社労士向けクラウドサービスのリスクと今後を考える:株式会社エフアンドエム渡辺 尚人氏

社労士向けクラウドサービスのリスクと今後を考える:株式会社エフアンドエム渡辺 尚人氏

事務所名:

株式会社エフアンドエム

代表者:

代表取締役社長 森中一郎

事務所エリア:

大阪・東京・名古屋・福岡・仙台・札幌・沖縄

開業年:

1990年(平成2年)

従業員数:

686人(2023年3月末現在・連結)

目次

*社労士向けクラウドサービスのリスクと今後を考える

社労士向けクラウドサービスに起きた事件

横須賀 事実ですから社名を出しても問題ないと思いますが、社労夢についてどんなことが起こったのか、渡辺さんから解説していただけますでしょうか。

渡辺 6月5日に正式リリースが出ましたが、ランサムウェアによってシステムが一切動作しないという事象が起きてしまった、これがお伝えできる分かりやすい事実です。ユーザーさんは実際に確認いただけていると思います。日本へのサイバー攻撃は以前からあるのですが、今回は報道されている通り複数社が同様のウィルスに感染している事実から推察すると、何かしらのタイミングを狙って、こうした座組だったらいけるかなと踏んで一斉に集中攻撃されたということかもしれませんね。

横須賀 これによって普段社労士が使っているインフラシステムが使えなくなってしまった訳ですよね。社労士ではない方や社労夢ユーザーではない方もいらっしゃいますので、ちょっと全体像から埋めていきたいのですが、社労士の仕事ができなくなってしまうということについて、具体的な影響としてはどういうものがあるのでしょうか。

渡辺 1番分かりやすいものとしては、5日に発生していますので、末締め10日払いの給与計算が全く出来なくなったということがありますね。給与計算に関してはそれこそ15日締め25日払いなど様々な納期カットがありますので、このあたりをカバーしていくという意味では最も早いタイミングが10日払いの分で、これを何とかクリアするために皆様Excelなどを駆使して乗り越えられたということなんですけれども、現在(6月19日配信)もこの状況は続いています。

もう1つ、社会保険労務士の先生方におかれましては、労働保険など、都度発生する顧問先様からの手続きについても同じ仕組みによって行われていたとすると、基本的にはそれも機能しませんから、何かしらの代替手段を使ってカバーするしかありませんので、大変な思いをされているという状況です。

横須賀 社労夢について改めて説明すると、給与計算や入退社手続き他、社労士の手続きを大体カバーしているという認識で良いでしょうか?

渡辺 そうですね、もう少し川上に話を持っていくと、勤怠管理も社労夢さんでというケースもありますから、そうすると勤怠データそのものが取得できないということになりますので、例えば時給で働いているアルバイトさん等の状況が全く掴めない中、給与だけ発生させないといけないということになりかねません。1度みなしで給与を出して、翌月以降で調整するしかないということで進められているケースが多いのではないでしょうか。

横須賀 データに関しては今回どうなったんですか?

渡辺 私どもはお客様からお聞きする情報でしか掴めていないのですが、バックアップデータが社労夢さんから各社労士事務所様へ納品されている部分とそうでない部分があるようです。少なくともマイナンバーの情報は今のところお客様の元へ届いているという話は聞いていませんね。

横須賀 コメントをいただいていますね。「事前にシステム改修がされていたようなのですが、その時点で問題が発生していた可能性はあるのでしょうか?」

渡辺 これは新バージョンの『Shalom V5.0』(以下V5.0)を指していらっしゃると思うのですが、これも実際にユーザーさんとお話している限りで私どもが得ている情報なので、正確性についてはその点を加味していただく前提でお伝えします。これはMicrosoft社さんと少し関係があるようで、3月末までにV5.0へ移行しなければ以前の仕様ではMicrosoft社のほうで運営ができない状況だったという経緯があるようです。表向きは見た目が変わっているのですが、基本的な仕組みそのものは大きく変わっていないということのようで、何か先進的なテクノロジーで全く新しいものに生まれ変わったという訳ではないという認識が正しいかと思われます。ユーザーさんはこのあたり理解されていたようですね。

横須賀 6月〜7月は社労士にとって繁忙期なので被害が大きいとのコメントを多数いただいていますね。また、「今回のトラブルで、イチ社労士事務所でなにかしらビジネスチャンスは生まれるでしょうか?」とのことですが、これを契機にしたビジネスチャンスがあるのかというご質問ですね。

