場へ行ってみました。どんな所でやるのか、雰囲気はどんなものなのか、ちゃんと現場に行って事前に確認しましたし、自身の受験本番1か月くらい前から、試験が行われる日曜日の同じ時間に当日と全く同じ条件で会場まで行ってシミュレーションもしましたね。多分そういう所で差がつくなぁと思ったんですよ。学力で一定のラインまで到達したら、最後はどうやって確実にアクシデントを回避するのか、どれだけ冷静に実力を発揮することができるのかが、合否を分ける大事なポイントだと考えて入念に準備しました。交通機関のアクセスなど、事前に確認すれば分かるようなことで支障が出ては全然ダメですからね。

あとは、もう試験を受けると決めた以上、余計なことを考えても仕方がないなと思って集中してやりましたので、無事に20ヶ月の期間内に1度の受験で合格できました。

Q.開業までに、どのような勉強をしましたか?

・実務の勉強について

実務が全く分かりませんでしたので、どこかの事務所で勉強させてもらおうと考え、1年間だけ勤務司法書士として働いていました。この頃はマーケティングに関する勉強にまで手が回らず、書類をどのように作成するのかといった実務の習得に専念していましたね。先輩が丁寧に教えてくれて、最初の数日だけですが登記簿謄本の取得や申請書の提出といった法務局回りにも同行してくれました。今は分かりませんが、20年前の何もできない新人司法書士の仕事と言えば、外回りで法務局へ行ってお使いを済ませてくるといった感じだったんですよ。とはいえ実際の書類作成も割とすぐに任せてもらえて、不動産売買がメインの事務所でしたが取り扱っている分野の仕事は一通りやらせてくれましたので、色々な経験を積むことができたと思います。

・マーケティングの勉強について

 マーケティングの勉強は主に本を読んだりセミナーに参加したりという方法でした。実は本格的に勉強を始めたのは、開業してから少し経った頃からなんですよ。今から思うと非常に少ない件数ではありますが、開業当初から税理士さんに相続案件をご紹介いただいていましたし、自身が受験生の時に通っていた資格試験の予備校で講師の仕事をしていて、ある程度の安定収入を作ることができていたので、比較的余裕があったというのが理由です。講師業で生活費を賄うことはできていたのですが、1年もやれば講師の仕事が大体どんなものなのか判ってきたので、4〜5年くらい経った頃に司法書士としての仕事をもっと沢山やってみようと考え、改めて相続業務を獲得するためにマーケティングの勉強を始めました

第2章 プロ士業の営業術・実務力

Q.開業のときに考えていた事業計画やプランはどういったものでしたか?

講師の仕事は早く辞めよう、とは思っていましたね。安定していますし、嫌いな訳でもありませんでしたが、費やした時間の割にはそれほど報酬額が高くありませんので、司法書士として大きめの仕事を1件もらえた方が良いだろうな、と考えていました。

事業計画というほどでもないのかもしれませんが、最初から相続業務をメインにするつもりでいましたね。修行をさせてもらった事務所は不動産売買の案件が多かったことは先にお話した通りなのですが、スケジュール的に結構大変なんですよ。自分以外の関係者の都合に合わせなければならないシーンが多く、急かされたり、嫌な思いもしましたし、アンコントローラブルでやり辛いと感じていました。こうしたことから、できるだけ自分でペーシングできるようなジャンルが良いなぁと考えたのが、相続を選んだ理由の1つです。また、自身の親が祖父母の相続人になった経験が、法律を知らずに大変な思いをしている人の役に立てるかもしれないという想いに繋がった、ということもあります。今はネットを使って自分で調べることができる人も多いと思いますが、それでも自分のケースに当てはまるのかどうか、という判断までは難しいですよね。

 また、事務所を大きくしようと考えたことは1度もないので、相続なら自分1人でもできるという理由も大きかったです。複数の場所に人手を割かなければ成立しないような業務ではありませんからね。これまで何人かお手伝いをしていただいたことはありますが、1〜2名と少数で事務まわりのことをやってくれる人がいると助かるな、といった感じでそれ以上増やしていこうとも思いませんでしたし、いわゆる組織を作ろうと考えたことはありません。パートさんに常駐していただいても良いかな、と思うこともありますが、反面1人の空気も良いな、という思いもあり、気分次第ですね(笑)。それでも、お仕事をいただいたら全てお断りせずに引き受けるだけの余裕はまだありますよ。

もともと気楽な感じでやっていきたいと思って独立開業しましたから、自分でスケジュールを立てられること、1人でも可能なこと、報酬がそれなりに見込めること、という基準でメインの業務を決めたという感じの、大まかな事業プランでしたね。

手塚宏樹 プロフィール

司法書士。遺言の作成を通じて相続争いを予防し、家族の絆を守る「遺言作りの職人」。
実家の相続争いにまきこまれた苦い経験から、相続専門家としての道に進み、
全国300名以上の相続専門家とのネットワークを構築。

暗号のような戸籍の読み解きをこれまで3000件以上行ってきた経験に基づき、家計図より浮かび上がる様々な人間模様からトラブルの芽を嗅ぎ分け、遺言作成による相続争いの予防をアドバイスする。「遺言は保険と同じ。元気なうちに準備しろ」 や 「妻への最高のプレゼントは 『全ての財産を妻に相続させる』 と書いた夫の遺言」 など、相続について現場経験に裏づけされた独自の思想を持ち、遺言作成により、相続争いで崩壊する家庭や相続手続で苦労する相続人をなくすことを生涯の仕事とする。

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プロ士業 成功事例ファイル―紹介だけで仕事を増やし続ける司法書士のストレスフリー営業術―

著者

横須賀輝尚・手塚宏樹

紹介のみで仕事を取り続ける仕事術を紹介。早い段階からQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を意識した経営の考え方にも注目したい、手塚司法書士へのインタビュー。