渡辺 今日お集まりの皆様は色々なソフトを使っておられると思いますが、実際にこういうお声をいただいたという1つの事実としてお伝えいたしますと、社労士の委託替えが発生しているということはあります。これをビジネスチャンスと言うのか否かはそれぞれのご判断にはなると思いますが、やはり顧問先様が預けている大切な情報が漏れた可能性があるという話になっていまいますと、継続を不安に感じる、もっと安全安心だと言っていただけるような社労士の先生に変えたいというお声は実際にありました。

それではそういった企業様に対して、私どもが直接どういう対応をしているのかを合わせてご説明させていただきますと、今回は決して社労士の先生が何か問題を起こした訳ではなく、契約していたシステム会社さんがたまたまトラブルに巻き込まれてしまったというケースであって、もちろん社労士の先生は確かなノウハウをお持ちですから、預けている情報の管理部分だけを何か新しい、より良いものに変えていくことで、これからも長いお付き合いをしていただくことができるんじゃないですかというお話をさせていただいています。

ビジネスチャンスと捉えるのかどうかは表現の問題もあると思いますが、実際に不安に思われている顧問先様が存在し、それが声としてあがってきているということは事実ですね。

横須賀 怖いですよね。特に個人情報は皆さん凄く過敏なものですから。

渡辺 そうですね。特に今回漏れた可能性があるとされている情報は、顧問先様の従業員の方々のマイナンバーや給与口座など、重要な個人情報の可能性もありますから、悪さをしようとする人からすると凄く美味しい情報が手に入ったような空気も確かにあるんですよ。私は漏れていないと信じているのですが、やはりそこは非常に怖いなと、リスキーだなという風に捉える方がいてもおかしくはないと思います。

横須賀 ありがとうございます。「クラウドのシステムを使っている場合、やはり定期的にデータをローカルのパソコン等にダウンロードしておくことが必要でしょうか?」というご質問をいただいていますので、このあたりを踏まえて次のトピックへ進みたいと思います。

現在の社労士向けクラウドサービスが抱えているリスクとは?

横須賀 これは告知の表現として事前に渡辺さんへ相談したことでもあるのですが、私はラウドサービスというものが神格化され過ぎてしまったのではないかという気がしているんですよ。最初の頃は、ローカルはもう危ない、だからクラウドが安心というイメージで始まった、ところがやはり当然ながらクラウドも万全ではないので今回こうしたことが起きている訳ですが、そもそもクラウドサービスが抱えているリスクにはどういったものがあるのでしょうか?

渡辺 これはサービスを選定する際、実際にご利用される方々がきちんと把握して、知識として持っていただいた上で決めなければいけないことなのですが、一口にクラウドと言っても色々な形があるんですね。例えば今回問題が起きてしまった仕組みによってシステム構築されているシステムベンダーさんのクラウドと私どものそれでは、同じクラウドという風に表現されていますが中身が全然違います。今回のケースは、社内データサーバーをクラウド環境として、そこに構築した社内ネットワークにユーザーさんがリモートアクセスによってサービスを利用するという仕組みになっていて、これは20年前であればこの仕組みを思いついた人は天才なんじゃないかというくらい非常に先進的なものでした。

ただ、その20年前の最新テクノロジーを今も変わらず使っていらっしゃるという状態になっていたんだろうなということでもあります。要は社内の人間がデータサーバーにアクセスできるとすると、そこを突かれてしまうと何かしらのウィルスに感染する可能性が出てきますし、潜伏していたウィルスがどこかで暴れ出したりということもあり得るということです。

一方で、現代と表現すると言い過ぎかもしれませんが、我々のオフィスステーションがやっているクラウドは社外にクラウドサーバーを持っていて、サーバーはAWS(Amazon Web Services)を使っています。これは皆様がよくネットショッピングで使っているAmazonが提供しているサーバーで、シェアは世界ナンバーワン、日本政府が使うクラウドとして唯一認定したサーバーでもあり、米国国防省も使用しているのですが、要は最新のセキュリティが常に担保されている訳です。AWSは情報を預かることが本業で、それは預かっている情報を守ることも含めてのことですから、セキュリティもメインサービスと捉えて取り組みますよね。AWSには日本法人もあるのですが、設備投資に1兆円ほど投資して、安全安心を担保しているそうです。

だからこそ色々な会社が、ナショナルカンパニーも金融機関さんもAWSのサービスを利用しているということであり、そういう意味では社内のネットワーク下で使っているクラウドという座組と、社外のネットワークで活かしていくクラウドという座組、これだけでもかなり大きな違いがあるんだろうなという風に思います。

横須賀 「AWSへの攻撃もありましたね…。」「オフィスステーションPROさんでもランサムはあるかもしれませんが、1〜2日で復旧できるんですよね?」というコメントをいただいていますが、如何ですか?

渡辺 この話をするとびっくりされるかもしれませんが、日本にある様々なサービスや情報は、国内外から常に色々な攻撃を受け続けています。私どももその中の1つですが、今のところそれを全部跳ね返してきていて、これは最新のセキュリティを持っている外部サーバーとオフィスステーションで努力して実現している様々なセキュリティとの掛け算でデータを守っているということなんです。そういう意味で、これは当社のエンジニアにも確認しましたが、現状でランサムウェア等のウイルスに私どものデータサーバーが侵される可能性は著しくゼロに近い、そういう座組にはなっています。

もう1点お伝えすると、BCP的な観点もそうなのですが、サーバーは複数で冗長化しています。例えば北海道にあるサーバーが何かしらの事情で動かなくなった、ダウンするようなことがあったとしても、別のサーバーが同様に動いているのでサービスの稼働は絶対に止まらないような仕掛けを作っています。AWSのサーバーは国内外の様々な地域に数多くありますので、それが一斉に止まるということは物理的にゼロではないにしても限りなくゼロには近い、ということが言えると思います。これはやはり強みなのかなと思いますね、実際にAWSも攻撃されたことがありますが、それでもすぐに復旧できたのはこうした事情もあると思われます。

社労士向けクラウドサービスに必要な機能は?

横須賀 士業はどの程度こうした仕組みを理解していれば良いのでしょうか?

渡辺 難しいと思うのですが、信頼ができるかどうかという点で私どもがよくお客様から言っていただくのは、オフィスステーションについては営業の説明や約束事のやりとりは正確で、サポートデスクも電話対応が当たり前なので、きちんとした回答が来るというようなことを実際のユーザー体験に基づいて評価していただけていると思います。会社としても信頼しているし、サービスとしても信頼できると言っていただけます。

ただ、分かりやすい例として営業さんはやはり「当社はこれだけ凄いセキュリティです」と言うでしょうけれども、それが本当なのかどうかは有事の際にしか判断できませんよね。ですからこれはサービスを受ける側の立場として辛いところで、結局は皆様が本当に詳しくなるしか方法がないとも言えるのですが、要は本当に自分の事務所の経営を預けて良いのかどうか、信頼できるかどうかを、皆様の考え方や定義で判断していただくということではないかなという気がするんですよね。

横須賀 信頼ということ以外に、我々が新しくクラウドサービスを契約しようという時に、最低限ここを基準にして欲しい、こういう基準でこういう風に選んでもらいたいということは何かありますか?

渡辺 今回のようなケースを危惧されるのであれば、社内データサーバー、社内データベースと言い換えても良いと思いますが、これをベースとした運用はやはり現在の考え方からすると少し昔の仕組みなのかなという気はしますね。ですから利用されているベンダーさんが、管理している社内サーバーのキュリティレベルを最新に保てているのかどうか、それを実行できる最新の知識を持ったエンジニアを雇えているかどうかといった話になってしまうんですね。

横須賀 それはかなり難しいのでは…。

渡辺 そうですよね。今はエンジニアさんの数は本当に少なくて、中でもインフラ系のエンジニアさんはかなり少ないです。社労士事務所さんでも優秀な方を雇い入れるのは本当に難しいことだと思いますし、やはり1から教育されていると思うんですよね。それを考えると、社内で全てを完結させることがかなり難しい時代になっているんじゃないかと思いますので、より安全にということであれば、社内のデータサーバーにアクセスしているクラウドについては見極めが必要な時なのかもしれないという気はします。

横須賀 なるほど、ありがとうございます。「大変答えにくいかと思うのですが、今回の社労夢側の事後対応について、どう思われましたでしょうか?」というご質問をいただいていますが、お立場もありますし一般論でも大丈夫だと思います、如何でしょうか?

渡辺 私がもし同じ立場だった場合にどうするかということでお答えいたしますと、出来る限りの情報を更新しながら、他社システムベンダーさんへの協力も仰ぎつつ、少なくとも社労士の先生方が業務の進捗を止めず走っていける環境を、とにかくいち早く作りに行くことを最善としてまず動くと思います。私どもからお客様が離れてしまうことを敢えて自分たちでやってでも、お客様の被害が出来る限り軽微になるように、同業他社の力も借りて業界としての痛手を少しでも減らしていただくような体制を取って、ネットワークを作りに行くと思います、あくまで我々の場合ですが。

横須賀 お答えし辛いところ、ありがとうございます。

ローカル、クラウド、データ保全の正解は?クラウドサービスの選び方

横須賀 「弊社はテレワーク推奨と言う事もあり、社内のデータをOne driveで共有していますが、安全性について渡辺さんは個人的にどう思いますか?Microsoftであっても絶対安全とは言えないので、悩みます。」とのことですが、如何でしょうか?

渡辺 絶対の安全というものは多分、世の中のどこにもないということになってしまうのでそれを求めないということが前提になるとは思います。例えばメールにウイルスが添付されて送られて来る、開けると感染するという場合、大きな会社であっても小さな会社であっても関係ありませんよね。仕掛ける側としては大量の宛先をBCCに入れて1回送信するだけの話ですから、やはり自前で管理すること自体にリスクを感じていただいたほうが良いような気はします。ここは勘違いされている方も多いところですね、この間も社内でサーバーを持って管理しておられる社労士事務所さんに同じことを言われました。

横須賀 なるほど。「万が一個人情報が漏洩した場合、クラウドベンダー様としては責任はどこが負うものとのご認識でしょうか。」ということですが、これは難しいですよね。利用規約などによるでしょうし、その事故がどういう原因で発生したかにもよるでしょうし。もし何かあれば一言いただけますか?

渡辺 滅茶苦茶ドライな話をすると、多分サービス契約の際に規約は確認されていると思うんですよね。恐らくベンダーサイドとしては、そこにある程度リスク部分を軽減するような内容を盛り込んでいる筈ですので、例えば損害賠償という話になった時のレベル感ですとか、そのあたりを見ていただくしか方法はないのかなと思います。また、これはもう個人情報保護委員会の見解や業界の見解に即して動いていくということになるのかなと。今起こっている事実から見てもそういうパワーバランスのような気がしますね。

横須賀 今回、我々士業にとっては凄く身近な例として、クラウドに信頼を寄せていたところデータが消えたり情報が漏洩したりする可能性があるということが分かった訳ですけれども、結局データ保存に関してはどういう風に考えておけば良いものなのでしょうか。

渡辺 結局どこまで行っても心配が尽きないという場合は、自分が責任を持てる、ミスした場合これは自分の責任だから仕方ないよねと言える場所を持って、そこに保管するというのは1つの手だと思います。もう1つ言えることとして、システム会社を信頼するということですね、例えばオフィスステーションの場合ですと毎日90日分のデータバックアップを取っていますので、もし何かが起こった場合はそのタイミングから90日過去にタイムスリップしてデータの復元ができ、差分のバックアップも取っているので、35日という期間ではありますが細かなデータに関して秒単位で復旧させることもできます。先ほどの冗長化のお話ですよね、仮にどこかのサーバーがダメになったとしても、別の場所でサーバーが動いていてサービスもずっと動き続けているので、結果的には皆様の情報が守られているという状態を作れる座組があるかどうかもポイントになってくると思います。ですから、そもそもこうしたことが発生しない可能性を追求しているソフトであれば、結果的にバックアップデータが復元可能な状態で残り続けるという形になります。

ここをもう少し詳しくご説明すると、皆様がオフィスステーションをご利用の際、画面で動作を見ておられますよね。これは画面の動作を司るサーバーがその動作をしているのですが、そこにデータは無いんですね、個人情報も何もないんですよ。これをフロントサーバーと言うのですが、フロントサーバーに悪さをされても痛くも痒くもありません。問題はデータサーバーで、私どもの場合ですと全く別の場所で管理をしていて、動作サーバーと連携しながら動いているのですが、この部分の作り込みが現代のクラウドサービスであれば当たり前であるところ、そうではなく一緒になっていたりする場合があるので、そうすると一度に全てのデータがおかしくなってしまうという可能性があるんです。

少し長くなってしまいましたが、まとめるとご自身の責任範囲で確保しておくパターンと、座組がきちんとした信頼できるクラウドサービスを探していただくパターンのどちらかだと思います。

横須賀 社労夢サイドの発表がなければ不明ではありますが、「今回は漏れていないので社労士の情報漏洩保険が使えないと言われました」、「社労夢はサーバーを4つ増やしたと言っていましたが意味がなかったのでしょうか」というコメントをいただいています。後者は単純に速度なのか、社労夢の意図が分かりませんからね。

渡辺 そうですね。サーバーの話ですと、ランサムウェアは感染しているデータとしていないデータの識別など、感染の程度が非常に分かり辛く、それを確定させるのにかなりの時間を要するという特徴があります。専門家によればケースによっては半年かかったりするということですので、今回も対応が非常に難しいということは言えるでしょうね。

横須賀 「士業がシステムを選ぶ場合、”御社は情報漏洩・セキュリティについて、どういう対策・準備をされていますか?”と聞いたら<座組>を確認できそうですか?」とのご質問ですが、これは如何でしょうか?

渡辺 信頼のおける会社であれば出来ると思いますね。どうしても私どものお話しにはなってしまいますが、例えば自分の事務所も心配だけれども顧問先様を心配しているという場合、経産省が出している『クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン』があるのですが、これに対してオフィスステーションPROはどういう仕組みでそのガイドラインに準拠しているのかという資料を顧問先様へ提供しています。要は開示できるものは開示するという姿勢で、ご安心いただけるような状況を作るということなのですが、これも結局は各社様のポリシーによって対応が違いますので何とも言えないところがありまして、結局は信頼が置けるなと思っていただけるかどうかが本当に究極のポイントだと思います。

当社は可能な限り説明させていただくのですが、難しいのはセキュリティの情報をお伝えするということは鍵穴の形を教えるようなものですので、セキュリティの情報をお伝えするとセキュリティの機能が損なわれるという考え方もあるんですね。ですからご説明できる範囲を決めさせていただいて、ご説明できない部分もあるという上で信頼していただくということにはなりますね。

オフィスステーションProとは?

横須賀 今回の件で再検討されている方も多いと思いますので、オフィスステーションProのことを教えていただければと思います。

渡辺 1つポイントになるのは社内連携ですね。オフィスステーションを開発しているのはグループ会社であるエフアンドエムネット株式会社なのですが、この150名〜200名からなる開発チームのほとんどは大阪にあるエフアンドエム本社ビルの5階にいます。その下の4階にはサポートデスクがありまして、お客様のダイレクトな声や気づいていただいた点を吸収してすぐさま反映したり改修したりということができますので、こうした社内での連携を含めた自社開発がお客様から評価いただいているポイントだと思っています。

社労士の先生方に使っていただいているソフトはオフィスステーションPROなのですが、それ以外にも一般企業向けに細かな機能を個別にご利用いただいておりまして、シリーズ累計では現在28,824アカウントとなっており、これはとある統計によれば現在3年連続出荷数ナンバーワンの実績です。間接的に信頼していただけそうな事実としましては、TOYOTAさんやアイシンさん、クボタさんといったナショナルカンパニー他、日本生命さんや住友生命さん、金融機関さんなどセキュリティの観点から厳しいチェックを要求される企業さんの審査を通過してご利用いただいております。例えば日本生命さんに関しては、初の認定クラウドサービスとしてオフィスステーションをご契約いただきました。もちろん社労士事務所さんへも、その顧問先様へも同様のセキュリティレベルでサービスをご提供しておりますので、1つの間接的な安心材料として捉えていただけるかなと思います。

オフィスステーションProについては2023年4月末時点で2,467の社労士事務所様にご利用いただいているのですが、実を申しますと私どもは非常に後発でして業界の3番手なんですね。とはいえ1番手2番手のベンダーさんは20年来この業界でシェアを持っていらっしゃるので、業歴7年目のオフィスステーションProとしては、ここ数年で非常に多くの皆様にご利用いただけるような仕組みになってきたことは、評価いただけているポイントだと思っています。今回こうした社労夢さんの件もございましたので沢山のお問い合わせをいただいて対応させていただいていますし、改めて社労士事務所様の業務が止まらないように、しっかり鋭意努力していきたいと思っているところです。

PRポイントも色々とあるのですが、特に画面の外側のサービスをしっかりやろうということで、サポートについては特に力を入れています。サービス案内資料に当日完了対応率という指標が記載されているのですが、これは電話が鳴って業務内容の相談を受けたその日のうちに95.7%が解決しているということなんです(2023年5月実績)。もちろん応答率100%を目標とするなど電話対応そのものにかなり力を入れていますが、この完了率を担保することでお客様の業務を止めない仕組みも重要視しています。また、ユーザーサイトも作っておりまして、マニュアルの整備など皆様がより良く使っていただける環境に拘ったクラウドサービスであること、それがオフィスステーションPROですので、もしご興味がございましたら随時オンライン面談を受け付けておりますので、是非ホームページなどからお問い合わせをいただければと思います。

Q&A

Q. 社労士事務所って結局は中小企業ですので、大企業向けのセキュリティを意識したシステムか、という観点は必要なのかな、と思いました。

渡辺 それはそうだと思います。社労士事務所様は顧問先様を沢山抱えておられる訳ですから、そういう意味では中堅大企業と言っても過言では無いくらいの情報量をお持ちだと思うんですよね。それを守っていくならば、セキュリティはかなり重要な要素だと思います。

Q. オフィスステーションPROは使っていて良いシステムだと思っています。ただ、1つのシステムにデータを集約するリスクも感じます。「分散(2社以上と契約)するなら、こんなやり方が良いよ」というポイントがあれば聞きたいです!

渡辺 例えば税理士や会計士の業界ですと、複数の給与計算ソフトを使っておられたりしますので、そのように使い分けてリスク分散するというのは十分に事務所経営のやり方としてアリだと思います。

横須賀 今はどんな問い合わせが多いんですか?どのようなことを聞かれます?

渡辺 1番多いのはセキュリティですね。オフィスステーションはランサムウェアに対してどうなのかとか、データのバックアップはどうなっていますかといったお問い合わせもありますが、我々は基本的に情報を開示するスタンスですので全てご説明させていただいています。また、乗り換えの商談をもの凄い数お受けしておりまして、データのコンバートについてご相談に乗らせていただくケースが本当に多いですね。

横須賀 オフィスステーションへは基本的にどんなサービスからでも移行出来るんですか?

渡辺 基本的には出来ますが、時間的な難易度というか、どういうデータが書き出されるのかは移行元次第ということにはなりますね。社労夢さんの場合ですと、今のところデータコンバートは情報さえあればお受けできるのですが、今は順番待ちが凄いという状況です。

Q. 社労士限定の給与計算サービスの概要をお願いいたします(以前、50人くらいのサービスと聞いていましたが)

渡辺 現在は100名くらいの企業様であれば、安定的に回る給与計算ソフトになっています。ただ、クラウドサービスの弱点として大量のデータを投入すると、ちょっとローディングが長くなってしまうんですよね。スペックを上げたりすることで、従業員1,000名規模まではオフィスステーションの給与計算で回せるようにしようと動いているところですので、ご期待いただければと思います。

横須賀 質問ではなく感想ですが、「私が、ソフトを導入したとき、まだオフィースステーションさんがありませんでした。今悔やまれるのは、早く変更していなかったことです。どんなにしんどくても今回移行します。」というコメントをいただいていますね。

渡辺 私どもの営業努力が足りず申し訳ありません…。先ほどビジネスチャンスというお話がありましたが、そういう意味で今1つ思いましたのは、長く使ってきた自分たちの業務ソフトに対し、敢えて疑いの目で見る機会というものがこれまで無かったと思うんですよね、やはり慣れているものが良いということで。ただ、今はテクノロジーがどんどん進化していますから、今回のことは最新のものを見る良い機会とも言えるかもしれません。もちろんオフィスステーションPROのみならず、世の中には様々なサービスが数多くあって本当に便利になっていますから、そういうものに触れていただくと良いかもしれません。

Q. 社労士向けベンダーは、売り上げの割に扱う情報が多すぎるという意見を見たことがあります。今後業界はどうなると思われますか。

渡辺 確かにこの社労士向けソフトにはあまり入りたいと思うベンダーさんがいないんですよ。そういう意味でオフィスステーションはかなり稀有な存在かもしれなくて、実は意外だと言われるのですが手続き帳票についても恐らくナンバーワンの取り扱い数です。実際、社労士さんに現物を見ていただくと、こんなに違うんだとびっくりされます。これは法改正の度に改修していかなければいけなくて、結構大変な作業をしなければならない開発になりますので、なかなか踏み込みたくないということがあるんじゃないかと思います。

横須賀 先ほど当日対応率95.7%のことですが、電話で聞いた諸問題を当日に大体解決しているということなんですか?

渡辺 サポートデスクですね、そうです。私どもは社労士事務所様とその顧問先様の両方にクラウド環境を用意して、両者がサービス連携できる仕組みを提供しているのですが、顧問先様単独でもサポートデスクをご利用いただけるようにしています。ですからそういう意味では社労士事務所様だけでなく顧問先様も含めたお問い合わせの完了率が95.7%ですので、本当にかなり力を入れているところですね。

横須賀 それは余計に凄いですね。社労士からはどんなサポート依頼や相談が多いですか?

渡辺 サポートデスクに多いのは、通常業務に関する使い方のお問い合わせですね。この入力はどうすれば?といったもので、やはりそういったお問い合わせは契約初年度が1番多く、使い慣れてくると大体分かっていただけるので結果的にはどんどん減っていく、年数を重ねていくとお問い合わせそのものが無くなるといった感じです。

Q. Net de 受付(WEB上で各種届出依頼ができる社労夢の機能)みたいな機能ありますか?データ移行がしんどくてスタッフが二の足を踏んでいます…。

渡辺 あります。また、機能についてのレクチャーも私どもがやりますので、先生方がやっていただく必要はありません。また、データ移行について、確かにデータ移行は凄くネックだと思いますが、もう生涯に1回だけだと思っていただいて、あるいは有料ではありますが私どもへデータのお引越し作業を委託していただくという選択肢もございますので、今はちょっと順番待ちではございますが、ご検討いただければと思います。

横須賀 これは絶対やってもらったほうが良いんじゃないですかね。だって一生に1回ですから、それで頑張って結局出来なかったら時間も勿体無いですし。

渡辺 ただ現状ではお待たせしてしまいますので、非常にお急ぎということであればご自身でやっていただくということも一つかと思います。

Q. 顧客のMoney Forward クラウド給与とAPI連携可能ですか?

渡辺 もちろん可能です。

Q. 今回プラン変更をするにあたって社労夢からオフィスステーションへデータをすべて自社でコンバートする予定なのですが、なにかコンバートする情報を頂けたりすることは可能でしょうか?

渡辺 コンバートする情報とコンバートの方法という意味で、私どもの用意しているテンプレートがございます他、汎用データ取り込みといって元データが持っている項目をオフィスステーション側で勉強させて、その項目をそのまま取り込んだりするようなこともできますので、ご契約いただけましたらサポートデスクへ改めて確認していただけますと幸いです。きちんと対応させていただきます。

Q.お客さまがfreeeを導入しています。リスクから考えたら、これで給与計算して連携した方がいいでしょうか?

渡辺 freeeさんとも連携していますので、顧問先様の計算結果をオフィスステーションに取り込んで離職証明書を作ったりすることなども出来ます。

横須賀 質問は大体読みましたね。以前CROWN MEDIAで取材させていただいた時に、私としては電話サポートに力を入れておられるのが凄く良いなと思いまして。むしろ時代とは逆行している、一般的にはChatbotなどを導入して、顧客サービスは人が対応しなくて良いようにしている企業が多い中で、人とのやり取りをちゃんと増やしていこうという方針に、このサービスは大丈夫だなという印象を持ちました。だいぶ提灯記事っぽく推しまくっていて申し訳ないですが(笑)、今この情報を伝えなければやばいと思っているだけでウラはありませんので。賛同のコメントもいただいてますね、「電話サポート、本当に助かります!Chatbotだと話が進まない事が多いので…」だそうです。

渡辺 それは私もその通りだと思っていまして、特に私どもへお問い合わせいただくのは納期がある内容ですので、焦りながらお話していただいている状況ですからね。そういう時にChatbotがまともな回答をくれない、ちゃんとコミュニケーションしてくれないとなると、ストレスばかりが溜まって解決する前にチャットを終わらせてしまうということも結構あると思うんです。

横須賀 Chatbotって散々やり取りして最後は「お電話ください」になることがあるじゃないですか。

渡辺 そうですね。あれは結局選別のためのツールでしかなくて、それってオペレーターのためってことなんですよ。そうであればユーザーファーストで考えると、やはりすぐさま電話でオペレーターに繋がって、口頭で状況をご説明いただくほうが結果的には良いのではないかと思いました。私どもとしては、ここはむしろコストを掛けるべきだろうということで頑張って運営しています。

Q.遠隔でこちらの画面を確認しながらのサポートは可能でしょうか。

渡辺 これは今後やっていこうと思っているサービスの1つです。現時点では対応できていなくて申し訳ないのですが、担当者が画面越しにご案内させていただくことも出来ますので、今はこちらをご利用いただければと思います。

Q. ネットで就業を使用している顧問先さんの給与計算は、社労夢給与で取り込み・計算していて、一部の項目は独自計算を組んでますが、同じように対応できますか?

渡辺 独自計算を組めるようにはなっていますが、同じように出来るかどうかは検証が必要だと思います。

Q. 自社オリジナルのグループウエアにオフィスステーションPROを連携させることは可能でしょうか?

渡辺 私どもはAPIの仕様書を公開しておりますので、ご自身で開発いただいて可能であれば連携することが出来るかもしれません。

横須賀 ちょっとまとめますね。「ジョブカンと連携していますか?」「奉行と連携していますか?」「顧客の持っている給与ソフトから、個人情報も取り入れることは可能でしょうか。」

渡辺 ジョブカンはしています。奉行クラウドとは連携していませんが、状況が状況ですので検討中です。それ以外の奉行シリーズについては連携ツールによって連携できます。

横須賀 皆さんオフィスステーションPROに関する質問は具体的ですね。具体的にどのサービスとは言いませんが、個人情報の漏洩やデータ消失などをやってしまった会社は一時期凄く話題になって、暫く経つと何事もなかったかのようにしていますが、もう1回やらかすことって結構多いなと思うんですよ。それって結局、根本的な思想の問題で同じことを繰り返すのかなと思ってしまいます。

渡辺 ありますよね。あと、これはもう完全にイノベーションのジレンマ的な話だと思います。ある程度成長していくと、規模に応じた多くのユーザーさんを抱えてそこが売上や利益を持っているという状態の中で、最新のものはコレだという話になった際、現行サービスを完全に作り変えるにはとてつもない開発費用が掛かるんですよね。しかも、それを捨てて新しいほうへ行った時に同じような事業経営が出来るという保証もない、かなりリスキー且つ上手く出来るかどうかもやはり分からないという話になりますから、どうしてもそこへ進み難くなるということはある気がします。

Q. 従業員情報を、オフィスステーション上で顧問先から直接入力してほしい場合、顧問先にオフィスステーションを購入してもらう必要があるのでしょうか?

渡辺 あります。ただ、いわゆる情報の連携レベルですと従業員1名あたり10円ほどで可能で、その10円で出来ることがもの凄い数ありますので、よろしければホームページから商談の手配をいただきましたら詳しくご説明申し上げます。

横須賀 ここまでに改めてお問い合わせという回答が何回かありましたし、渡辺さんと直接お話したいという方も沢山いらっしゃると思いますので、お問い合わせURLを貼っていただけますか。

渡辺 こちらは「無料オンライン相談予約お申込みページ」でして、ご希望の日時を選択いただく仕様になっております。ご説明要員を増やしておりますので是非ご利用ください。ご予約を確定していただいたその日のうちに担当者からご連絡を差し上げますが、私を直接ご指名いただいた場合は少しお時間を頂戴するかもしれません。皆さん大変な状況だと思いますが、我々も微力ながら何かしら貢献できればと思っています。

横須賀 渡辺さん今日はお忙しい中で急なご対応ありがとうございました。皆さんもありがとうございました、またご希望などございましたらお寄せください。

渡辺 尚人 プロフィール

2004年に新卒で入社。会計サービスのコンサルティング営業に従事した後、社会保険労務士事務所の経営支援を行う。2016年に労務管理クラウドソフト「オフィスステーション」をリリースし、以来同サービスをけん引。オフィスステーションシリーズはリリースから7年を迎え、2023年度労務管理クラウド市場シェアNo.1、2023年4月末時点で28,000社以上の導入実績となる。